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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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急募! 魅力に打ち勝つ方法!

 ナギさんの停止能力は相手に直接触れる必要がある。

 霧状に変化させているとはいえ、体に触れたことにはなるはずだ。

 しかし、停止能力は発動しなかった。


 気体――霧には効果がないのだろうか。



 魅了の通じないナギさん。

 停止の通じないカミヤ。


 これは、お互いに有効打がないな。

 膠着状態だ。



 カミヤが御庭を指差しながら言う。


「イライラするわ! この女を殺しなさい! いえ、自分の頭を吹き飛ばすのよ!」


 御庭はうつろな目で銃を装填する。

 そして自分の頭へ銃を向け――


「いけない!」


 ナギさんがその銃を掴む。

 これで銃は作動しない。


「う……」


 御庭が足に突き立ったナイフを引き抜く。


 そのナイフを持つ手が――いや、全身の動きがぴたりと止まる。

 ナギさんが御庭に触れ、動きを止めたのだ。



 ナギさんがカミヤをにらみつける。


「……」

「あらあらぁ? 怒っちゃったのぉ?」


 ナギさんは無言だ。

 しかし怒っているのか、少し息が荒い。


 感情的になるのはめずらしい。

 いや、初めて見た。



 なにも言わないナギさんから視線を外し、カミヤが言う。


「つまらないわね。もういい! 引き上げるわよ!」


 俺はぼやけた頭を振りながら言う。


「ま、待て!」

「なぁに?」


 カミヤが振り返った気配。


 俺は目を閉じたままだ。

 開ければ魅了に抗えない。

 ……いや、声だけでもかなりキツい。


 呼び止めてみたものの、返事があるとは思わなかった。

 案外話が通じるんじゃないか?


 わざわざ敵対しなくても……。


 いや、待て。

 そんな相手じゃあない。

 話してわかる相手であるものか!


 くそ……精神のガードをやすやすと突破してきやがる!


 さんざんかき立てたはずの怒りがいつの間に消えている。

 嫌悪感が薄れていく。


 精神に働きかける能力というのはとんでもないな……!

 意志の力だけで抗えるような生易しい能力じゃあない!



「……教えてくれ。あんたたちはなぜ、こんなことをする?」

「なぜって、楽しいから?」


 即答か。

 まるで迷いなくそう答えるのか……!


「それだけか? そっちの剣士は収穫のために来たと言っていたぞ」

「ふん。口が軽いわね。でももう用事はもう済んだの。残念だったわね!」


「なにを手に入れた? ボスの魔石か?」

「うるさいわね! それより、お前たちこそ何しに来たのよ!」


 カミヤの語気が強まると共に、魅了の圧力も高まっていく。


「うお――」


 頭がくらくらする。


 普通なら会話で時間を稼いで打開策を考えられる。

 だが……ダメだ!

 こいつに会話をしかけるのはマズい!


 俺は目を閉じ、耳をふさぐ。


「耳をふさいでも目を閉じても無駄よ。私の魅力は肌で感じられるのよ!」


 んな無茶な!

 だがスキルや異能に常識など通じない。



 肌で感じるというのはわからないが……ともかく力の根源は魅力である。

 カミヤの魅力を前提として発動する。


 目で見ても、声を聴いてもダメだ。


 ならば目と耳を閉ざせば効果は消えるのか?

 違う。

 いくらか効果は弱まるが消えはしない。


 この能力はもっと深い。

 すでに心の中に入り込んでいるのだ。


 まぶたの裏に美しい姿が浮かぶ。

 残響のように声が耳元で再生される。


 記憶は消せない!

 一度その術にはまればどうにもならないのだ。



 だが何か条件がある。

 その証拠に女性には通じない。

 ナギさんもリンも影響を受けていない。


 だけどトウコには通じた。

 これがカギだ!


 実際にカミヤが魅力的かどうかは関係がない。

 受け手がどう感じるかである!


 魅力的だと感じるかどうか。

 少しでも心を奪われれば術中に落ちる。



 つまり、魅力さえ感じなければ効果は表れない!


 だが――どう感じるかは制御できるものじゃない。


 なにを見て美しいと感じるか。

 好きか嫌いか。

 そんなものは意識して変えられない。


 嫌いな食べ物をどう調理したって食えないし、好きな食べ物を前にすれば自然と唾液が口の中にあふれてくる。


 抗えるものではない。



 怒りや痛みでごまかしても、気をそらせているだけにすぎないのだ。



「目を閉じても耳をふさいでもダメか……たいした能力だ」

「あら、やせ我慢はやめたのかしら?」


 俺はうっすらと目を開け、視線を逸らす。


「あんたを魅力的だと思うだけで、術にはまる。心の中で思うだけでも……」

「そうよ。でも抗う必要なんてないの。身を任せれば楽に死なせてあげる」


 俺の視線の先にはハルコさんとエドガワ君がいる。

 エドガワ君の目と耳は幻でふさがれているが、この方法ではダメだ。

 完全には防げない。悪化はしないにしても、解除できない。


 俺はなおも言葉を続ける。

 会話は少しかみ合わないが、伝わればいいのだ。


「ならカミヤ。お前の魅力がなくなればいい。そうすれば魅了は解ける」

「はぁ? 私の魅力は永遠に続くの。衰えることはないわ!」


 カミヤはなにを言っているかわからないといった顔で言う。

 人を馬鹿にしたような顔だが、やはり美しいと感じてしまう。


「要はお前を見てどう思うかだ。美しくなけりゃいい。そういうことなんだハルコさん!」


 俺が語りかけていたのはカミヤではなく、ハルコさんだ。

 言いたいことは伝わっただろうか。


「あー! そういうことですねぇ!」


 ハルコさんがうなずく。

 伝わったようだ!

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― 新着の感想 ―
[一言] クロウくぅん…彼女持ちが魅了にかかっちゃいけないぜぇ? リンちゃんさんはかかってないのに… それはつまり 愛 が 足 り な い ぜ ! ! という事だな!
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