非言語コミュニケーション!
御庭は言葉や表情を読んで情報を見極める。
一発で見抜くのではなく、多くの情報から絞っていく。
精度が高い情報をもとに下した判断は正確だ。
「つまり御庭の話がクドいのは異能のせいか……」
「クロウ君、それはヒドくないかな!?」
「その結果、俺たちを信用してくれたんだな。今回のオカダ達についてもそうなんだろ?」
オカダは人の血をすする吸血鬼だ。
いきなり信用して仲間に引き入れるのは危険を伴う。
御庭がぱちんと指を鳴らす。
「さすがクロウ君! 鋭いね! 今回、僕はオカダ君の行動を直接見た。だから交渉もスムーズに進んだよ」
「直接見ることが重要なのか?」
ナギさんがちらりと御庭を見る。
とがめるような、心配するような視線だ。
まあ、言いたいことはわかる。
御庭は気づいているのだろうが、そのまま話を進める。
「うん。とても重要だ。又聞きでは捉えられない情報は多い。それは身振り手振りや、わずかな間であったりする。報告書を読んでも読み取れない大切な情報だ」
非言語情報によるやりとり――ノンバーバルコミュニケーションだな。
感情や本音は文字だけじゃ伝わらない。
話すテンポや身振り、表情や仕草は多くの情報を伝えてくれる。
言葉だけじゃ話は伝わらないのだ。
俺は御庭に問いかける。
「だから御庭は危険を承知で前線に来るんだな?」
御庭は嬉しそうにうなずく。
「そうだよクロウ君! そういうことなんだよナギ君!」
ナギさんが言う。
「御庭さんの場合、ただ人と話したいだけじゃないですか?」
「それもある! さあナギ君。もっと話そう!」
あるのかよ!
ナギさんは目をそらしてため息をつく。
「……はぁ」
しょうがない人だ、とでも言うようなため息。
うむ。
見事なノンバーバルコミュニケーション!
リンが言う。
「あの……。オカダさんと話してみてどうでしたか?」
「心配ないよリン君。オカダ君の行動原理はわかりやすい。求めているのは自由と闘争だね。それさえ与えてあげられれば裏切ったりしない」
――楽しく暮らせればそれでいい。
オカダはそう言っていた。
意味もなく人を殺す気はないし、後味が悪いとも。
「自由はわかるが、闘争? 戦うのが好きそうではあったけど……」
「バトルジャンキーっスね!」
御庭が続ける。
「オカダ君は戦いを望んでいる。たまにダンジョンで戦わせてほしいそうだ」
「自分から戦いたがるとは、ありがたいな」
「うん。でも一人で外に出すわけにはいかない。そのときはクロウ君が一緒についていってあげてね」
御庭がいたずらっぽくウィンクする。
なんか腹立つな!
「おい俺かよ!」
「クロウ君ならいざというとき彼を抑えてくれると確信しているよ」
俺は小さくため息をつく。
もともと俺はオカダを仲間に引き入れることには賛成だ。
それを分かったうえで、俺に頼んでいるのだ。
交渉上手め!
「ま、最初に誘ったのは俺だし、そうなるよな。戦力になりそうだし、たまにはいいぞ」
「助かるよ。危険度の低い悪性ダンジョンが見つかったら連絡する。サタケ君の治療も任せるね」
まとめて用事が片付くし、悪くない。
「危険度の高いダンジョンなら見つかっているのか?」
「あるにはあるけど、急を要する状況ではないんだ。治療のために手を付けるのはちょっとね」
危険なダンジョンにポーションを使いに行くのは本末転倒だ。
ケガが増えては意味がない。
「そんなダンジョンを放置していていいのか?」
「それは大丈夫だよ。周囲に広がる心配はないんだ。オカダ君の状況を見ながら、クロウ君が手伝ってくれれば処理できるんじゃないかな?」
「俺たちとオカダで攻略しろってことか?」
「うん。ただ、さっきも言ったように急ぐ状況ではないんだ。時間のあるときにお願いするね」
「おう。そうだな。今はちょっと俺もいろいろ考えたい。今回の件でいろいろ課題も見つかったし、準備してからだな」
リンが言う。
「課題……ですか?」
「今回の戦いで身に染みたが、まだまだ力不足だ。新スキルを取って準備しなきゃな!」
「パワーアップっスね!」
上級忍者のスキルを取ってできることを増やしたい!
帰ったらじっくり考えよう!




