三次元もぐら叩き!
分身地帯を作り出し、柄シャツの逃げ場を奪う。
息を乱した柄シャツは俺から離れて逃げていく。
「はあはあ……! く……!」
「そっちにいった! 任せるぞ御庭! 休ませるな!」
御庭が柄シャツへ銃を向ける。
「わかったよ、クロウ君! 彼は移動中には呼吸ができないみたいだ!」
「なるほどな!」
呼吸が乱れるのは激しい運動のせいだけじゃない。
おそらく空気すら透過してしまうんだろう。
なら地面や光は透過しないのか?
――と余分な考えが浮かぶが、今は考えている場合じゃあない。
御庭が銃撃し、再び柄シャツが透過移動で回避する。
御庭は短い射撃をくり返し、休息を許さない。
俺の近くは分身地雷地帯があるため、柄シャツは近寄ってこられない。
だんだんと御庭の銃撃精度が上がっていく。
柄シャツが息継ぎ――透過を解くタイミングに合わせて、引き金を引く。
もぐら叩きのように、その瞬間を叩くのだ!
何発かの弾丸が命中し、柄シャツが身をよじる。
「うぐっ……はあっはあっ! ……くそっ!」
「よし、当たったね!」
サタケさんも柄シャツに銃を向け、もぐら叩きに参加し始める。
柄シャツは御庭たちに任せておいて問題ないだろう。
もはや柄シャツは死に体だ。
それより優先すべきは血液の剣を操る男!
片腕を落とされたオカダは劣勢になっている。
助太刀に入らねば!
柄シャツ対策に分身を残しつつ、一部を剣士へと向かわせる。
同時に三体で体当たりをしかける!
分身の動きに、剣士が気付いて振り向く。
「むっ!?」
剣士が赤い剣をひらめかせる。
先頭の分身が消える。
間髪入れずに二体目、三体目の突撃!
一太刀ごとに分身が塵になって霧散する。
俺はその陰から飛び出し、刀を横薙ぎに一閃!
――【フルスイング】!
「うりゃあっ!」
剣士が剣で刀を受ける。
だが刀は止まらない。
剣を押し返し、大きく跳ね上げる!
「――なにっ!?」
スキあり!
俺も大振り攻撃をしたばかりだ。
だがそのスキを消すようにもう一手!
フルスイングを振りきったところで、返す刀を加速!
――【ファストスラッシュ】!
「りゃあっ!」
「くうっ!」
剣士が構え直すより早く、加速した刀が剣士へせまる――
剣士は身をよじって急所をかばう。
刀が肩口を切り裂き、ぱっと、血が舞い散る。
む!?
ぴりぴりとした感覚――
――なにかヤバい!
俺はとっさに足元に反発力を生み出し、跳躍!
無理な動きに体が軋む。
だがかまうか!
俺の足元をなにかが通り過ぎていく。
それは床に当たって硬質な音をたてる。
血が散弾のように跳び出したのだ!
威力はさほどではない。
だが、生身で食らえばダメージは必至!
【危険察知】と【回避】のおかげでなんとか避けられたが――
「あ、あぶなっ……!」
体からほとばしる血液での攻撃か……!
さっきまでこんな芸当は見せていなかっただろ……!?
初見殺しもいいところだ!
オカダと戦っているときには見せなかったのに!
そうか!
攻撃手段が違うからだ!
オカダは打撃。俺は刀による斬撃。
刀で斬れば切り傷ができる。
傷口が開けば血が出るのは当然のこと……!
俺は血の弾丸を回避するために空中に跳び上がっている。
俺の足下で剣士が口の端をゆがめる。
嘲けるような笑みを浮かべる。
「馬鹿め!」
そう言って剣士が剣を振りあげる。
空中では動きが取れない。
つまり避けられないって?
違うんだなあ!
俺は天井に着地。
その場でしゃがみこみ、姿勢を低くする。
頭上を剣が通り過ぎる。
「むっ!?」
「もらったっ!」
天井を蹴り、頭上から斬りかかる。
いや、峰を返して殴りかかる!
脳天へ打撃をくらわせてやる!
だが攻撃は空を切る。
おい……今のをよけるのかよ!?
強い!
俺は床に着地して身構える。
着地はスキを生む。だが追撃は来ない。
先ほどの回避で相手もバランスを崩しているのだ。
背後へ跳んだ剣士が剣を構えて突っ込んでくる。
「死んでもらう!」
「やなこったね!」
自律分身は一回殺されているけど!
二度めはないぜ!




