【操水】で操れないものとは……!?
リンがあっと口元に手を当てる。
「あっ! 私のことばっかりでしたが、ゼンジさんの【操水】も試しますよね?」
「【操水】ならスライム相手にもう試したぞ」
「あれ? いつのまに?」
「スライムを見つけてから倒すまでの間にな。試したのは体の水分を操れるかってことだが……ムリだった」
スライムに【操水】は効かない。
トウコが不思議そうに言う。
「うぇ? ダメなんスか? スライムなんてほとんど水っスよ!」
「人間だって水分が多いだろ? でもムリだ」
これはゴブリンでもう試したので結果は予想できていた。
ちなみに自分の体の水分も操れない。
リンが言う。
「【操水】はなんでも操れるわけじゃないんですね?」
「そうだ。生物に含まれる水は操れない!」
「またケチっスねー!」
「まあ、こんなもんだろ。生物の水分が操れるならほぼ即死させられるし」
「脳汁も水っス!」
「いちおうゴブリンで試したが、血液は操れなかったぞ」
人体のほとんどは水だというが、やはり操れない。
ゴブリンを絞ったり乾かそうとしたができなかった。
体内の水分は【操水】の対象外である。
対外に出た水分――つまり体液も対象外である。
体内の水分を操作できるなら、たいていの相手は一撃で倒せるだろう。
脳を揺らすとか、心臓を引きちぎるとか。
それはもう水操作とは違う能力だ。
体液操作じゃないかな?
トウコが舌を出す。
「うぇー!? 店長、なかなかグロいっス!」
「安心しろ。操れなかったから何も起きなかった。他の体液もムリだ」
リンが首をかしげる。
「他の体液って、唾液とか……?」
「ああ。自分の唾液で試したけど動かせない」
唾液を操って戦っても弱そうだが……。
いや、口から水や体液を飛ばす能力はたまに強い奴いるよな!
忍者あるある!
口から飛ばす攻撃は即死!
「血はどうっスか?」
「ゴブリンの血は操れなかった。自分の血では試していないけど、無理だろうな」
わざわざケガして試すのは違う。
「残念っス! 約束されし赤き刃――ブラッドソードができないっス!」
「使えたとしても出血多量で死ぬって!」
トウコたちは吸血鬼の剣士と戦ったときには意識がなかった。
のちのデブリーフィングで内容は知っている。
たしかに血の剣は中二病心をくすぐる。
赤い剣士さんは中二病患者だったのか!?
それはさておき、血液で戦うのは吸血鬼だからできる技だ。
人間にはツラいだろう。
「じゃあじゃあ、他の体液はどうっスか?」
「他なあ……一応試したがムリだな。どう試したかは気にするな」
もちろんトイレでも試した。
どうやって?
それは秘密だ。
ほとんど水分でも、ダメなものはダメ。
【忍具収納】が忍具しか収納できないように【操水】にもルールがある。
水分を多く含めばいい、とはいかない。
水ってなんなの? という深い深いテーマである。
後で助手と検証に励みたい!
【操水】のルール:体液は操れない




