沼人間? 二重存在? 俺は俺で、お前は俺だ!? その3
ここまでにクロウが把握した自律分身のルール
・生み出された瞬間の本体と同等の記憶を持つ
・本体と同じように思考する
・本体を害する気持ちはない
・自分が分身であることを自覚している
・ステータスを持つ
・スキルを持たない
・経験や運動のコツも引き継ぐ
・時間経過で消滅する
・消滅時、意識や経験は本体へ還元する
・本体の記憶と分身の記憶の両方が別に残る
自律分身が消えた。
そして自律分身だった時の記憶も、俺の中にある。
「ああー! さっきまでのことを思い出そうとするとこんがらがるな……」
――自分が分身だと自覚した記憶もあるんだ。
じゃあ、今の俺は……本当に本物の俺か?
「自信なくなってくるよなあ……」
今の俺は本体だ。分身だという感覚はない。
本体のはずなんだが……。
「ステータス――出る。分身の術――出る!」
分身にはできないステータスウィンドウを表示させる。
――ちゃんとウィンドウは出る。
分身にはできないスキルを使う。
――ちゃんと【分身の術】は発動する。
「よし……俺は本体だ。間違いない」
一応、これで俺が本体だと納得できた。
でも言い知れない不安を感じるんだよなあ……。
「現れた分身は、普通の分身か……」
現れた分身は意思を持たない。普通の分身だ。
もちろん、勝手に動いたりしない。
「やっぱり、自律分身の術は別スキルだな。では――自律分身の術!」
――出ない。
自律分身の術は発動しない。
この手ごたえは、再使用可能時間だ。
時間をおかないと、次の自律分身は出せない。
「連発できないスキルか。――となると、どの程度の時間を置けばいいのかな」
少し待っても、再使用可能にはならなかった。
きっとクールダウン時間が長めに設定されているんだろう。
あとで試してみよう。
俺は五階層の先――くだり階段を見つけた。
降りてみる。
――やはり、六階層も存在している。
ダンジョンは、ここで終わってはいない。
まだまだ、続いていくんだろう。
この先の攻略は、またあとで。
先に自律分身を検証してしまいたい。
クールダウン時間、コスト、耐久力――いろいろ調べたい!
自律分身を使いこなせば、できることや戦略も増える。
装備も考えないといけないな。分身の分を作るんだ。
急ぐことはない。
――ダンジョンは逃げやしない。
アパートの部屋に戻ってきた。
「ふう……。今日は盛りだくさんだったなー!」
今日は【薬術】で丸薬を作って、ワイヤーで装備を整えた。
五階層のボスも倒したし、新しいスキルも得た。
自律分身には驚かされたが――面白い使い方がいろいろありそうだ。
検証するのが楽しみだ!
なかなかに大変な一日だった。
それだけに、充実した一日になった。
――心地よい疲れで、すぐに眠りは訪れた。
本日は二回投稿予定。夜にまた更新します。
次話で一章完結します!




