完璧な自問自答! 看過の神眼! 真実の目! 真贋判定!
「ここまでは前提。説明はまだまだ入口だよ」
俺は半眼で御庭を見る。
「御庭に似てめんどくさい能力だな。異能は本人に似るのか?」
「まあ、そう言わないで聞いてほしい」
「もちろん聞くが」
「ここまでの話をまとめるね。僕は記憶や知識を情報として扱える。その情報は劣化せず、間違いはない。そしてこの情報をもとに出した結論もまた正しい」
「正しいというのは……記憶違いがないってことだよな?」
「さすがクロウ君! 情報が間違っていないことがわかる。残念ながら真実がわかるわけじゃないけどね」
リンが首をかしげる。
「真実……? どういうことですか?」
「普遍的な正解とでも言おうか。真理とでも言おうか。僕は嘘を見抜けるけど、嘘そのものの真偽を判定してはいない。言い換えると、異能で正解か不正解かを判断できるわけじゃないんだ。表情、過去の言動、性格……そういうものから答えを導き出している」
「御庭の異能は物事の真実……正解という概念を操るのとは違うんだな?」
「うん。一足飛びに答えがわかるわけじゃない。答えを直接知るのではなくて、外堀から埋めていく感じだ」
「なんでもわかるわけじゃなくて、自分が知っている情報を利用するんだな?」
「そう! 僕が嘘を見抜けるのは、それを見抜く知識を持っているからだ。嘘をつく人間はいろんなサインを出す。その癖を知っているから、それが見抜ける。初めて会う人に対しては精度が低くなるけど、クロウ君とは何度も話したからほぼ確実にわかる」
声の震えや声量、まばたきの回数、目線の動き。
そういったサインをもとに嘘を見抜く。
俺も聞いたことはあるが、嘘を見抜くことはできない。
知っているからと言って利用できるわけじゃない。
練習すればできるか?
「これって、ただの技術とは違うのか? 捜査心理学のプロファイリングみたいなさ」
「FBIっスね! ワーニングっスね!」
「少し違う。心理学やプロファイリングの技術はもちろん使っている。そういう知識を前提にして、情報を分析するんだ」
「むむ……学問の知識も前提でしかないのか」
あらゆる情報を材料として、正解を導き出す能力……?
トウコが頭を抱える。
煙が立って爆発しそうな顔をしている。
「うぇー! 全然わかんないっス」
御庭が言う。
「鑑定能力のように設定されたパラメータを読むのとは違う。【嘘発見】や【真贋判定】とは違うって話だよ」
「これは嘘や真実に直接アクセスできる能力だな」
鑑定さん最強説!
「あっ! 世界の聲を聞きし者! トゥルージャッジメントっスね!」
「違うって話だからな、トウコ?」
勘違いしていそうなので一応ツッコんでおく。
そんな便利なものじゃあない。
リンが胸の前でポンと手を合わせる。
「御庭さんはお相手をよく見て、気持ちを汲み取れるんですよね?」
「それだと、ただの空気が読めるヤツだけどな!」
まあ、言われてみれば御庭はそんな感じか?
「はは……そうとも言えるねリン君。そう。僕の異能は傍から見ると普通の人間と変わらない。だからどれだけ人前で異能を使ってもバレないんだよ!」
御庭はドヤ顔で胸をそらせる。
それって……異能が地味すぎてバレないだけだろ!?




