外で待ち構えていたのは……!?
柄シャツの吸血鬼が塵に変わり、魔石が床に転がる。
それを見て、剣士が叫ぶ。
「カミヤさん、撤退だ!」
「わ、わかったわ!」
二人が出口へと駆けだしていく。
オカダが剣士へ殴りかかる。
だが剣士は傷口から血液を吹き出して、オカダの動きを封じる。
カミヤが出口から外へ。
続いて剣士もドアの外へ。
俺、ナギさん、御庭がそれを追う。
店外に出れば、そこは通常の領域。
ざわざわと街の喧騒が聞こえてくる。
そして――通信も復活する。
「今出た二名、どっちだ?」
通信機から聞こえてきたのはスナバさんの声。
御庭が事前に呼んでいたのだ。
そしてどちらかと訊ねているのは、敵か、そうでないか。
撃っていいのか、悪いのかを聞いているのだ!
御庭が言う。
「敵だよスナバ君! 頼む!」
「承知した!」
御庭が壁際に寄る。
「クロウ君! 少し脇に避けよう」
「ああ!」
俺もそれに倣う。
この階段を上がれば地上。夜の街が広がっている。
スナバさんは店の出入り口を狙える位置にいるはずだ!
階段の上から剣士の驚く声が聞こえる。
「な……なんだ!? くっ! うおお!」
ぽたぽたと血が階段に降り注ぐ。
これは剣士の血だろう。
銃声は聞こえない。
だが次々と弾丸が着弾して剣士に銃創を作っていく。
剣士の体がぐらりと揺れる。
そして階段を転げ落ちてくる。
体中に穴が穿たれ、血が流れている。
これはスナバさんの――
いや、スナバさんとシズカちゃんの無音狙撃だ!
階段から転げ落ちた剣士が塵になって消える。
ダンジョン内とは違って、消え去るのはあっという間だ。
魔石すら残らない。
あっけないが……血を操る剣士はこれで倒れた。
カミヤの姿は見えないが、どうなった!?
通信機からスナバさんの声。
「む……? 狙いが……」
「スナバ君、女吸血鬼を見すぎると魅了されてしまうよ!」
カミヤはダンジョン外でも【魅了】を使えるのか……!?
狙撃のために相手を見ただけでも効果が発揮されるらしい。
「標的はすでに人波に紛れた。射撃はできん」
「深追いはしなくていいからね、スナバ君。ハカセ、聞いてるね?」
と御庭。
ハカセが通信機越しに応える。
「言われなくてもすでに追跡しているよー。こんな薄着で街中を走り抜けるなんて、目立ってしょうがないよねー」
ところどころが炎で焼け落ちたドレスだもんな。
痴女である。
しかし見とがめる人はいないだろう。
【魅了】されるか認識阻害されてしまう。
一応ハカセにも警告しておこう。
「その女は人を魅了して操る! 気分がおかしくなったら気をつけろよ、ハカセ!」
「眼福ではあるけど、俺っちに影響はなさそうだねー?」
ならいいけど。
さすがに監視カメラ越しでは魅了されないらしい。
ふむ。
ダンジョン内では使えないけど、外でなら魅了対策になるかもしれん。
「御庭、追うか?」
「いや、今から追いかけても間に合わない。追跡はハカセに任せよう」
俺は店のドアを振り返る。
「なら一度、中に戻るぞ! リンたちが気になる!」
「オカダ君たちの処遇も考えなきゃいけないね!」
ひとまず脅威は去った。
もともと敵の全滅が目標じゃない。
こちらの犠牲もないし、大量の吸血鬼を滅ぼした。
戦果は上々だ!
室内に戻る。
サタケさんが銃をオカダに向けている。
オカダは両手を上げているが、表情は明るい。
「まあまあ、落ち着こうぜオッサン。争う気はないんだ。オーケーだろ?」
「いいから動くな……げほっ」
オカダの後ろで小柄な女性が震えている。
「ひっ……助けてください」
ああ、そうだ。
オカダだけじゃなくて小柄な女性もいたんだった。
彼女もたぶん吸血鬼だ。
二人の処遇を考えなきゃな!




