ラプラスの悪魔とおばあちゃんの知恵袋!?
「社長って実は無能力の天才パターンじゃないっスか?」
「異能はちゃんとあるよ。だから認識阻害の影響を受けない。それに多少の感知能力もある」
御庭が異能持ちであることは間違いない。
「ちなみに感知能力って、どんなものだ?」
「超能力の分類でいう超感覚的知覚。ESPだよ」
リンが首をかしげる。
「いーえすぴー?」
「エスパーっスね!」
エクストラ・センサリィ・パーセプション。
略してESP。
ESP使いをエスパーと呼ぶ。
五感以外から情報を得る能力。
見えないものを見たり、知らないことを知れる。
「テレパシーは使えないって言ってたよな?」
「ESPにもいろいろある。精神感応はその一部だね。千里眼だとか透視だとか、見えないものを見る能力も僕にはない。せいぜい違和感を覚えるくらいだ」
「あたしも見ちゃいけないものが見える能力なら欲しいっス!」
「エロ用途でしか使わない能力じゃねーか!」
リンがスルーして言う。
「御庭さん。違和感ってどんな感じなんですかー?」
「虫の知らせとか居心地の悪さ。静電気で毛が逆立つ感じ……その程度の感覚かな」
「言っちゃあなんだが、それで役に立つのか?」
「役に立つさ。ダンジョンがある場所に近づけば感じる程度にはね。僕はその感覚を知っているから、ダンジョンの有無が判断できる」
「なるほどな。弱い感覚でも【自問自答】で正解がわかるわけだ」
「そういうことさ!」
違和感だけでは、それがなにかわからない。
御庭は過去にダンジョンに近づいた経験があるから判別できる。
「社長。予知能力はどうっスか?」
「予知はできない。だけど予測はできる。普通より高い精度でね」
「じゃあ明日の天気はなんスか?」
「明日は晴れ。明後日は雨だよ」
「ただの予報じゃねーか! いや……天気予報を暗記しているのか?」
記憶した情報を引き出す能力を使ったのか?
「予報を見なくても数日先までならわかる。過去の気象データは頭に入っているからね」
「つまり自力で予想できるって意味か?」
「うん。そもそも天気予報は統計情報、気象データから天気を予測する技術なんだ。僕の異能によく似ている」
リンが言う。
「おばあちゃんの知恵袋みたいですねー」
「夕焼けがきれいだから明日は晴れ……みたいなことか」
これは昔からの生活の知恵。知識の蓄積だ。
御庭が大きな身振りで言う。
「天気に限らず、情報が多ければ精度は上がっていく。もし僕がもっと強い知覚力を持っていて、その場に存在するすべての情報を手に入れられるなら……未来さえ予測できるだろうね!」
過去の積み重ねを前提として未来は紡がれる。
すべてを知れば、未来を予見できる。
「急に大きく出たな! ラプラスの悪魔かよ!?」
「詳しいねクロウ君! まあ、残念ながら僕にはそんな力はないんだけどね!」
ないのかよ!
自信満々に言いきったね!
「おばあちゃんの知恵袋とラプラスの悪魔さんのあいだに御庭さんの力はあるんですねー」
「社長の異能はおばあちゃんの悪魔で決まりっス!」
「鬼姑かよ! ならラプラスの知恵袋でどうだ?」
「ちょうどいいかもしれませんね!」
「スゴそうでショボい感じがちょうどいいっス!」
「失礼でしょトウコちゃん……」
リンもほんのり失礼だけどな! と心の中でツッコんでおく。
異能を名付け始めた俺たち。
御庭は困ったような笑顔で見守っている。
没タイトルシリーズ
■知恵袋と悪魔のあいだ……?




