ステイホームはダンジョンで!
本日二話目!
――朝が来る。
「――まだ、ダンジョンが現れて9日なんだな。やっぱりダンジョンの中にいると時間感覚が狂うなあ……」
ずいぶんと、濃い毎日だった。
寝る間も惜しんでダンジョンに潜っていた。
もう、俺にとってダンジョンは生活の一部になっている。
アパートとダンジョンを往復する毎日。
ダンジョン以外にはほとんど外出しない。
外から見れば、引きこもりと思われているかもしれない。
ステイホーム状態だ。
ダンジョンで過ごす日々にも慣れてきた。
ダンジョンはケガをする危険もあるし、死ぬことだってある。
巨大コウモリとの戦いでは、実際死にかけもした。
その時、俺は死にたくないと思った。
外に居場所がないから、ダンジョンに居場所を求めていた。
だけど、死に場所を求めていたんじゃない。
生きる場所、俺らしく在れる場所を求めていたんだ!
ダンジョンに危険があるとしても、もう恐怖はない。
それを理由にダンジョン攻略を辞めることはないだろう。
俺は、戦うことが好きらしい。
戦闘の心地よい緊張感は、俺に生きている実感をくれる。
そして、戦った分だけの報酬がある。
やった分だけ、報われるんだ。
敵を倒せばレベルが上がる。
強くなることを実感できる。
漫画のように無双とはいかないが、確実に一歩ずつ進んでいる実感がある。
レベルにしてもスキルにしても地味なものだ。
レベル差だけでごり押しはできない。
一つのスキルで一足飛びに強くなるわけではない。
スキルは相手次第、使い方次第だ。
組み合わせによっては大きな力を発揮する。
スキルを工夫するのは楽しい。
戦えば戦うほど、強くなれる。
痛い目を見るたびに、成長していく。
実力が積みあがっていく。
コツコツした作業の積み重ねだ。
レベルを上げてスキルを身に着ける。
スキルを検証して使いこなす。
そうした積み重ねが、俺を強くする。
知識が、経験が、教訓が俺を鍛え上げる。
これはレベルやスキルだけでは得られない。
地に足の着いた力だ。
俺が自分で身に着けた、努力の成果なんだ。
ダンジョンではスキルやステータスの恩恵がある。
だけど、それは敵だって持っている。
俺だけがズルして、一方的に敵を狩っているわけじゃない。
条件は対等なんだ。
だから、勝てない敵もいるはずだ。
そんなときは、逃げてしまえばいい。
大切なのは自分の命だ。
負けたっていい。逃げたっていい。
人にどう思われたっていいんだ。
生きてさえいれば、次につながっていく。
何年もブラック企業で社畜生活をしてきた。
日々を仕事に追われて、それだけで終わっていた。
職場と寝床を往復するだけの日々。
――その先が……未来が見えなかった。
だが、今は違う。
冒険と挑戦、試行錯誤の毎日だ。
新しいフィールド、新しい強敵。
毎日が驚きの連続だ。飽きることがない。
やりたいこと、できることがどんどん増えていく!
やりたいことに好きなだけ時間をかけられる。
やりたくないことはやらなくたっていい。
誰にやらされているわけでもない。
やりたいからやる!
――これぞ、スローライフ生活だ。
――ダンジョンのある新しい生活は、なかなか悪くない。
俺は、相棒の金属バットを手にクローゼットに向かう。
「さて、今日もダンジョンへ潜るとするか!」
―― 一章、完。
これにて一章完了です!
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