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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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沼人間? 二重存在? 俺は俺で、お前は俺だ!? その2

前話でクロウが把握した自律分身のルール

・生み出された瞬間の本体と同等の記憶を持つ

・本体と同じように思考する

・本体を害する気持ちはない

 分身との自分会議が続く。

 まるで自問自答しているみたいだ。


「そういえば、お前って消えないの? 普通の分身は一分くらいで消えるけど……もう結構経つよな」

「あ、たしかにな。俺は普通の分身とは違うんじゃないか。自律分身の術っていう別スキルで作り出されてるんだし」


 ふむ……。

 これまでの【分身の術】が強化されたり進化したわけじゃない説か。


「ああ、そうかもしれないな。ステータスで確認してみるか」

「そうだな。ステータス――あれ、出ないぞ!」


 と分身が慌てている。

 ……分身はステータスウィンドウを出せないようだ。


 俺にはステータスが表示されている。



----------------

 名前 : クロウ ゼンジ

 レベル: 9(8より増加)

 職業 : 忍者

 スキル: 


 (省略 今まで通りのスキルが表示されている)


 【エラー】

  【自律分身の術】

   【意識共有】


 (残ポイント:5)

 --------------------



「ん? なにこのエラーって!?」

「ちょ……なにそれ!? 俺には見えないんだから説明してくれよ!」


 あ、そうだな。

 分身も俺――ほぼ俺なんだから気になるか。


「ええとな、スキルの一番下にエラーってスキルが追加されてる。そこにぶら下がるように自律分身の術がある。その下に意識共有がある」

「なるほど。基礎スキルである忍術の下に壁走りの術があるような感じか」



 たとえばこんな感じだ。


 --------------------

  【忍術】1

   【壁走りの術】2

   【分身の術】3

 --------------------


 だから、今の状態は【エラー】が基礎スキルってことになる。

 

 エラーが基礎になってるスキルとか……。

 大丈夫ですかね。


「そういうことになるんだろうな。――説明を表示してみるから、ちょっと待ってろ」


 俺は分身に頷き返す。


「おう。――俺はちょっと試したいことがあるからやっとくわ」


 分身は少し離れていく。



 ステータスウィンドウからスキルの説明を表示してみよう。

 【自律分身の術】をタップする。


 ウィンドウが切り替わり、説明が表示された。



 --------------------

 【自律分身(じりつぶんしん)の術】

 レベル1:自身の複製である分身を生み出す。分身は自分同様に自律的に思考する。

 レベル2への必要ポイント:ー


 【意識共有】

 レベル1:自律分身の解除時、本体に記憶を統合する。

 レベル2への必要ポイント:ー

 --------------------



 レベル2への必要ポイントが、妙だな。

 いつもなら2とか数字になるんだが。ハイフンか。


 なんだこれ。

 レベル2に上げられないってことか?

 でも表示されてるんだから……レベル2はあるってことだよな。


 バグってんのか。

 なにもかもがイレギュラー。

 毛色の違うスキルだ。


 いつものスキルと違って、ボスの初討伐の報酬だしな。


 ゲームで言う――実績システムとか称号システムみたいなアレ。

 俺のダンジョンにはないと思っていたけど、あるんだ。


 こういう場合、漫画的にはチートなスキルを貰えるわけだが……。

 この自律分身は――どうだろう?


 俺自身は現実的には充分強いけど、ファンタジーの基準で考えると、無双の強さはない。

 その俺が増えても……チートな強さとは言えないんだよな。


「……微妙」


 でも、使い方は色々ありそうだ。



 もう一人の俺は少し離れたところで壁を蹴ったり、バク宙や側転をくり返している。

 なにやってんのアイツ……。


「で、説明からなにかわかったのか?」


 そういいながら分身が俺のそばへ戻ってくる。


 しゃべる自分が近寄ってくるのは、なんか怖い感じするな。

 俺のコピーだとは納得したが、まだ違和感は残っている。


 鏡の中の自分が動いたりしゃべりかけてきたら怖いじゃん?

 こいつは自由に動くしな。


「ああ、説明文によるとな――」


 俺は読んだ通りの内容を説明する。

 それを聞き終えた分身がこたえる。


「つまり俺は――自律分身は――解除されたら、記憶がお前に統合されるのか」


 解除とは、分身が消えるときだ。

 効果時間が切れるか、撃破されたとき。


 あるいは俺が解除したとき。

 スキルはオンオフできるから、分身も消すことができる。

 普段は、消す意味もないし出したら出しっぱなしが多い。


「お前は、いずれ消えるんだろうけど……統合ってどんなだろうな」

「――消えるっていうのは……どういう感じになるんだ? ちょっと、怖い感じするわ」


 分身は、深刻な顔で考え込んでいる。

 そりゃそうだな。どうなるかわからないが、消えるって……自分が消えてしまうんだからな。

 怖いだろう。

 自分の意識が消えるってことは、死ぬようなものだし。


「でも、死ぬのとはちがう、はずだよな? 意識が統合されるってことは、お前の意識が俺のところに……それはそれでなんか怖いんですけど!?」

「いや、俺が戻ってくるの嫌がるのやめて!?」


「いや、嫌なんじゃなくて……」

「まあ、わかるが……俺だって初めてのことだ。俺は自律分身だけど――俺は俺が何者かわからないんだ。って、哲学的だな」


「ああ、お前は(本体)の延長線上のお前だもんな。スキルの効果(自分のこと)がわかるわけじゃないか」

「さすが俺。以心伝心! ――というか、考えることは同じだな」


 分身はさっきまで俺だった。

 くわえて、自分が【自律分身の術】で生み出された分身だと理解している。


 だが、それ以上の情報はない。

 【自律分身の術】や【意識共有】のスキル効果を知っているわけではない。


 あくまで俺の意識のコピーを持った分身だ。

 【自律分身の術】そのものではない。

 スキルが擬人化(ぎじんか)したとか、人格を持っているのとは違う。


「じゃ、消えないうちに俺が調べたことを伝えとくわ」と分身。

「ああ、さっきとんだり跳ねたりしてたやつか。なにしてたんだ?」


 はた目には、ちょっと変なヤツに見えていた。


「体の動きを確認していた。――ステータスはある。敏捷と体力だな。おかげで素早く動けるし、疲れにくい。いつもの通りってことだ」

「へえ! ってことは、結構便利――強いんじゃないか? 戦力二倍だぞ!」


 俺が二人に増えたってことは、戦う場合の戦力は二倍だ。

 これまでのスキルは、そんなに劇的な強化はなかった。


「いや、それがそうでもない。――スキルはないんだ。一つも使えない」

「……マジか。そりゃ残念なお知らせだ。壁走りも隠密もできないんだな……」


「まあ、そう悲観するな。生身でできることはある。スキルが無くてもバク宙くらいはできる」

「なるほどね。それでバク宙の練習してたのか」


「そうだ。スキルがなくても、ある程度は動けることを確認できたぞ。――高度な技は無理だけどね」



 俺は【軽業】【跳躍】【歩法】などのスキルのおかげで、華麗で高度なアクロバットができる。

 高度な技は、スキルが必要だ。


 だが、俺はもう、スキルのおかげで知識や経験を積んでいる。

 ある程度の動きはスキルの補佐なしにも可能だ。


 分身は俺と同じ経験を持っている。

 つまり、コツをつかんでいるんだ。


 くわえて、分身にもステータスはある。

 敏捷のおかげで素早く、器用に動けるんだ。

 常人以上の動きができて当然だ。



「じゃあ、ステータスがなかったらどうだ?」

「そりゃ、簡単な技ならできるだろ。バク転とか?」

「どれくらい動けるかは後で確認だな。ここだとステータスがあるから、わかんないね」


 ステータスがなくても、ある程度の忍者的な動きができる……はずだ。

 ダンジョンの外でも、動けるってことだ。


 ダンジョンの外ではスキルもステータスも使えなくなることは前に確認した。

 だけど、何もできなくなるわけじゃない。

 ここで経験したことは、俺の力になる。



「というわけだから、あとでお前もスキルを切って試してみろよ」

「いや、お前の経験が統合されるっていうなら、体験済になるんじゃないか?」


 すると、分身はすこし考え込み――


「――ああ、そうだ。ややこしいな。俺が経験したことは後でお前に還元されるんだった」


 ステータスありの状態での検証は済んだことになるはずだ。


「ってことは、検証効率は二倍になるわけだ。二人で分担して調べたり探索できるな」

「経験値も一本化されたりしてね。そしたら、レベリングがはかどるぞ!」


 俺と分身は顔を見合わせて、にんまりと笑う。


 これは、強さとは違うメリットだ。


 単純に、使える頭が二つになる。手が増える。

 一人では手が回らなかったことができるようになる。

 背後を警戒したり、瞑想中に見張らせたり。


「おお、いろいろできそうだな!」

「ああ、自律分身使えるな! ――自画自賛だけど!」と分身。


「あれ、お前――ちょっと端のほうが塵化してきてないか?」

「おわっ! マジで!? うわ……ほんとだ! ちょ……ああ、意識が薄れて……」


 分身の体が、だんだんと塵化していく。

 自分の身体が崩壊していくのを見るのは、いい気分ではない。

 まあ、普通の分身で何度も見ているのでもう慣れたんだが……。


 意識がある状態で、だんだん消えるというのは、どんな感じだろう。

 想像を絶するような恐怖があるんじゃないか。


「……俺、消えたらお前に統合されるんだよな? な? 今の俺は残るんだよな? ……ちょっと怖――」

「ああ、たぶんそう――って、消えたわ……うおっ!?」


 分身が消える。俺はそれをどうしてやることもできない。


 そして、分身が消えると同時――その意識が俺に流れ込んでくる。


 俺との会話。その時に思ったこと。

 自分が分身だと自覚したときの妙な感覚。

 体を動かした感覚。スキルが発動しなくてがっかりしたこと。

 消滅寸前の恐怖。とまどい。統合することがどういうことなのかの不安。


 それらの経験、記憶が思い出せる。

 と、同時に俺自身が経験したことも同じ時系列として記憶されている。


 二つの記憶が混ざるわけではない。別個に思い出せる状態になる。


 ただ、分身のほうの記憶は少し淡々としている。

 事実や出来事としてそういうことがあった、と思い出せる感じ。

 色のない記憶というか。

 情報は完全に共有されるわけではないのかもしれない。


「――それでも、ちゃんとお前は俺の中に帰ってきたぜ!」


 おかえり、分身()

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― 新着の感想 ―
[一言] 慣れるまでは大変そう……………ww
[一言] エラーって不味くない?
[一言] 見事にNARUTOの影分身の術みたいな術ですな。 分身の術を使いまくって熟練度を挙げて、分身できる数を大幅に増やしてレベル上げをしてそうですね。
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