バックアップからのリカバリー!?
「めんどくせェ奴は後回しだ! 殺れるやつからヤる!」
柄シャツが猛スピードで移動して無防備な本体を狙う。
そしてナイフを振り下ろそうとしている。
マズい!
今の体勢から槍を投げることはできない……!
【入れ替えの術】を――
とっさに俺は術を練ろうとし――失敗する。
ダメだ! スキルが使えない!
くそっ! 俺には止める手立てがない……!
そのときオカダが動く。
「しゃあッ!」
「うげっ!?」
オカダの放ったストレートを受けて柄シャツが吹き飛ぶ!
しかし、この行動はオカダにスキを生んだ!
剣士が剣を振り、言う。
「馬鹿め!」
「おおっ!」
オカダの腕が斬り飛ばされる。
腕は血をまき散らしながら宙を舞う。
剣士のさらなる追撃。
これをオカダはスウェーバックしてかわす。
さらに剣士が斬り込んでいく。
「まだまだっ!」
「くっ!」
オカダは脚を切り裂かれ、バランスを崩す。
そのままオカダは背後へ転がって逃れる。
そこへ俺は槍を構えて突っ込む。
「うりゃあっ!」
「むっ!」
突き出した槍が剣に払われる。
その勢いに抗わず、俺は槍を回転させ、石突きを跳ね上げて反撃する。
「はっ!」
剣士が石突きを斬り払う。
今度は弾かれず、すぱりと槍の先が斬り飛ばされる。
うっ!?
なんて切れ味――そして技術!
今の一合で、俺の体勢は崩されてしまった。
さらに連続で斬撃が迫る。
もはや回避は不可能!
瞬間の判断――受けるしかない!
俺は短くなった槍を剣に合わせる――
まっすぐに当ててはダメだ。
また斬られてしまう!
受ける瞬間、剣筋に対して角度をつければ――
――意識が加速し、時間が引き延ばされる。
迫る剣を槍の柄で受ける――
理想的な角度!
タイミングもいい!
だが剣は止まらない――!
鋭い痛み。
――俺の胸から血が噴き出す。
「な――なにっ!?」
俺はなかば呆然と手元を確認する。
槍は斬られていない。
弾かれる感覚もなかった。
だというのに胸を斬られている……。
なにが起きた……!?
俺の目の前に血しぶきがふわふわと浮かんでいる。
赤い血の一粒一粒が揺れている。
その向こうで、剣士が再び剣を振り上げている。
ゆっくりと流れる時間の中、俺は目の前に迫る赤い刃を眺めている。
刃が目前に迫る。
あ、死ぬな――
そう思いながら俺は――自律分身は死を迎えた。
――自律分身の意識が、本体にフィードバックされる。
――そして今、記憶の読み取りが終わった。
自律分身の経験、感情、そして痛み!
いつまでも慣れることのない死の感覚!
その強烈な感覚に、俺は急速に意識を覚醒させる。
「うっ……!?」
意識の読み取りに長い時間はかからない。
だが今回はいつもより長い。
意識が整理されていないせいか、濃厚な記憶だった。
体に痛みはない。手足は動く!
俺はまだ生きている!
状況はどうなっている?
意識を外へ向け、目を見開く。
落ちている刀を手で探り当て、立ち上がる。
血だらけのオカダが言う。
「やっと起きたか、ゼンゾウ!」
「ああ……待たせたな!」
俺は刀を構えながら、素早く周囲の状況を確認する。
自律分身がやられてからそう時間は経っていない!
魅了を脱した頭は冴えている。
気力も充分!
さあ、反撃開始だ!
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