メインは【水忍法】で!
【水忍法】について調べた結果を二人に説明する。
取得したスキルはもちろん、他のスキルについてもざっと話しておく。
「というわけで【水忍法】をメインにしたんだよ」
「リョーカイっス!」
「はーい!」
「じゃ、実際に見てくれ! 【操水】はこんな感じで水を操る!」
用意しておいたポリタンクから水を外に出す。
地面の上に出した水がうねうねと動いている。
「おー!」
「スライムさんみたいですねー」
「で、これが【水刃】だ。水を刃に変える!」
水の一部が刃に変わる。
下から上へ一本の槍がせり上がる。
同時に、槍を作った分だけ水が減る。
「おーっ! よく見るやつっス! 水の槍っ!」
「わあ、強そうですねー!」
水しぶきを立てて槍が水に戻る。
「【水刃】はすぐに効果が切れる。今度は刀にして――【水刃】!」
「今度は水のカタナですね!」
「ウォーターカッタナーっス!」
「……ウォーターカッターならぬ水カタナか! わかりにくいわ!」
「へへっー」
まだ【水刃】は消えずに残っている。
これは魔力を支払って維持しているためだ。
リンが首をかしげる。
「あれ? 今度は水に戻りませんねー?」
「コストを払い続ければそのまま形を保てるんだ」
「へー!」
「で、応用編だ! この刃は水でできている! つまり――【操水】で操れる!」
【水刃】を維持。
そのまま土台にしている水の上を刀が左右に動く。
「わあー! 生きているみたいでかわいいですー」
「カワイイか……?」
動く凶器だぞ。
まあ深くはツッコまないでおこう!
水の上を刀がぐるぐると回っている。
俺が生身で刀を振るよりも遅い。
しかし腕や関節のような人体の構造を無視した動きができる。
トウコがおののくようなリアクションをする。
「ば、ばかな! 【操水】と【水刃】の同時使用っスか!?」
「お約束のリアクションをどうも」
複数のスキルならいつも使ってるけどな。
いまさら珍しくはない。
「でも店長は器用っスねー。あたしはいろいろやろうとすると頭がこんがらがるっス!」
「わかるよトウコちゃん! 私も一つずつしかできないからー」
俺はいつもマルチタスクである。
ブラック労働していたときから、ずっとそうだ。
終わらない仕事をこなしていると、一つずつじゃ終わらない。
体がいくつあっても足りないんだよな。
今や俺は分身しながら刀を振って、忍法も扱う。
さすがに頭が疲れてくるぞ!
「これはさっきゴブリンで試してきたから、実戦でも使えそうだ」
「さすがゼンジさん。しっかり検証してますね!」
俺はうなずく。
「さて、あとは細かい話になるが――」
「うぇー? 細かい話があるんスか!?」
「生活に便利な使い方でしょうかー?」
「それもあるが……」
トウコが両手を上げて笑う。
「やったー! じゃあ今日から店長が水くみ係っス!」
「そうはならん! 水をくむ手間はあんまり変わらないんだ」
「ダンジョンの外から水を運ぶからですよね?」
「そうだ。あとは、台に置けば補充できるし……」
【操水】より台に乗せたほうが早いし、手間もかからない。
リンがポンと手を叩く。
「あ、お風呂をキレイにできそうですね!」
「風呂を掃除するくらいはできるかな? でも水をキレイにはできない。【水浄化】という別のスキルが必要なんだろう」
「そうなんですねー」
「だから風呂の水はこれからもリンの【食材無毒化】で頼むぞ」
「はーい」
「あれぇ? あんまり便利になってないっスよ?」
トウコがガッカリした顔で言う。
俺は肩をすくめる。
「詳細モードだからな。今のところ水を操って刃に変えられるだけだ」
「じゃあ水ビームできないんスか?」
トウコが言いたいのは水を高圧で放つ技だろう。
「たぶんそれは【水噴射】だな」
「ちぇー! 忍法なのにいいぃー!」
トウコは残念そうに足元の小石を蹴る。
昭和のリアクションか!
「まあ、ガッカリするのはまだ早い! 【操水】を極めれば、ほとんどのスキルは実現できると思っている!」
「あ、水を操って色々やるんスね!」
「水を操って刃にしたり、飛ばしたりするんですね?」
「そうだ! リンの【ポージング】もそうだったが、スキルレベルを上げればできそうじゃないか?」
「スキルレベルを上げたら使いやすくなるかもしれませんねー」
「バンバン上げちゃえばいいっス!」
「おう! それじゃあ【操水】をスキルレベル二にするぜ!」
「はーい」
「ごーごー!」
俺はステータスウィンドウを呼び出して【操水】のスキルレベルを二に上げる。
これで勝つる!
「よし! さっそく試してみるか!」




