水面歩行の術! 橋がなければ水の上を歩けばいいじゃない!?
第六エリアにはボスではないワニがいる。
一匹くらい狩っていこうかとも思うが、やめておく。
帰りの魔力を残しておかなきゃな。
新しいエリアで単独行動は避けたい。
葦のような植物を少し持ち帰ることにする。
これが何かの役に立つかもしれない。
さて、川の前に到着。
さっきのように川底を歩いてもいいが、同じ方法では面白みに欠ける。
ここは水面歩行で行く!
ちなみに【水忍法】に【水面歩行】があるが、取る必要はないだろう。
【操水】を使えばできるはずだ!
風呂場で水を固めたときと原理は同じ。
川の水を固めようとしても流されてしまうが――
それで良い!
「いざ! 水面歩行の術!」
川岸を走って勢いをつけ、川に向かって踏みきる!
そのまま濁った川面に着水する直前に【操水】を発動!
足元だけ水を固める!
流氷のように水に浮かぶ足場を作る。
「とうっ!」
着地成功!
揺れる足場の上でバランスを取りながら、さらに跳躍。
後は連続して走るだけ。
バランスを崩したときは【空中歩行の術】で姿勢を保てばいい。
「――よし! 渡りきった!」
対岸に着地する。
うまくいったな!
行きと違ってスムーズだ。
時間もかからないし、魔力消費も小さい。
【操水】スキルレベル二の発動は素早い。
そしてクールダウン時間もないから連発できる。
足場だけを固めているから、操る水も少なくて省エネである。
「ゼンジさーん!」
リンが遠くから声を上げ、手を振りながら走ってくる。
トウコと自律もリンのそばにいる。
二人は何かしゃべりながら歩いてくる。
トラブルがあったわけじゃなさそうだ。
「そんなに急いで、どうした?」
「戻ってくるのが見えたので、迎えに来ちゃいました!」
リンは息を乱しながらも、笑顔で答える。
俺も笑顔で応える。
「そうか。とりあえず新しいエリアを見てきたけど問題なさそうだったぞ」
そこにトウコと自律分身がやってくる。
「よう俺。こっちはトウコの新スキルを試していたところだ。詳しいところは俺の記憶を読んでくれ!」
「おう俺。じゃあ解除するぞ!」
俺は【自律分身の術】を解除して【意識共有】でフィードバックを受ける。
ふむふむ。
小山で待てと言って俺が偵察に出てすぐ、トウコが飽きて試し撃ちに行くと言い出したらしい。
【安定化】のスキルレベルを上げたので、すぐ試したくなったんだな。
気持ちはわかる。
結果は――安定感は増したが連発は難しい、というところ。
【安定化】はブレや反動をゆるやかにしてくれる。
しかし、補正には限度があるようだ。
さて、フィードバックは以上。
短時間なので記憶の受け取りはスムーズだ。
トウコが言う。
「一発ならいいけど連続して当てるのはむずいっス!」
「さっきも言ったが、素直に両手撃ちにしとけ!」
拳銃は片手で撃てる。
マグナムだって片手で撃てるよう設計されている。
とはいえ、両手で構えて射撃したほうが命中しやすい。
ついでに両手に銃を持ってたらリロードに困るし!
「まあそうっス! だけど二丁拳銃はロマンなんで!」
「そか。まあ頑張れ」
「塩っス! 塩対応っス!」
「それより偵察結果を聞いてくれ!」
そろそろ本題に入らせろ!
トウコが目をむく。
「それよりってー!? 店長、うすしお味っス!」
なんだそりゃ!?
濃くなったほうがしょっぱい対応なんじゃないのか?
「試し撃ちにも付き合ったし甘々対応だろ!」
「もっと褒めたり称えたりしてほしいっス!」
えぇ?
正直、ホメる要素が見当たらない。
「反動が幾分マシになってよかったな! すごいぞ! ……こうか?」
「ザツぅ! でもまあいいっス!」
トウコがにへら、と笑う。
いいんかい!
「さて、偵察結果だが――」
俺は見て来た情報をリンとトウコに伝える。
「えっ? 川の底を歩いたんですかー!? すごいですね! 私も近くで見たかったなぁー!」
リンは俺の話にいちいち驚いたり喜んだりしてくれる。
これぞ真の甘々対応か!
あまーい!
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