宝箱開封! ワニの正式名称は?
宝箱を回収しているところに、さらにワニがやってきた。
草むらから二匹のワニが飛び出してくる。
「トウコ迎撃! リン、索敵を!」
言うまでもなくトウコは銃を構えている。
「アイアイサー! ピアスショットーっ!」
マグナム銃が火を噴き、反動ではね上がる。
弾丸がワニの頭部に命中し、肉が爆ぜる。
一撃!
ワニは塵に変わる。
一方、俺は分身を突っ込ませる。
「行け分身!」
分身がワニに斬りかかる。
だが振り下ろした刃は皮で弾かれ、有効打にならない。
「グゥゥ!」
ワニが分身の足に食いつき――
「こっちですよー!」
リンが【ポージング】でワニを誘う。
――だがワニは止まらない。
そのまま分身は引き倒されてしまった。
そこへ俺は槍を振り下ろす!
分身に食いついたワニは避けられない。
槍はワニの胴体に食い込み、ダメージを与えた。
だが、まだワニは倒れない。
「こいつ、ザコワニのくせに生意気っス!」
ザコでもワニはタフである!
動物のワニとは違ってモンスターなのだ。
ステータスによる耐久力がある!
リンがあせったように言う。
「あれっ? 効きませんでした!?」
「さすがに食事中は気を引けないようだなっ!」
さらに槍を突き入れ、ワニにとどめを刺す。
分身はやられて塵に返った。
刀を回収して背中の鞘に納める。
「リン、敵はどうだ?」
「あっ。もう大丈夫です! 反応ありません!」
「んじゃーリロードするっス!」
トウコが弾丸を装填する。
事前に用意してあるので、タマぎれの心配はない。
しばらく待ってみたが、後続は来ない。
「じゃ、宝箱を開けよう」
いざ、開封の儀!
合計五個の宝箱を開けていく。
結果は肉、肉、魔石、皮、牙だった。
「鑑定してみてくれ」
「はーい。システムさん?」
【サポートシステム】が【物品鑑定】する。
<名称:ワニの魔石。カテゴリ:魔石>
<名称:ワニの肉。カテゴリ:素材>
<名称:ワニの皮。カテゴリ:素材>
<名称:ワニの牙。カテゴリ:素材>
「お、牙か。新素材だな!」
「これでワニワニ帽子が作れそうっス!」
牙といっても一本ではない。
四本の歯が宝箱の中に入っていた。
サイズはバラバラ。
大きい牙が二本。これは十センチほど。
小さいほうは五センチほどである。
俺は大きいほうを手に取って眺める。
「へえ。なかなかデカいな」
「普通のワニさんの歯もこんなに立派なんでしょうかー?」
「動物のワニのことか? 詳しくはないが……こんなに大きくないだろ?」
「ですよねー」
今手の中にある牙は人の指くらいのサイズ感だ。
今回のワニは体長二メートルほどだから……。
体格からすると牙が大きすぎるかな?
「デカワニはもっとスゴかったっス!」
「一本一本がサバイバルナイフみたいな感じだったな……」
動物のワニを間近で見たことはないが、巨大ワニの口になら入ったことがある。
初遭遇したとき、自律分身が食われたからな。
レアな体験である。
思い出したくもないし、二度と食われるつもりはないが!
「そう言えばこのモンスターの名前はワニなんだな。そのまんまかよ!」
「ワニはワニっス!」
「いや、角ワニとか牙ワニみたいなネーミングかと思ってたんだけどな」
「ツノウサギさんみたいな感じですね?」
「そうそう。まあツノもないし、ワニにキバがあるのは当然だからか」
「じゃあ肉ワニで! おいしい肉のワニっス!」
「呼ぶのは自由だけど、たぶん正式名称は鑑定結果の名前だぞ」
「ボスさんの皮は『丈夫なワニの皮』でしたねー」
「じゃあデカワニは丈夫なワニっスか?」
「さすがに違うだろ? 俺のダンジョンのボスは大コウモリが正式名称だ」
これは魔石をモノリスに入れたときに表示されているのでハッキリしている。
『大コウモリの魔石』と表示される。
そして引き換え素材は『丈夫なコウモリの皮』である。
『大コウモリの皮』ではない。
わかりにくいわ!
「じゃあボスさんは大ワニさんですね!」
「そうなるな」
ボスは大ワニ。ザコはワニ。
動物と同じ名前だが、モンスターである。
俺のダンジョンのコウモリだって名前は動物と変わらないしな。
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