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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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治療と後始末!

 俺はリンの様子を確認する。

 座り込んだままだが命に別状はない。

 まるで眠るように浅い呼吸をしている。


 トウコはがれきに半ば埋もれたままだ。

 がれきをどけ、トウコを掘り起こす。


 よし! 目立った外傷はない!

 衝撃で気を失っただけなのか?


「うへへ……おねーさん」


 ゆるんだ顔で寝言を吐いている。

 ……のんきな奴だな。


 俺はトウコの肩を揺さぶり、ぺちぺちと頬を叩く。


「おい、トウコ! 起きろ!」

「んぇ? なんスか? おねーさんはどこっスか?」


「いつまで夢見てるんだよ。しゃっきりしろ!」

「んー? あ、吸血鬼はどうなったんスか?」


 トウコが跳ね起きる。

 銃を探すが、もう手から離れて消えている。


「もう終わった。あっちの二人はもう敵じゃないから撃つなよ!」

「よくわかんないけどリョーカイっス!」



 俺たちはリンに話しかける。


「リン……大丈夫か?」

「う……」


 リンは苦し気な声で答える。

 意識がはっきりしていないようだ。


「リン姉……腕がひどい状態っス!」


 両腕は焼けただれてしまっている。

 魔法の制御が限界を超えて自らを焼いてしまったのだ。


「思ったよりひどいな……!」


 VIPルームを確認したところ、ダンジョンの転送門は消えていた。

 もう中には入れない。

 今いるダンジョン領域ももうすぐ消えるだろう。



「ポーションを使うぞ!」

「あれ? ここで使っても平気なんスか?」


 ダンジョンの外でポーションを使うのは初めてだ。

 しかし、リンの負傷は思ったよりも深い。

 命に別状はないが、このままでは傷が残ってしまうかもしれない。


 家に帰ってからなんて、悠長なことは言ってられない。


 俺は収納から治癒薬(赤色ポーション)を取り出そうと念じる。


 その途端にぞわりと走る危機感。

 これは世界からの警告だ。


 今いるのは外ではなくダンジョン領域だ。

 でもダンジョンの中とは違う。


 いわば喫水域(きっすいいき)

 通常の世界とダンジョンが交わる中間地点である。


 ポーションには世界の隠蔽力が強く働く。

 なぜならポーションは効果が劇的で、世界にとって排除すべき異物なのだ。



「ヤバい感じはある! だけどここにいるのは普通の人間じゃないし、見られても問題ないはずだ!」

「そーっスよね!」


 俺は収納からポーション手拭いを取り出す。

 見られているようなイヤな感覚がまとわりつく。


 収納から取り出したが、とくに変化はない。

 パージは起きないし、警告メッセージも聞こえてこない。


 ポーションが揮発しはじめる。

 取り出したらすぐに使わねば!


 しかしこれで傷を癒せば世界の禁則事項に触れるかもしれない。


 だが、それでも使うべきだ!

 迷っていても仕方がない!


 一発でアウトにはならないはずだ。

 ストーカーがパージされたときはもっと前置きがあったし、散々べらべらとしゃべっていたからな。


 どの程度まで安全かを知っておく必要もある。

 なにより、リンを早く回復させなくては!


 俺は意を決して手拭いを絞る。

 しぼり出されたポーションがリンの腕を癒やしていく。


「あ……」


 リンの表情が少し和らぐ。


 ダンジョン外でもきちんと効果は表れるようだ。

 念のため俺の体で遮っているので他人の目には触れていない。


「効いたっスね! あたしの包帯も巻いておくっス!」

「頼む」


 ポーションで全回復とはいかなかったようで、小さな火傷は残っている。

 そこにトウコが包帯を巻いていく。

 【応急処置】スキルも多少の治療効果がある。


 傷口が覆われるので、どの程度効いたのかは見えない。

 だがそれがいい。

 傷が治るところを見られないから、パージの危険が減る。


 俺のポーション手拭いも包帯にしたほうがいいかもしれない。

 包帯も【忍具作成】で作れるから【忍具収納】で扱えるはずだ。


「店長にも巻いとくっス!」

「おう、頼む」


 今回はたくさん攻撃を食らった気がする。

 ほとんどのケガは自律分身のときに受けた傷だから、今は残っていない。


 それでもいくらかは被弾している。

 オカダの拳を受けた腕が腫れて熱を持っている。

 折れてはいないようだが、けっこうダメージはあったな。



 ハルコさんが声をかけてくる。


「レンさんは大丈夫そうですかぁ?」

「ああ、とりあえずな。そっちはどうだ?」


 エドガワ君が申し訳なさそうに言う。


「ボクたちは大丈夫です。途中からよくわからなくなって、あんまり動けませんでした……」

「いや、しょうがないだろ。俺も途中で意識を失ってたしな」


 自律分身を出していなかったらヤバかった。

 思い返せば、魅了にかかっている間はかなりひどい状態だった。


 リンを突き飛ばしたりして……。

 マズイだろあれは。

 うーむ。あとで謝ろう!


「しゃーないっス! あたしもほとんど寝てたし!」

「自慢げに言うな! ちょっとは反省しろ!」


 ハルコさんが不思議そうに言う。


「私はぜんぜん平気でしたぁ。でもトウコちゃんには効いちゃってましたねぇ?」


 トウコは魅了で即()ちしてたからな。

 女子なのに魅了にかかるとか……。


「そりゃー、きれいなおねーさんには逆らえないっス!」


 うーむ。

 魅了にかかる条件は、相手を魅力的と思うかどうか。


 たぶんそれだけじゃない。隠されたもう一つの条件。

 それは……性的な目で見れるかどうか。


 そういうつもりがなくても、そう見れるかどうかってところか。


 決してエロい目で見てたわけじゃない!

 健全な反応である!


 しかしこれを口に出すといろいろマズイ。

 女性陣に怒られそうなので黙っておこう!


「まあ、操られて暴れなかっただけでもヨシとしようか!」

「そーっスね!」


 リンが目を覚まし、ぼんやりと俺たちを見る。


「あれ……ゼンジさん?」

「目が覚めたな。よかった!」


「リン姉! よかっはっス!」


 トウコは口をもごもごさせている。


「トウコちゃん……?」

「ん……なに食べてんだ?」


「魔石っス! ふー、元気になったっス!」

「おいっ! 拾い食いしてんじゃねー!」


 何の魔石だ?

 柄シャツのか? まだ消えてなかったのかよ!?


 ということは吸血鬼の魔石だが……大丈夫なのか!?


「だ、大丈夫なの? トウコちゃん!」

「まずくないし平気っス! ちゃんと食べられるやつっス!」


 味の心配なんかしてねーわ!


「なんともないか?」

「べつに何ともないっス!」


「ならいいが……まあ、とにかく疲れた。さっさと帰ろう!」

「りょー」

「はーい!」


 よし!

 家に帰ろう!

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[一言] トウコ両刀疑惑…というか確定だこれw
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