モンスターに【魅力】【ポージング】は有効なのか……試してみた!
トウコが言う。
「せっかくスキルも上げたし、モンスター狩りに行きたいっス!」
「まだ検証が途中だぞ?」
俺はじっくり検証してから実戦で使うタイプ。
スキルレベル一でも戦えることはわかっているから省略してもいいが……。
「どこまで操れるか気になりますよねー?」
「そうそう。水ってどこまでなのかって話だよ。さっき淹れたコーヒーは操れなかったし、布にしみこんだ水も――」
揚げ物を作りながら一人で検証した話も伝えたい。
片栗粉水、パン粉水、泥水、牛乳、塩水、砂糖水……それぞれ結果が違う。
化学物質や毒なんかも……。
トウコが口をとがらせる。
「うぇー! 細かい話がはじまりそうっス!」
「飽きたか? じゃあ、先にモンスターでの戦闘訓練をやろうぜ」
順番はどっちでもいいし。
トウコが両手をあげて跳び上がる。
「やたーっ! じゃあ着替えるっス!」
制服のスカートが揺れる。
俺たちはまだ普段着から着替えていない。
リンが耳元に口を寄せて言う。
「細かい検証は後でお付き合いしますね」
「おう。んじゃ、装備を整えて出発だ!」
各々ダンジョン用装備に着替える。
装備の一部はクローゼットダンジョンから【忍具収納】経由で移動させた。
【水忍法】を検証するので、忍具は少なめでいいな。
そのぶん、水のペットボトルを数本持っていく。
沢山持っていく必要はない。
行先はサバンナ方面だ。
川まで行けば水はいくらでもある。
トウコはいつも通りガンベルトを巻いて銃を収めている。
そしてその場で駆け足のような足踏みを始める。
「準備完了っス! はやくっ!」
「こっちの準備はまだだ。ちょい待て!」
リンに盾トンファーを持たせる。
両手に持つ二対の細長い盾である。
「使いかたは大丈夫だよな?」
「はい! 教えてもらったので大丈夫です!」
リンが両腕を上げて防御態勢を取る。
主に頭部を守る姿勢だ。
これは頭上から攻撃してくるコウモリのフン爆撃対策の構えだな。
「今回の敵はスライムやウサギになると思うから構えは臨機応変に変えてくれ。道中説明する」
「おねがいしますー!」
トウコが腕を組んで言う。
「うーん。スライムって盾で防げるんスか?」
「たしかにそうだ。受け止めた後が問題だな」
「受け止めてから燃やしちゃえばいいですね!」
「無理に盾を使わなくてもいいぞ。受け止める前に燃やせるならそうしてくれ。今回は【ポージング】の練習がメインだ」
盾の扱いを練習するためにケガしては困る。
「そうしますー! 盾の使い方はあとでおねがいしまーす!」
「よし、後で練習だな!」
手取り足取り教えよう!
そうしよう!
拠点を離れて草原を進む。
目指すはサバンナ方面。
少し先でトウコが振り返りながら急かす。
「店長、リン姉、はやくはやくーっ!」
「あんまり先に行くなよ!」
トウコが草むらを指差す。
「あ、スライムがいたっス! リン姉!」
薄い水色のスライムだ。
サッカーボールほどの大きさで、もそもそと草を食べている。
スライムがトウコに気づいてのそのそと動き出す。
リンが前に出る。
「ありがとう、トウコちゃん! じゃあ……【ポージング】!」
リンがぐっと腕を曲げる。
トウコがやってみせた格闘ゲームの挑発ポーズだ。
それ採用するのかよ!?
するとスライムは――
「おっ! 効果ありっス!」
「うまくいきましたー!」
スライムがずりずりとリンに向かっていく!
よし!
【ポージング】はモンスターにも有効だ!




