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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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【モデル】スキルレベル二! 【ポージング】を愛でる会!

「スキルレベルを上げました!」

「よし! さっそく【ポージング】してくれ!」


「はいっ! ど、どうでしょうか?」


 リンは照れながらポーズをとる。

 胸を張って腹をひっこめ、足を前に。

 尻もきゅっと上を向く。


 グラビアのような派手で扇情的なポーズとは違う。

 ファッションモデルのようなスタイリッシュなポーズだ。


 しなやかな体のラインが(エス)の字を作っている。

 突き出された胸の破壊力がこれまでのポーズとは違う……!



「ナイスポーズっス! じゃあ次は一枚脱いでみよーっ!」


 胡散臭いカメラマンみたいなことを言いよる!


「脱ぐのはちょっと……違うかなー」

「うえぇー? じゃあそれはあとで!」


 リンはトウコを華麗にスルーして俺に向き直る。


「ゼンジさん。スキルの効果は出てますかー?」

「ああ。さっきよりも強いぞ。吸い寄せられるような感覚がある」


 というかポーズが良かった!


「さっきよりキラキラがマシマシっス!」

「そうですか? それならよかったー」


 ふむ。

 たしかにさっきより強い効果が出ている。

 ちゃんと体感できるレベルで意識がリンに向く。


 でもなんていうか……それだけだ。

 予想を超える感じがないんだよな。



 リンが俺の顔を見て、はっとする。

 あ、顔に出てたか。


「あれ……ゼンジさん? ……もしかしてダメでした?」

「ダメじゃあない。だけどもっといけるはずだと思ってな!」


 トウコもうんうんとうなずいている。


「そーっスね! 今はふつーにスゴいって感じっス!」


 そうそう。凄いけど、それだけだ。

 スキルがなく立ってリンがポーズを取ってたら見るし。

 そんなの当たり前だ。


 リンは自信なさそうに言う。


「うーん。……どうしたらいいのかなー?」


「あ、リンが悪いんじゃなくてスキルのほうだ。まだ力を出し切れてないんじゃないか?」

「そーっス! リン姉の素材ならもっとイケるっス!」


「スキルの力を引き出す……うーん。むずかしいですねー」


 イメージがつきにくいのかな?


「スキルと会話するんだよ! 俺の【忍具作成】だってそうだ。話せばわかってくれる!」

「さすが店長(てんちょー)! よっ! スキルマニアっ!」


 茶化すな!


「ほら、リンが魔法を使うときはもっとこう……爆発力があるだろ? その感じでやってみてくれ!」

「魔法みたいにですかー。うーん。でもモデルは魔法使いとは違いますし……」


「違うってなにがだ?」

「魔法はなんでもできます。モデルは普通です」


 ふむ。

 魔法はなんでもアリ。

 モデルは現実的。そう思っているのか。


 あー。わかったわ。

 これはイメージの問題だ!


 リンはファンタジーやゲームに疎い。

 だから魔法は、御伽話(おとぎばなし)の世界のようになんでもできる()()()()()だと信じられた。

 ゆえに型にハマらない自由な発想が持てる。


 一方、モデルは現実の職業だ。

 実情をわかっているから常識に引っ張られてしまう。


 そこが問題なのだ。

 なら、それを打ち壊せばいい!



 俺は当然のような顔を作って言う。


「大丈夫だよリン。スキルも魔法みたいなものだ。願いが叶う力なんだよ!」

「魔法と同じですか……うーん」


 したり顔で話してはいるが、根拠などない。

 ただリンが信じさえすればいい!


 リンはまじめな顔で考え込んでいる。

 さらに説得!


「忍者だってシューター(トウコの職業)だって、料理人だって、不思議な力を出せるだろ?」

「あ……たしかにそうですねー! 魔法も同じなんですよね!」


 お、信じてきたかな?

 リンの目に理解が広がってくる。


「最初に【モデル】を選んだとき、いいなと思ったんだろ? 自分に見合った職業やスキルを取ったはずだ。俺もそうだった。そのときの気持ちを思い出すんだ!」


 自分の選んだスキルを信じる。

 選択は間違っていない!


「はい! ええと……あのとき私、落ち込んでばかりの自分を変えたくて……ゼンジさんに振り向いてほしくて……そうです! 【モデル】は私の願いを(かな)えてくれたんです! ズルくても……ズルくてもいいですよね!?」


 そういえばリンは最初からそう言っていた。

 ズルをして、俺を振り向かせるために選んだスキルだと。


 リンはいつだって俺を中心に物事を考えている。

 ダンジョンを攻略するためじゃなく、俺を攻略するためにスキルを選んだ。


 そんなことしなくても俺はとっくに攻略(オト)されているのにな。

 だけどその努力、嬉しいに決まっている!


「いいぞ! その気持ちをスキルに込めるんだ! 遠慮なんていらない! 全力でやるんだ!」

「はいっ! では……えいっ!」


 切り替えはやっ!

 素直なんだよな。そこがリンの良いところだ!


 リンが【ポージング】する。

 指先からつま先まで意識が通ったような洗練されたポーズ!


 これまでとは明確に違う!


 違うのはリンの表情だ。

 後ろめたさや自信のなさは消えている。


 かわりに浮かんでいるのははにかむような笑み。

 まるでふわりと花が咲いているかのようだ!


 潤んだ瞳がまっすぐに俺の目を射抜く。

 その瞳から目が離せない。


 心臓が高鳴って、胸がきゅっと苦しくなる。


「お……!? す、すごいな。すごいぞ!」


 いかん! 語彙(ごい)が……。

 まともな口がきけなくなってしまう!


「やばあ……! リン姉、ヤバすぎっス!」


 トウコも興奮した声。しっかり効いているらしい。

 だがそちらを見ることはできない。


 まるで頭を掴まれて固定されているみたいに、リンにくぎ付けにされている。



「き、効きました?」

「バッチリだよ! ちょっとヤバすぎるくらいだ!」

「ヤバいっス! あー! 我慢できないっス!」


 トウコが手を前に伸ばし、ふらふらとリンに近寄っていく。

 恋するゾンビか!


 俺の脳もとろけて腐りそうだよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] ポージングwww 魅了vs魅力 楽しみにしてます!
[一言] ~ダンジョン生活外伝~ モデルのスキルを磨いたらバズって人気者になっちゃいました! はじまりません
[良い点] ポージングが魅了Lvに強化された! その説得材料の例になった【忍具作成】先生!! さすが人気投票1位は伊達じゃない!!!?
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