人口密度ましまし! 地雷分身の術!
「やっと起きたか、ゼンゾウ!」
「ああ……待たせたな!」
オカダはもう血だらけだ。
左腕は切り落とされ、右腕も傷だらけ。
「む?」
剣士は立ち上がった俺をやや不思議そうに見ている。
双子とでも思っただろうか?
「くそ……はぁはぁ!」
先ほど殴り飛ばされた柄シャツがよろけながら立ち上がる。
乱れた呼吸を整えようとしている。
まずは周囲の状況を把握した。
自律分身がやられてからそれほど時間は経っていない!
せいぜい数秒から十数秒といったところだろう。
他はどうなっている?
俺は素早く周囲に目を走らせる。
リンは目を閉じて床に座り込んでいる。
腕の火傷が痛々しい。
意識はなさそうだが息はある。
トウコはまだ立ち上がっていない。
ここからは見えないが、まだがれきの下だろうか。
視界にカミヤの姿が映る。
服が焦げて、これまで以上に露出が高くなっている。
軽いめまいを覚える。
だが深く魅入られはしない。
さっきまでとは違う!
これなら戦える!
俺は自律分身がつないだ闘志を燃やし、スキルを放つ!
「分身の術!」
一体だけではない。
次々に分身を配置していく。
ある程度のスペースを開けて、周囲を埋め尽くすように!
そのすべてが判断分身だ。
与える条件は単純!
――その場で最も近い敵へ攻撃をしかける!
基本的に移動はしない。
近づいたら攻撃するだけ。
つまりはセンサーだ。
近づけば爆発する地雷のようなもの。
柄シャツの高速透過移動への対策だ!
「な、なんだこりゃぁ……?」
「もう逃げ場はないってことだよ!」
俺は動揺する柄シャツへ向けて斬り込む!
さっきまでの俺とは違い【歩法】や【反発の術】で加速している。
武器はいつもの忍者刀!
自分の体のようによく馴染む!
「――ファストスラッシュ!」
「うおおっ!」
柄シャツが残像の尾を引いて姿を消す。
目では追えない。
また背後のどこかだろう。
だが、背後には分身を配置済!
悪態が聞こえる。
「くそがっ! じゃまくせェ……!」
振り向くと、分身がナイフで破壊されている。
柄シャツは肩で息をしながら、近くの分身を警戒している。
俺は言う。
「分身! 包囲しろ!」
わざわざ声に出して命じるのは、心理的な圧迫を与えるための駆け引きだ。
俺は周囲の分身を手動で操作して包囲を狭める。
攻撃範囲に入った分身が柄シャツへと攻撃を加える。
「ちいっ!」
柄シャツは焦った様子で逃げていく。
そんなに焦らなくたっていいんだけどな!
武器を持たない分身の攻撃など、たいした威力ではない。
柄シャツにそれはわからないだろう。
となれば攻撃して数を減らすか、移動スキルを使うしかない。
どちらにせよ、相手の体力を奪えるってわけだ!
俺は次々と分身を出して周辺を埋めていく。
相手の体力と俺の魔力の比べ合いだ!
だが柄シャツは戦う前から息を切らせている。
コツコツと積み上げた自律分身の戦いは無駄じゃあない!
再び、柄シャツが透過移動。
もう近場に安全圏はない!
柄シャツが離れた場所へと移動する。
俺は分身を操作して包囲を狭める。
移動、包囲。その繰り返し。
分身が倒されたら追加で出して補充する。
もちろん、単調に繰り返せばいずれ対処されてしまう。
そこで【入れ替えの術】で奇襲する!
奴の背後にいる分身と位置を入れ替え――
「――ファストスラッシュ!」
「うおっ!」
浅いながらも刀が柄シャツの体を捉える。
だが倒すには至らない。
柄シャツは逃げ場を求めて移動していく。
「はあはあ……! く……!」
もはや目に見えて呼吸が乱れている。
休ませるか!




