自律分身 VS 透過高速移動の吸血鬼!
オカダと剣士は素早い攻防を続けている。
俺は槍を柄シャツに向ける。
穂先を向けていれば相手はやすやすとは飛び込めない。
相手の攻めに対応できるように意識を巡らせる。
力まず、呼吸を整える。
体を相手に向け、神経を研ぎ澄ます。
先に動くとスキが生まれる。
ちょっとした固着状態――
透過能力は強力だ。
こちらの攻撃を当てられるタイミングは限られる。
柄シャツは攻撃に移るときに透過を解く!
そうでないと攻撃がすり抜けてしまうのだろう。
俺はその瞬間を狙う!
柄シャツがじれたように言う。
「てめェ! やりにくいぜ!」
槍の間合いに踏み込むのは難しい。
突きつけられた槍を嫌ったのか、横へ回り込もうとする。
俺はその場で向きを変えるだけでいい。
普通なら回り込むことはできないはずだ。
だが柄シャツは普通ではない!
驚異的な速度で距離を詰めてくる。
槍を物理的にすり抜けて、俺のすぐそばへ!
お互いの息がかかるような至近距離!
その瞬間、柄シャツが足を止める。
高速透過移動を解いて攻撃に移る。
ナイフが俺の首筋に触れるひやりとした感覚!
「もらっ――」
今だ!
今こそ、待っていた攻撃のタイミング!
「――おおっ!」
俺は気合を込め、素早く槍を引く。
前後の動きではなく、自分の体に槍を引きつけるように!
槍の穂先が跳ね上がり、十字に尖った先端が柄シャツを狙う!
「あ、あぶねえっ! はあはあ……!」
当たらない!
すんでのところで透過された!
俺は槍を構え直し、言う。
「どうした? 息が乱れて来たんじゃないか?」
「うる……せえ! 次はかっさばいてやる!」
首筋にピリッとした感覚がある。
浅いが斬られている。
俺にも余裕などない。
一歩間違えば致命傷だった!
柄シャツが息を大きく吸い、高速移動に入る。
目で追えないほどの速度で、柄シャツが正面から消える。
――ということは側面か背後にいる!
俺は槍を回す。
おおげさな、曲芸じみた動きではない。
小さく流れるように。それでいて素早く。
脇をしめ、ボートをこぐような動きで側面を守る。
攻撃の気配を感じて、槍を引き寄せる。
槍が柄シャツの体をかすめる。
「うおっ……くそ!」
「次は当たるんじゃないか? ほら、来いよ!」
有効打ではないが、当たるようになってきた。
相手のナイフも俺を撫でている。
血がたらりと滴る。
だが拭うヒマなどない。
柄シャツも警戒している。
最初の一撃のような油断はもうない。
しかし、柄シャツの息は荒くなっている。
高速移動には負担があるのか?
それとも透過能力のせいか?
連続使用は無理なのだろう。
常に透過状態を維持するような使い方はしてこない。
ほとんどの場合、透過は移動しながら使っている。
だが移動の速度を乗せた攻撃はしてこない。
使うと息が乱れる。
能力を使う前に大きく息を吸う。
なぜだ?
運動量が多くなるからか?
何か理由があるだろう。
だが今、それはどうでもいい。
無敵の能力ではない。弱点がある。
無制限には使えない。疲労していくのだ!
だんだん分かってきた。
掴めてきたぞ!
このあたりを手掛かりに攻略できそうだ!
「めんどくせェ!」
柄シャツが大きく息を吸う。
そしてまっすぐに突っこんでくる!
俺の体を正面から突き抜け――背後へ!
背後に槍を突き、さらに振り返りながら横薙ぎ。
どちらも手ごたえがない!
柄シャツは俺に背を向け、さらに先で足を止めた。
俺の攻撃範囲外に移動した!
「めんどくせェ奴は後回しだ! 殺れるやつからヤる!」
マズい!
狙いは――まだ目覚めていないリンと本体だ!
人気投票の集計しました! 結果は以下でした!
(同率一位)【忍具作成】、リン、自律分身
詳しくは活動報告にて!




