ワニさんこちら! 手のなるほうへ!
口を封じられたワニへ攻撃を加えていく俺たち。
暴れまわるワニから少し距離を取って攻撃を続ける。
近づかずに攻撃できるのは楽だな。
とはいえ術のコストが俺の魔力を刻一刻と減らしていく。
すでに魔力酔いの兆候が出始めている。
【操水】を維持しながら攻撃に参加するのはちょっとキツい。
攻撃は皆に任せておこう。
【忍具収納】から魔力回復ポーションをしみ込ませた手拭いを取り出す。
手拭いを握った手からポーションが吸収されていく。
魔力補充! 染みわたるぜ!
自立分身は槍に結びつけたワイヤーをワニの前足に絡ませる。
地面に突き立てた槍を支えながら叫ぶ。
「粘着玉! もっと拘束しろっ!」
「おう!」と俺。
粘着玉を投擲。
狙い通り、前腕に命中!
さらに投擲して片足を封じる。
「よし! あとは後ろ脚を――」
「グゴォォー!」
そのときワニがひときわ大きく暴れる。
その場で転がるようにローリング。
本来なら口で獲物をくわえてから引きちぎるデスロールの動作だ!
「おおわっ!」と自律分身。
自律分身が槍を支えられずにバランスを崩す。
ワニはかまわずに転がり続ける。
そして【操水】で封じられた口を砂の中に突っ込み、こすり付ける。
「まずい! よけろ自律!」
ワニが砂を振り払ってこちらへ向き直る。
縛りが解けてしまっている!
そしてワニは間髪入れずに、膝をついている自律分身へと口先を向ける。
すばやい!
俺はとっさに【入れ替えの術】の集中に入る。
自律分身を照準し――発動を待つ。
わずかな時間だが――間に合うか!?
リンが叫ぶ。
「ワニさん! こっちです!」
「グゴゴォ!」
ワニがばっとリンに向き直る。
その先でリンがポーズを取っている。
【ポージング】で気を引いたんだ!
「助かった!」と自律分身。
「――入れ替えの術!」と俺。
リンと位置を入れ替え、すぐに飛び退く。
大きく開いたワニの口ががちりと閉じる。
あ、あぶねえー!
リンは盾を構えていた。
だが盾ごとがぶりとやられるかもしれないからな。
暴れまわるワニから急いで離れる。
死に物狂いの暴れっぷり!
「撃て! 捕獲は考えない! トドメを刺せ!」
「わ、わかりましたー!」
「りょ! チャージするっス! 五秒かせいでほしいっス!」
「おう! 五秒だな!」
束縛を逃れたワニを五秒ひきつける?
余裕だな!
正面切って戦う必要はない。
使うのは――コレだ!
「――分身の術!」
ワニの鼻先に分身を出す。
目の前に現れた分身に、ワニは大口を開けて噛みつく。
分身が塵となって消える。
再び分身の術。
俺は次々に分身をくり出していく。
ワニはそれを攻撃しつづける。
モグラ叩きならぬモグラ叩かれゲーム!
激高したワニは周囲が見えていない。目の前の分身に気を取られてくれる。
「オッケーっス!」
「よし、撃て!」
「チャージショット! どーん!」
轟音と共に放たれた弾丸が光の尾を引いて飛ぶ。
ワニの頭部が吹き飛ぶ。
ずずん、と巨体が砂の上に倒れ込み、塵となって消える。
後には宝箱が残る。
「よし! 勝ったな!」
「中ワニなら余裕っスね!」
トウコがぐっと親指を立てる。
「余裕ですね!」
リンもトウコを真似て親指を立ててポーズをとる。
俺とトウコはリンに注目した。
没タイトルシリーズ
■タコ殴りからのモグラ叩かれ!?




