乱戦! 戦闘再開!
「ああもうイライラするわ! お前たち、こいつらを殺すのよ!」
カミヤが叫ぶと、全員が一斉に動く。
吸血鬼が叫ぶ。
「お望みとあれば!」
「ぶっ殺してやらぁ!」
「させるかよ!」
俺は叫び返しながら、状況を確認する。
オカダが敵でないなら、相手は三人だけだ。
人数はこちらが多い。
だが動けないメンバーがほとんどだ。
リンと本体は座り込んで動かない。
気絶しているか、意識が朦朧としている。
自分の身を守ることもできない状態だ。
御庭は深めに魅了を受けたのか、抗うのが精一杯らしい。
ナギさんは御庭をかばうように身構えている。自由には戦えない。
ハルコさんがエドガワ君の耳元でなにかささやいている。
耳は幻でふさいだままだが、耳元に密着するほど口を寄せれば音は通るだろう。
エドガワ君への魅了は薄れつつあるように見える。
だが、状況は理解できていないだろう。
サタケさんは頭を振りながらこぶしを握り締めている。
なんとか動けるといったところか。
トウコも動かない。
「くたばれっ!」
柄シャツが高速移動してサタケさんへとナイフを突き出す。
サタケさんは銃でかろうじて受けるが、銃が手の中から飛んでいく。
「さっきから目障りなのよ、お前!」
カミヤがナギさんと御庭のほうへ腕を伸ばし、何かを呟く。
「目障りなのはあなたです」
ナギさんが前に出て、放たれた魔法攻撃を防ぐ。
「……」
無表情の男が剣を振り上げる。
狙いは無防備なリンと本体だ!
「させるかっ!」
俺は渾身の力で槍を投擲する。
男が剣で槍を斬り払う。
「寝てるヤツを狙うのはだせェぞ!」
そう言いながらオカダが無表情の男へ殴りかかる。
だがかわされる。
切断された足ではどうしても踏み込みが浅くなる。
というか、よくあんな足で踏み込むよな……!
無表情の男がオカダに剣を向けて構える。
「裏切者に言われる覚えはない」
男が剣を振り、オカダが腕で受ける。
「――ッと!」
腕が切り裂かれ、血が噴き出す。
吹き出した血が二人に死角を作る。
「――しゃあッ!」
深手を負った腕にかまわず、オカダは逆の手でカウンターを放つ。
顔面へと右ストレートが突き刺さる。
「ぐっ!」
「どうだ! 俺の取り柄はよ!」
そう言いながら、腕の傷はもうふさがりつつある。
「くだらない! それなら再生できなくなるまで刻むだけのこと!」
そう言うと男は背後に跳び、距離を取って構える。
手にした赤い剣の刀身が伸びていく。
「ちっ! ビビりが!」
オカダは追うように踏み込んでいく。
だが、一歩届かない。
素手と剣ではリーチが違う。
ましてや片足では追いつけない。
俺も傍観しているばかりではない。
槍はもう手元にない。
クナイや手裏剣もないが、投げるものはある!
「オカダ――これを使え!」
「――おっ! 助かるぜ、ゼンゾウ!」
投げたのはオカダの足首から先である。
オカダが足先にあてがうと、肉が盛り上がっていく。
「ちいっ!」
舌打ちをして、男が剣を振る。
だがオカダは体をよじって身をかわす。
赤い剣が肉を切り裂く。
だが浅い傷はすぐに癒えてふさがる。
俺は槍を拾い上げ、赤い剣の男へ向ける。
だが、この男の能力はまだ把握できていない。
やみくもに突っ込んでも勝てないだろう。
俺は槍を向けながら男を観察する。
感情の読み取れない整った顔に、細身の体。
爪や牙が伸びたり、体が大きくなったりはしていない。
ほとんど人間の姿だ。
これまでのところ、魔法やスキルは見せていない。
いや……手にした剣の長さが変わるのが能力か?
スキルにしろ異能にしろ地味だが……それだけに不気味でもある。
御庭の声。
「――クロウ君! そいつの武器は血液だ! もう一人は物質をすり抜ける能力の可能性が高い!」
「血液が武器か……!」
血のように赤い剣。
血液で刀身を作っているのか!
長さが変わったのは、血液を足したからか!
タネがわかれば簡単なことだが……長さが変わる武器は対処が難しい。
そしてもう一人の能力もわかった。
柄シャツの能力は、すり抜ける能力!
だが、あの速さは?
とすると物質透過と高速移動のセットか!




