現役女子大生モデルの【ポージング】にご注目!?
「はやくっ! はやくっ!」
リンが困った顔で立ち上がる。
そして虚空に向かって口を開く。
「システムさん。どうやるんですかー?」
今は見えないが【サポートシステム】に話しかけているのだ。
リンはふむふむとうなずき、意を決したように深呼吸する。
リンが立ち方を変える。
「では……こうです! 【ポージング】!」
リンは俺たちに向かって体を少し傾ける。
両足を開いて立ち、腰に手を当てる。
ごく何気ない動作。派手な動きではない。
それなのにポーズがスタイルを際立たせて……見惚れてしまう!
「おお、立体感があるな!」
「モデルみたいっス!」
俺はあきれ顔でツッコむ。
「そりゃそうだ! 現役モデルだぞ!」
「あ、そーっスね」
トウコがぺろりと舌を出す。
「少し魔力を使うみたいです。クールダウン時間もあるみたいですねー」
「へえ。【ファストスラッシュ】みたいなアクションスキルか」
魔力が消費されたなら効果も出ているはずだ。
しかし、スキルの効果なのか普通に見惚れたのかの判断が難しい。
リンが改めてポーズをとる。
「こうやって少し体を傾けると動きが出るそうなんです!」
腰のくびれが強調され、ボディラインが左右非対称になる。
肩や骨盤に動きが生まれる。
斜めに角度をつけた脚はすらりと美しく伸びている。
いやらしさよりカッコよさを感じるな。
実に良い!
いくら見ていても飽きないぞ!
リンが顔を赤くして俺に訊ねる。
「ど、どうですか?」
「ああ、うん。すごくいい!」
「えへへ。ありがとうございまーす! これはコントラ……なんとかっていうポーズです!」
うろ覚えかい!
「コントラスピリットっスね!」
ぜんぜん違う!
エイリアンとは戦わない!
「たしかコントラポストだろ。重心を片足に乗せる立ち方だ」
リンが胸の前で両手を組むようにして言う。
これもポーズの一種なのか!?
「ゼンジさん、詳しいですねー」
「まあちょっと調べたことがあって……詳しくはない」
リンがストーカーされていた頃に調べたのだ。
リンが少し前傾姿勢になって上目遣いのポーズ。
「それで……どうでしょうか?」
「どうって……最高だ! さすがプロ!」
「エロカッコいいっス!」
俺とトウコが口々にリンを称える。
ポーズを決めたらヘンだって?
そんなことはない!
リンが困ったように笑う。
「あはは……その褒めてもらえてうれしいですが、スキルの効果はどうですかー?」
「ああ! そうだったな!」
「スキルのせいかどうかわかんないっス!」
「じゃあスキルを使わずに……どうでしょうか?」
リンがポーズを変える。
ふむ……いいね!
「今度はスキルアリで頼む」
「はい!」
リンは、腕を組んで斜めのスタンスをとる。
さらに首を少し傾けて、足を軽くクロスさせてポーズをとった。
うーん。大きな差はないが……。
いや?
気をつけないと分からない程度ではあるものの確かに違いがある!
周囲がぼやけてリンだけが視界に入るような……。
そして、目を離すのがもったいないような気持ちがわき上がる感じもある。
これはカミヤの【魅了】とは違う。
あれは荒々しく心をひっぱられるような感じだった。
こちらは優しく包み込まれるようなやさしい感覚。
「うーむ。ポーズの上手さやスタイルの良さが変わるわけじゃないけど……目に飛び込んでくるような感じがあるな」
「キラキラしてるっス! これをオカズにごはん三杯はイケるっス! うへへー」
ヨダレ出てるぞトウコ!
リンが首をかしげる。
そんな動作もいつも以上にカワイイぞ!
「精神に働きかけるスキルだから自覚できないのか?」
「そうなの? システムさん」
タコウィンナーが現れて解説する。
<スキルの効果は発揮されています>
「ふーむ。物理的な効果がないスキルは判断が難しいな」
「まだスキルレベルは上げてないので……でも、こんなの役に立ちませんよね……」
リンがしょんぼりと肩を落とす。
たしかに今の【ポージング】でカミヤの【魅了】が解けるかというと……。
しかしそれはリンの魅力がカミヤに劣るという意味ではない!
「いや! スキルレベルのせいだ!」
「上げちゃえばいいっス!」
「……はい! では……上げちゃいます!」
リンがえいっという感じで指を振る。
【モデル】のスキルレベルを上げたようだ!




