毒を直接ぶち込もう!
「【水圧】も【防水】もいったん保留にしよう。取るなら【水噴射】かな。まずは【操水】と毒の組み合わせを実践で確認したい!」
「はい!」
クローゼットダンジョンの低層でゴブリンを使って実験する!
さっそく地底湖へやってきた俺とリン。
場所は前回と同じ、湖面と床が近い場所である。
ゴブリンが来たところで、術を発動!
錠剤をくるむような感じで水に乗せる。
「【操水】オン・ザ・毒錠剤!」
水がヘビのように床を這ってゴブリンのそばへ。
そのまま跳び上がって口元へ!
それを見たゴブリンが叫び声をあげようとする。
「アギッ!?」
そしてその口の中へ水が入り込む!
「ゴ……ゴゲフゥ!」
「よしっ! ついでにそのまま喉を……あれ?」
口から喉へ、そしてさらに内部へと水を送り込もうとしたのだがうまくいかない。
喉の奥には侵入できないらしい。
「どうしましたー?」
「どうやら体内に入れた水は操作できないようだ。だが問題ない!」
胃や肺に水を流し込めなくても、口に届けば十分。
顔を水で囲んで窒息させることはできるし、口に毒は入れられる。
「ガボッ!」
「ゴブリンは勝手に水をのみ込んでくれるしな!」
「なんだか、かわいそうですねー」
窒息に加えて毒である。
ゴブリンがぐったりして動かなくなる。
麻痺毒の効き目が出てきたな!
「およそ五秒か。クナイの時より早いな!」
「はい!」
クナイに塗って斬りつけた場合、十秒ほどで動きが鈍くなってくる。
さらに待てばほとんど動けなくなり、一分ほど持続する。
痺れて床に倒れ込んだゴブリンは溺死に向かって一直線だ。
さすがにかわいそうなので、さっさとトドメを刺そう!
「【水刃】……お、口の中だとダメか! なら外から【水刃】!」
【操水】と同じで、【水刃】も口の中だと発動しない。
ワニくらい大口を開けてくれたらできそうだが……これは体内判定か。
俺は外側の水を刃に変えて、喉を切り裂く。
血が噴き出して、操っている水に混じっていく。
それとともに操作が難しくなる。
「あ、倒しましたね!」
ゴブリンが塵になって消える。
と同時にゴブリンの血液も塵になって消えた。
これで残った水をスイスイ操作できるぜ!
俺のダンジョンでモンスターを倒すと血液や持ち物は一緒に消える。
「ふむ! これなら連戦でも水を使いまわせるな!」
俺が魔石を拾い上げていると、リンが言う。
「あの。今のは小さな【水刃】を使ったんですか?」
「ああ。でも威力はイマイチだな。【水刃】は水から突き出す感じで出るから、密着状態だと勢いが足りないんだよな」
リンが首をかしげる。
「よくわからないです。どういうことですか?」
あー。伝わらないよな。
俺は説明を試みる。
「ちょっと細かい話になる。【水刃】は周囲の水を固めて刃にするんだ。このとき、ある程度の水が必要になる。で、ゴブリンの口をふさいでいた水は薄く伸びた状態だったから、【水刃】にするためのまとまった水量が――」
今操っているのは地底湖の水だ。
およそ五リットル。
ゴブリンの口や鼻を覆い隠すには充分だ。
【水刃】は水から伸びるように発生する。
すでに密着した状態から周囲の水を吸い上げ、刃を形作って飛び出す。
ゴブリンの口元の水を刃にすると、土台になる水が減る。
支えがないと突き出せない。
「ええと……【水刃】も空に浮かないから、支えが必要なんですね?」
「うん。支えがないと刃を突き立てられないんだ」
体の上に乗っかった刃ができるだけ。
「なるほどー! だから水の中に小さい【水刃】を作ったんですね!」
「そうそう。ナイフを作って【操水】で喉をかき切ったんだ」
【操水】があるから、こういう小技ができる。
スキルは組み合わせ次第で色々使えるところが楽しい!
ちなみに【水刃】もあまり小さい刃は作れない。
【操水】が水滴を操れないのと同じだ。
最小サイズは手裏剣や小刀くらい。
たぶん【水刃】はある程度の大きさで放つスキルなのだろう。
「いろいろできそうですね!」
「ああ、【水忍法】は工夫のし甲斐がありそうだぞ!」
水で窒息させ、毒を口に運び、喉をかき切る!
どうやったってゴブリンは倒せる!




