エスパー御庭! 感覚的知覚は高能力で!?
御庭はESPを使えるが限定的だ。
得られる情報は微弱な違和感だけ。
あれ。待てよ?
感知能力は異能とは別物なのか?
ということは、御庭は複数の能力を持っている?
ダンジョン保持者なら多彩なスキルを持っていてもおかしくない。
わかりやすいところで言えば、リンの【火魔法】と【食材】は全く関係ないスキルだ。
俺は忍者っぽい能力を選んでいるが、実際は違う系統のスキルを組み合わせている。
だが御庭は異能者だ。
異能は一人一能力だと思っていた。
これまで見聞きした範囲では、異能者は複数の能力を持ってなさそうに思えるのだが……。
俺は御庭に尋ねる。
「御庭はESPと情報を扱う異能……ええと【完璧な自問自答】を持っているのか?」
「二つ持っているというよりは、同じものだね」
「異能って超能力なんスか?」
「呼び方の問題だね、トウコ君。僕らが異能と呼ぶ力は超能力の一部だ。僕はモノを動かすテレキネシスは持たない。弱いイーエスピーと、情報処理能力の組み合わせが、僕の異能というわけさ」
俺の【回避】や【危険察知】も超感覚の一種と言えるかもな。
個人差もあるし、スキルや異能を分類するのは難しそうだけど。
「となると……犬塚さんの嗅覚も超感覚と何かの組み合わせなのか?」
「犬塚君の異能は一級品だ。ただ匂いを嗅ぐだけじゃなくて、概念すら嗅ぎ取っているように思える。遠くから狙っているスナバ君の存在に気づいていた節があるし、ナギ君に対して警戒していた。実際にわかるはずのない匂いを感じ取っているんだろうね。情報が足りないから推測しかできないけどね」
情報が足りない?
御庭と犬塚さんの接点は少ない。
だというのに、ずいぶんと深く推測できている。
トウコの家で睨み合ったあの瞬間に、それだけのことを把握してたんじゃねーか!
「たいしたものだ……!」
「ちゃんと便利っス!」
御庭が指を立てる。
心なしか表情が曇っている。
「ただし、僕のESPはすごく出力が弱いんだ。相手に干渉することはできない」
「御庭の場合、出力が弱いから自分にしか使えないのか?」
「うん。外に向けて使っても何も起きないくらいに弱い。感じる力も弱くて、ちょっとした違和感を覚えるくらいだ」
送信機能なし。
受信機能しょぼめ。
悲しすぎないか、それ……。
「そりゃ……残念だな」
「出力は弱いけど、使い道はある。そう信じて使い方を工夫したんだ。外ではなく内に向ける。自分自身に直結したとでも言うかな。その結果、自分の考えが間違っていれば、それに気付けるようになった」
「間違いに気づくだけじゃないよな? 完全記憶能力もどきもあるだろ?」
「それも工夫だね。ESPは情報を得る能力だ。それを使って、僕は自分の脳から情報を引き出している」
超感覚で自分の脳から情報を引き出す……。
斬新な使い方だな!?
「……自分をハッキングしているような感覚か?」
「その説明はわかりやすいね! メモしておこう!」
御庭はその言葉もらい! みたいな感じで手帳にメモしている。
御庭の異能を考えれば、意味のない行動だ。
つまりこれは君の話は聞いたよ! というジェスチャーなのかもしれない。
トウコが両手を握ってぷるぷるしている。
「セルフハッキングっ! なんかかっけえっス!」
「でも、そんなことをしても大丈夫なんでしょうか?」
「心配ありがとうリン君。特に不都合はないね。出力が弱いおかげで負担も少ないんだ」
ナギさんがさらっと言う。
「よく頭痛でダウンしてますよね。自重してください」
「それは異能のせいじゃないけど……うん。心配ありがとうナギ君」
「心配ではなく忠告です」
「うん」
働きすぎというか……過労か。
忙しいくせに話は長い。
俺も人のことは言えないが、ちょっと休んだらいいと思うぞ!




