実戦! ゴブリン試し斬り!
【水刃】は攻撃用の術だ。
水の刃が現れて切ったり突いたりできる。
この動作はイメージで決まる。
現れる刃の形もイメージ通りになる。
刀でも槍でもかまわない。ここは比較的自由だ。
しかし刃物に限る。
鈍器をイメージしてもスキル自体が発動しない。
あくまでも水の刃を出す術なのだ。
まさに出すだけ。
作った刃を操れるわけではない。
出現させた後は動かず、水に戻る。
そして準備時間。
発動までに一秒かかる。
ちょっと出が遅い。
次に持続時間。
発動してから一秒間、刃の形を保っている。
コストを払い続けることで維持もできる。これは後述。
クールダウン時間がある。
再使用するまで三秒。連発はできない。
消費魔力はそれなり。
【分身の術】より重い。
次に距離。
水に触れていなくても発動できる。
自分の近くに水があればいい。距離は一メートルほど。
水から敵までの距離は武器の形次第だ。
突き出すように刃を作れば、二メートルほどは届く。
強さだが……これは評価が難しい。
まず攻撃用途で考えれば【操水】より使いやすい。
操作が簡単だ。細かくイメージしなくてもいい。
単純に火力――いや水力が出るスキルだ。
水の刃はそれなりに硬いが金属には劣る。
武器で受けたり払ったりすると水の刃は崩れて水に戻る。
水の量の影響もある。
水たまりのように量が少ないところから発生させた刃は弱くなる。
水の入ったペットボトルを内側から貫ける。
これは【操水】ではできなかったことだ。
【水刃】の刃は手に持つこともできる。
一秒で水に戻ってしまうが、コストを支払い続ければ維持できることが分かった。
維持する場合のコストは安い。
体感では半分ほどだ。
ただ、もともとコストが重いので刃を維持し続けるのはコスパが悪い。
結局、水を武器にするより刀で戦ったほうがいい。
武器がなくて水がある状況でなら使えるかな……という程度。
あくまで一時しのぎだ。
しかし不意打ちや奇策には使えそうである。
忍者らしい使い方ができそうだ!
「さて、だいたいわかった。次は実戦! 試すならスライムよりゴブリンだよな!」
クローゼットダンジョンに移動する。
毎度おなじみ、ゴブリン試し斬りだ!
俺は第四階層――地底湖エリアにやってきた。
「ここなら水はいくらでもある! 試し放題だ!」
ドーム状の洞窟。中央には深い湖。
壁沿いに細い通路がある。
通路が水面に近い場所がいいな。
一部が水没した通路。
足場が飛び石になっている場所を選んでゴブリンを待つ。
「キキッ!」
と思ったら先にコウモリが来た!
さすが忍者絶対殺すマン!
飛んでいるコウモリに対して、水面から生やす刃は届かない。
刀や棒手裏剣を使って倒してもいいが――
ここは【水忍法】を試したい!
ちゃんと考えてある!
俺は手のひらにペットボトルから水を注ぎ――【水刃】を発動!
「――くらえ! 水手裏剣の術!」
棒状ではなく、平べったい十字手裏剣をイメージ!
水が刃に――手裏剣状に変わる。
それを投げる!
「キィィ」
命中!
コウモリが塵に変わる。
水手裏剣が水しぶきに変わって、キラキラと空中を舞う。
壁や天井で輝いている水晶の光を反射して、なかなか綺麗だ。
「よし! うまくいった!」
刃に変えて投げても問題ない。
手を離れても一秒ほどは刃の形状を維持する。
それだけあれば敵に届く。
殺傷力もコウモリ相手なら充分!
いつもの棒手裏剣やクナイでも倒せるが、水から飛び道具が作れるのは便利!
水はタダ!
魔力を使うから労力はタダじゃないけど、道具が減らないのはいい。
お、いいところにゴブリンが来た!
狭い通路を一列になってやってくる。
四匹だ。
こちらに気づいて騒いでいる。
「ゴブッ!」
「ウギギッ!」
ゴブリンが飛び石を跳び越えて打ちかかってくる!
その一撃をなんなく躱しながら用意していた術を発動――
イメージは槍!
「貫け、【水刃】!」
水の槍がゴブリンの足元からせり出す。
穂先が胸を貫いて背中まで伸びる。
「ウギ……!」
絶命。ゴブリンが塵に変わる。
「アギャ―ッ!」
二匹目と三匹目が飛びかかってくる。
俺は背後へ跳んで距離を取る。
【水刃】はまだクールダウン中で使えない。
そこで【操水】!
こちらは【水刃】より遠くから使える。
「――【操水】!」
足元の水を操作!
ゴブリンの足を掴むようなイメージ!
腕のように伸びた水がゴブリンの足を掴み――
いや、掴めない!
水を操れても硬くなるわけじゃない。
水の腕がゴブリンの足にぶつかり水しぶきとなって砕ける。
「アギャッ!?」
しかしゴブリンは水のカタマリに足を取られて転倒。
やわらかくとも水には重さがある!
動きを邪魔するには充分!
さらにこぼれた水を操作する。
転倒したゴブリンめがけて水が床を這っていく。
するすると、まるでスライムのように。
そのまま立ち上がりかけていたゴブリンの口元へ!
「ゴブッ!? ……ゲホっ!」
一抱えほどの水がゴブリンの口と鼻を覆う。
これは俺が操れる最大量――およそ二十リットル!
ゴブリンの頭部を包み込むには充分!
「ガボッ! ガボガボ!?」
ゴブリンが手で水を払おうとする。
少量の水が取り除かれるが……するすると元に戻る。
まとわりついた水は払いのけられない!
ゴブリンは顔を真っ赤にして喉をかきむしっている。
息絶えるまでには時間がかかりそうだ。
このまま続ければ窒息死させられるだろう。
陸上で溺死だ。
しかし、魔力の消費が重すぎる。
大量の水を長時間操るのはかなりキツイ!
俺は刀でゴブリンにとどめを刺す。
ついでに残るゴブリンも始末しておく。
魔石を回収して息をつく。
「ふう……魔力消費がキツイ! しかし窒息攻撃は強そうだ!」
【操水】の使い方はこう!
これぞ忍法だよね!
定番にして最強の窒息攻撃!
対策しづらく、防御も困難!
物理的な破壊力など必要ない。
水そのものが凶器なのだ!
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