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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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俺の忍法を見てくれ! ……の前に始まる相談事!?

 リンとトウコが帰宅した。


 草原ダンジョンのテーブルには、揚げ物、サラダ、炊きたての米といった料理が並んでいる。


 ダンジョン素材ではなく、部屋で普通に調理したものだ。


「とってもおいしいですー」

「おいひーっス! おかわりっ!」


 二人の反応はおおむね好評。

 こういう料理は仕事(ファミレス)で毎日作っていたから、さっと作れる。



 食事がひと段落したところで、リンが口を開いた。


「あの。ご相談があるんですが……お時間いいでしょうか?」

「いいぞ。どうした?」


 俺の水忍法を見てくれ! と言いかけていたのだが、それは後でいいだろう。

 急ぐ話じゃないしな。



「【モデル】のスキルレベルを上げようと思うんですが、どうでしょうか?」

「うぇ? なんでそんなの上げるんスか?」


 不思議そうに言うトウコをたしなめる。


「そんなのってことはないだろ!」

「どーせなら魔法がいいんじゃないっスか?」


 それは俺も思う。

 なんで今更【モデル】なのかは気になった。


「モデルの仕事で使うってことか?」

「あ、いえ。外で使うにはスキルポイントが足りないかもしれません」


 リンはスキルが簡易モードなので必要ポイントが高い。

 レベル二に上げるには二十ポイントかかる。

 レベル三は四十ポイント必要なので、厳しいだろう。


「てことはダンジョン攻略に【モデル】を使うのか?」


 リンが顔を曇らせる。

 眉根を寄せて少し気後れした様子。


「はい。この間の事件で私、あんまりお役に立てませんでしたし……」

「いやいや! リンはかなり活躍してただろ!」


 【火魔法】で敵を焼いたりと、活躍の場はあった。

 なぜか本人に自覚はないようだが……。


 トウコが胸をはって言う。


「ちな、あたしはほとんど寝てたっス!」

「堂々と言うな! まあ、俺も不甲斐ない姿を見せてしまったし強くは言えないが……」


 トウコが笑顔で親指を立てる。


「仲間っスね、店長(てんちょー)!」

「そっちの仲間入りは遠慮させてもらうわ!」


 力が及ばずとも足掻いていたい。

 あ、リンもこういう気持ちなのかな?



 リンが言う。


「私ももっと、なにかできないかなって考えて……ゼンジさんを守るにはどうしたらいいのか。なにが足りなかったのか……そういうことを考えました」


 リンは少し悲し気に笑う。

 あー。けっこう悩んでたんだな。


「リンはちゃんと役割を果たしていたと思うぞ」

「そこなんです! 私の役割は魔法……ですよね?」


「そりゃそうだ。魔法使いだからな」

「でも、それだと私は守られてばかりで……」


 だから役割だってば。


「あたしも銃だから同じっス! 仲間っスね!」

「トウコは前に出すぎて、物理でぶっ飛ばされてたけどな!」


 銃使いも後ろで射撃するのが正しい。

 だから、役割だってば!



 リンがキッと目に決意をにじませる。


「そこで【モデル】なんです! もっと頑丈になれば前に出て戦えますよね!」

「【美肌】の防御力か……俺たちには壁役が足りないし、それは助かるんだけど……うーむ」


 【モデル】というスキル名ではあるが、防御力は侮れない。

 見た目だけのスキルではないのだ。


 俺は悩ましい思いで首をひねる。


 女子に守られる男子とはこれいかに。

 男として大丈夫なのか……それとも、そういう考え自体が時代遅れなのか?


 ステータスが存在するダンジョンでは性別の差はあまり意味をなさない。

 生命力で勝るリンは俺よりも頑丈で死ににくい。


 でもなあ……。

 少年漫画を読んで育った俺としては、ちょっと受け入れにくいのだ。


 姫に守られる忍者はアリか?

 ないだろ!


 ピンチの場面で颯爽と前に立つ!

 そういう立ち回りをしたいじゃないか!


 でも、それをやると俺は死ぬ!

 紙装甲だからね!


 前に立ってから回避しても守った感は薄い。

 これはずっと課題としているのだが……解決策が見つからない。



 トウコがニマニマ顔で言う。


「いいっスね! あたしもリン姉が前に出るのに賛成(さんせー)っ!」

「お? トウコは妙に乗り気だな?」


 さっきまで【モデル】をそんなの呼ばわりしていたくせに。


「へへ。リン姉を後ろから眺め放題っス!」


 トウコはさらに顔をゆるませている。


 ああ、トウコに聞いた俺がバカだったよ!

 そんな理由で前に立たせられるか!



 トウコの言葉にリンが激しくうなずく。


「そうなのトウコちゃん! 後ろにいたら見てもらえな……あっ!」


 リンが慌てて口をつぐむがもう遅い。

 だいたい言っちゃってる!


「いや……え? マジで?」


 そんな理由で前に出たいの!?


 リンは顔を真っ赤にしてうつむいている。


「その……あうう。それもあるというか……」


 トウコがひらめいた顔で言う。


「あっ! リン姉はエロいおねーさんの件を気にしているんスね!」

「うん……すごく綺麗……強かったから……」


 綺麗というより肉感的なんだよな。

 ……って思い出してる場合か!


 それとトウコ、カミヤの件を掘り返すんじゃない!


 リンはカミヤ戦で俺が魅了されたあたりの記憶があいまいだ。

 たぶんショックのあまり()()()()()()にしてしまったのだろう。


 そのままではマズいので、少しボカして説明した。

 だからリンも【魅了】のことを理解している。



「つまり【モデル】で【魅了】を打ち破る作戦なんスね!」

「トウコちゃん。そうなの! 私が正気に戻せるんじゃないかなって……ゼンジさん、どうでしょうか?」


 リンは自信なさそうにちらちらとこちらをのぞき見ている。


「【魅了】を上書きするってことだよな? 【モデル】に【魅了】ってあるんだっけ?」

「【魅了】はありませんが【魅力(みりょく)】ならあります」


「それって、どう違うんだ?」


 リンに魅力がある点は否定しないが!

 似たような字面だが、効果も似ているのか?


「ええと、システムさんによると人に好かれる効果があるそうです」

「あたしに効きまくりっス!」


 リンがあわてて手を振る。


「あ、いつもは使っていないので大丈夫です!」

「たまには使ってんのかよ!?」


 さすがにツッコんだ!

 リンが目をそらして笑う。


「あ、あはは……ちょっとズルしてました。それも言わなきゃ言わなきゃと思っていたんですー!」


 俺たちはカミヤの【魅了】をかなりの脅威と受け取った。

 心を操る悪い能力だと議論した。


 【モデル】に似たスキルが含まれていることを気に病んでいたのか。


 しかしこれまで、リンに心を操られたりはしていない。

 少なくともそういう感覚はない。

 あったとしても……まあいいか! と思う。


 って……大丈夫か俺!

 すでに恋という魔法に落ちてしまっているのでは!?


 よし! 俺の頭は大丈夫じゃない!


「まあ……リンはダンジョンの外でもかわいい! 何も問題ないよ!」


 リンとは付き合う前までダンジョンの外でしか会っていない。

 スキルの効果で惹かれ合ったわけじゃない。


 リンが驚いて口元を押さえる。


「えっ!? あ……。ありがとうございます! そう言ってくれてすごく安心しましたー!」

「いや、こっちこそありがとう。いろいろ考えさせてしまったようだ」


 トウコが興奮気味に言う。


「おおーっ! はやく見たいっス! 【魅了(みりょー)】と【魅力(みりょく)】のエロ対決っ!」


 やれやれ……トウコはなんにも考えてなさそうだ!


 エロ対決が勃発したらトウコが秒殺される未来が見える!

 俺の理性もきっと持たないけど!

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[一言] 大丈夫か頭の大丈夫じゃない忍者…
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