吸血鬼の作り方!? その生態にせまる!
オカダが説明を始める。
「カミヤさん……カミヤは時々俺たちを集めてパーティーを開いてた。カミヤの血を酒やクスリに混ぜて客に飲ませる。それを何度か繰り返せば吸血鬼の出来上がりだ」
「酒に血を混ぜるって……」
「ん? ほら、あれだよゼンゾウ。お前らも飲んだろ?」
「ウェルカムドリンクか! ハルコさんのおかげで俺たちは飲んでないけどな」
「えへへ! うまくいきましたねぇ!」
オカダが感心する。
「そうなの? すげーなハルちゃん! 気づかなかったわー!」
「お酒は飲んでないけどトマトジュースはふつーにおいしかったっス!」
トウコだけ飲んだよね!
止める間もなく!
オカダは残念そうな顔でトウコを見る。
「ノンアルのドリンクにも混ぜてあるんだぜ、トーコちゃん」
ウェルカムドリンクに混ざっていたのはカミヤの血か……。
「なあオカダ。その血って飲んでも大丈夫なのか?」
「オーケーオーケー。一回くらいで吸血鬼になったりしねーよ」
もちろん、トウコは吸血鬼になったりしていない。
肉体的な変化は起きていないし、ステータス上にも現れていない。
「なら大丈夫か。ちょっと安心だな」
「少しずつ、何回も飲ませなきゃならねーんだ。それに才能がなきゃ、ちゃんとした吸血鬼にはなれないしよ」
「才能? なんだそりゃ?」
「そのまんまだ。ちゃんと自分を保って吸血鬼になれるのは一握りなんだぜー?」
「才能がないとどうなるんだ?」
もう察しはついているが、直接確認しておきたい。
「お前らも見ただろ? 吸血鬼になりそこなった奴らだ。カミヤは低級とかクズって呼んでた」
ショッピングセンターで見たキバコ。
それに今回転送門からたくさん出てきたやつのことだ。
ふーむ。
あいつらは吸血鬼のなりそこないだったか。
「才能ってのがわからないんだが、運が悪いとああなるのか?」
「まあ、俺も知らんけどな! 俺もコガちゃんもラッキーだったぜ! なっ?」
オカダがコガさんの肩をバンバン叩く。
コガさんは少し困った顔でうなずいている。
「う……はい」
俺は言う。
「ちなみにコガさんはどういう経緯で吸血鬼になったんですか?」
「あ、わ……わたしですか?」
コガさんはあわあわしだす。
御庭が言う。
「話しにくいなら僕から補足してもいいけど、どうかな?」
「あ、いえ。わたしは――」
コガさんが自分の口から事情を説明する。
内容はこうだ。
街で声をかけられ、店に行った。
ウェルカムドリンクを飲まされ、クスリを買わされて帰された。
その後も何度か呼び出されて店に通った。
クスリが欲しかったから、断ることなど考えなかった。
美容にいい薬だと言われて、実際に効果があったらしい。
そして、今回のパーティーに参加することになったそうだ。
コガさんが続ける。
「それで――お店の奥の森のようなところに連れていかれて……。そこで人を殺して血を吸えって言われたんです。でもできなくて……!」
ダンジョンの中は森になっていたのか。
俺はオカダに尋ねる。
「これが人間狩りってやつか?」
オカダが苦い顔で言う。
「そうだ。カミヤは吸血鬼に変わると、最初に人間を狩らせる。死ぬまで血を吸わせるんだ。俺もそうした。やらないやつは殺されるからな」
コガさんが顔を覆いながら言う。
「すごく、すごく喉が渇いて……。でも、わたしはできませんでした。そうしたら臆病者はいらないって怒られて……気づいたらお店の中に戻っていました」
本来ならコガさんは殺されるはずだった。
しかし、俺たちが現れたことを柄シャツが知らせた。
カミヤはコガさんを捨て駒として転送門へ送り込んだ――
俺は言う。
「コガさんは俺たちの出方を見るために送り込まれたんだろうな。ある意味ではラッキーだったとも言えるか」
「は、はい。助けていただいて……ありがとうございます!」
そのあとは俺たちの知る通りだ。
結局、今回は人間を救えなかった……。
だけどコガさんだけでも救えてよかった!




