御庭クイズ最終回! 思ったより微妙なその異能……!?
俺は言う。
「御庭の異能は――正しい情報を見抜く能力! どうだ?」
御庭がいい笑顔で言う。
「お、いいねクロウ君! 九十点をあげよう!」
「そりゃありがとう。じゃ、早く答えを教えてくれ」
御庭がさみしげな顔を作る。
「つれないじゃないかクロウ君! やっとお楽しみの正解発表なのに!」
「いや、そんなに楽しみにしてないから」
ナギさんが言う。
「楽しんでるのは御庭さんだけです」
「ナギ君……そうなのかい?」
ナギさんがはっきりとうなずくと、御庭は肩を落とした。
トウコが急かす。
「はやくはやくー! 結局なんなんスか?」
御庭が言う。
「うん……クロウ君が答えてくれた通り、僕の異能は結果的に正しい情報を見抜くことができる」
「お? いいセンいってたか?」
御庭が俺、トウコ、リンの顔を見る。
「だけどクロウ君が考えているほど万能じゃないし、トウコ君が思うほど派手じゃない。リン君が心配するような力もない」
俺の答えでほぼ正解だが、完全に合っているとも言えないのか。
「ふむ……制限があるんだな?」
「そう。僕は知っていることの正解がわかる!」
トウコが不思議そうな顔で言う。
「うぇ? そんなの当たり前じゃないっスか?」
「普通の知識とは違うんだよ、トウコ君。知っていることが正しいとは限らないよね? 僕は自分が持っている情報を正しく判断できるんだ」
情報が正しいか判断できる?
なんだそりゃ?
「ぜんぜんわかんないっス!」
「たとえばトウコ君。昨日の晩ごはん、なにを食べたかな?」
トウコが勢いよく答える。
「お肉っス!」
「ざっくりしてんな!」
「昨日の晩ごはんはウサギ肉のステーキでしたねー」
御庭が言う。
「おいしそうでいいね。じゃあ、十日前の晩ごはんは憶えているかな? 一年前は?」
「うえぇ!? おぼえているわけないっス!」
御庭がうなずく。
「そうだね。普通は憶えていない。でも僕にはわかる。どこで何をしていたか、その日何を食べたか。気温、温度、天気。誰と会い、なにを話したか。そのすべてが情報として引き出せる」
記憶なんて不確かなものだ。
数日前のことすらちゃんと思い出せない。
御庭はそのすべてを思い出せるというのか……?
「つまり完全記憶能力か!?」
瞬間記憶とか記憶の映像化と呼ぶ場合もある。
見たものすべてを覚えておける能力!
地味だが強力な能力だぞ!
御庭は首を振りながら言う。
「クロウ君が思ったものとは少し違う。情報として持っているけど、記憶として持っているわけじゃない。記憶力はいいほうだけど、完全じゃない」
「ふむ……。自分の記憶をデータとして扱える……ということか?」
記憶を整理する記憶術みたいなものか?
引き出しに記憶をしまうイメージをしたり……。
「少し近い。僕が見聞きしたものは情報として残る。無意識に覚えているという感じかな?」
トウコが言う。
「それって覚えているのとなにが違うんスか?」
「映像や音として思い出せるわけじゃないんだ。記憶と情報は違う。まあ似たようなものだと思ってくれていい。説明が難しいんだ」
言いたいことはわからないでもない。
はっきりと覚えていないが知っていることもある。
「まあ、ヨシとしよう。で、自分の持っている情報の正しさがわかると」
「そう。そしてその情報をもとに判断した結果もまた正しいと理解できるんだ」
自分の持っている情報が正しいとわかる。
その情報をもとに分析した結果もまた情報であり、その正しさがわかる。
ふうむ……複雑な!
こんな能力、クイズ出されて答えられるわけないだろ!?
しかも説明されてもわからん!
トウコがじれたように言う。
「うう……わかんないっス! もっとわかりやすくなんないっスかー!」
「トウコ君やシャドウ君風に言うなら異能――完璧な自問自答! 僕の異能は外界に発するものではなく、己自身へと問いかけるものなんだよ!」
なにぃ!
中二病風にしただと!?
「おおーっ! かっけえっス!」
トウコはわかったような顔でうなずいている。
たぶんわかってないけど!
「僕が自分の異能をすぐに教えないのは、いろいろと理由があるんだけど、どうしたって伝わらないからなんだ」
「ああ。ぜんぜん伝わってないぞ!」
「だよね。もう少し説明させてくれるかな?」
「ああ、頼む」
御庭クイズを楽しみにしていたわけじゃないが……。
ちゃんと理解しておきたい!




