水とはなにか!? その3 【スキル検証】【操水】
生物の体液、植物の汁は【操水】の対象とならない。
植物の抽出液であるお茶やコーヒーも操れない。
炭酸水、塩水は操れる。
パン粉水や薄い泥水のように、何かが混ざった水は操りにくい。
不純物が増えると抵抗が増える。
魔力消費が増えて、操作が難しくなってしまう。
俺は毒液を入れた瓶を取り出す。
「さて、次はいよいよ毒だが……これは操れない!」
「あれ……だめなんですか?」
最初に試したときはなんでダメかわからなかった。
けど今はわかる。
「この毒液はクモの毒腺を材料に【毒術】で作ったんだ。操れない理由はこれでわかるだろ?」
「はい! クモさんの体液だからですね!」
「そうだ! キノコを材料に毒を作っても【操水】では操れない」
「植物だからですねー?」
「その通り!」
リンが頬に手を考えこむ。
「うーん。体液でも植物でもない毒ってあるんでしょうか?」
「ふむ……」
俺は少し考えこむ。
ヘビやクモ、蛾やカエル。フグやサソリ。ハチ、アリ。
これは生物毒。
キノコ、トリカブト、カビ、ケシ……。
これは植物毒。
それ以外となると――
「化学物質とか核物質かな。まあ、核なんて手に入ったとしても試すつもりはないけど!」
「あぶないですよね!」
水銀やヒ素なんかも毒である。
鉱毒……かな?
どんな毒でも気軽に扱うことはできない。
でもごく弱い毒なら――
「でも、かんたんに手に入る化学物質ならあるぞ。洗剤だ!」
塩素系漂白剤と酸性の洗剤である。
混ぜるな危険! の組み合わせだ。
塩素や強い酸も毒と言えるかな?
毒とは人体に有害な物質を指すから、毒扱いでいいだろう。
まあ、ほとんどの物質は有害と言えるんだけど……程度の問題だ。
俺はいったんダンジョンから出て、アパートから漂白剤と洗剤を持ってきた。
前にも混ぜるな危険玉を作ったから材料はある。
塩素ガスが生じるので危険が伴う。
慎重にやろう。
よい子も悪い子もマネしてはいけない!
というわけで、ごく少量を混ぜて試す。
「うん。操れないな! ていうか、どう考えても水じゃないし!」
「ですよねー! 液体ですけど、水じゃありませんね!」
【操水】はあくまでも水を操る。
似ているが液体を操るスキルではない。
酸やアルカリ、化学物質はおそらくダメである。
危険なのでこのあたりは試さないことにする。
しかし毒水を操れないのは残念だ!
「でも……ジュースみたいに薄めちゃえば操れるんですよね?」
「む。それは試してないな。薄い毒水か……試してみよう!」
【操水】したコップの水に少しずつクモの毒水を入れていく。
数滴なら問題ない。それ以上になると操るのが難しくなってくる。
「あれ? 少しだけなのに操れなくなっちゃうんですねー」
「オレンジジュースのときはもっと濃くても操れたんだけどな。毒と果汁の違いか?」
「あ、ポーションみたいな感じですよね!」
「禁止度が強いってことか。ありそうだな……」
「体液や果汁は薄めればある程度操れる。毒はかなり薄めないと操れない。薄めすぎたら毒とは言えないからか」
「ほぼ水ですね!」
「あ、この水を【食材鑑定】してみてくれ。たぶん食材扱いじゃないはずだ」
「わかりました! あ、ゼンジさんの言う通りです! この水は飲めません!」
【操水】で操れなくなった水は、もう毒になっている。
つまり毒は操れない!
新ルール発見である!
ご意見ご感想お気軽に! 「いいね」も励みになります!




