モンスターに【魅力】【ポージング】は有効なのか……試してみた! その2
「うまくいきましたー!」
スライムがずりずりとリンに向かっていく!
リンは盾を構えて、ややぎこちなく待っている。
「リン! 燃やしてしまえ!」
「はーい! ファイアボール!」
リンが手をかざして火球を放つ。
燃え上がったスライムが塵になる。
俺はリンにうなずきかける。
「よし! トンファーを持ったままでも【火魔法】も【ポージング】も使えるな!」
「そうですね! ちゃんと使えました!」
トウコが感心したように言う。
「へー! 魔法使いでもトンファーとか盾を装備していいんスねー」
「ま、ゲームじゃあないからな。装備の制限なんてないはずだ」
【火魔法】については前に確認したことがある。
手がふさがった状態でも魔法は使える。
【ポージング】は姿勢が影響するので、荷物がマイナスに働く可能性があった。
それも杞憂だったな!
俺は新たなスライムを指さす。
「もう一匹いたぞ! さっきより少し離れてポーズを取ってくれ!」
「はーい! えいっ!」
リンがでんぐり返しからの挑発を決める。
「おっ! 前転挑発っス!」
「いや、そのポーズ……まあいいか」
ちゃんと効果はあるし問題ないか。
スライムはリンに引き寄せられている。
「確認オッケーっスね! うらっ!」
トウコが拳銃を抜き放ち、スライムの核を撃ち抜く。
ドロップした宝箱を回収する。
中身は弾丸だった。
「ちなみに今の【ポージング】だが、俺には効かなかったぞ」
「あっ! そーいえばあたしも感じなかったっス!」
リンが不思議そうに言う。
「あれ? そうなんですか?」
この反応だと、リンはわざと俺たちを対象から外したわけじゃないようだ。
無意識に対象を絞ったんだろう。
「たぶん【ポージング】は対象を選べるんだ。リンはスライムを狙って使ったんじゃないか?」
「そうです! スライムさん、こっちだよー! って考えてました!」
「いいね。基本的には敵だけひきつけてくれると助かる」
「たしかに、あたしたちまで振り向いたら危ないっス!」
「で、ですよねー」
リンが少し困ったような顔になる。
あえて伝えたのは意識付けのためだ。
味方を巻き込まないようにしてもらいたい。
戦闘中に味方の気が散るのは困る。
それでいて【魅了】などで行動不能になったときは使ってほしいから、味方には効かないと思わせてもいけない。
状況次第で使い分けられるようにしないとな。
「よーし! それじゃあ次は敵と味方を同時に狙ってみてくれ」
「む、むずかしそうですね……!」
しばらく練習を続ける。
ポーズを変えても【ポージング】は発動する。
敵と味方を同時に引きつけるのは難しいようだ。
ポーズだけじゃなくて、リンの思考が影響している。
「ゼンジさんたちに使うときはこっちを見てください! という感じで……。スライムさんのときはやっつけちゃうよー! って気持ちです!」
あんまり変わらない気もするが……。
「モンスター相手のときはヘイトを取るイメージなんだな?」
ヘイトは敵対心。
攻撃したくなる気持ち。
「そうそう! それです! トウコちゃんが言ってたのでー」
「あたしたちに使うときはラブっスね!」
ゲーム用語にはヘイトの対義語はないと思う。
ライクやラブ。興味や関心といったところか。
「【魅力】が乗る分、モンスターより俺たちに強く効果が出るのかな?」
「どうなんでしょう? スライムさんに効いているのか、よくわかりませんねー」
スライムはリアクションが薄い。
表情や感情が見えないからな。
「スライムからはリン姉がおいしそうに見えるかもっス!」
「モンスター相手だと効果が違うかもな」
【魅力】のように精神に作用するスキルはモンスターにも効くんだろうか?
そもそもスライムに精神があるのか?
単細胞生物……というか不思議生物だからなあ。
視覚や嗅覚があるかすらあやしい。
効果があるのだから、なにかに働きかけている。
食欲のようなものだろうか?
俺たちにはわからない別の魅力を感じさせているのかもしれない。
奥が深いぜ!
取るポーズによっても効果が違ってくる。
「強そうなポーズをするとモンスターさんを引きつけられますね!」
「エロそうなポーズをするとあたしが釣れるっス!」
「敵の数が多いと効果が減るのか、後でゴブリンで試そうぜ」
「当然! ゴブリンにはエロつよポーズっス!」
リンは首をかしげて考え込む。
「どんなポーズなのかなぁ……」
それ見たい!
じゃなくて……!
ゴブリンにそんなポーズして大丈夫か?
見てみたい気はするが、過剰に引きつけそうで怖いなあ……。
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