未知なるエラーが発生しました!?
扉の先には――
――宝箱だ。
扉の前、部屋の中央にでん、と置かれている。
どうやっても見逃すことのありえない配置。
まるで重要イベントでもしこまれているような――
「おおっ!? 宝箱か――なんかあやしいな」
どうぞ開けてくださいと言わんばかりに置かれているのが、逆に怪しい。
油断させておいて罠で爆死とか、いやらしいパターンか?
ボスを倒して気を抜いているところに罠はセオリーだからな。
いや、普通にご褒美なのか……!?
わからん!
どちらにしろ、開けない選択肢なんてないわけだが!
こういう時こそ疑いの目を持ってのぞまねばなるまい!
……そっと、手裏剣を当てる。異常なし。
バットの先でつつく。異常なし。
ふうむ、普通の宝箱なのか……?
「よし、爆弾処理班、前へ!」
生み出した分身が進み出て、配置につく。
俺は扉まで後退し、安全な距離を取る。
分身が宝箱を開ければ、罠があっても問題ないね!
我ながら完璧な作戦じゃないか。
分身、便利すぎるぜ!
最初っから宝箱はこうやればよかったな!
もちろん分身は、どんなに危険な作業を命じても、文句など言わない。
「さあ、宝箱を開け!」
分身は指示通りに宝箱のフタに手をかけ、開けた。
――すると、宝箱から強烈な光があふれ出る。
「うおっ!」
まぶしくて、目を開けていられないほどの光だ。
光が分身の体を包み込む。
ば、爆発か!? 閃光の罠か!?
光が収まる。
分身は――無事だ。
俺も目が眩んだが、異常はない――
――そして、天の声が響き渡った。
<おめでとうございます! ダンジョンボスの初討伐を確認しました! クリア報酬が与えられます!>
<討伐者には……>
<……未知なるエラー! 討伐者が不明です!>
<再試行……未知なるエラー!>
<再試行……未知なるエラー!>
「な、なんなんだ? 天の声がバグった!?」
……なんかすごくマズイ気がするぞ!?
<再試行……未知なるエラー!>
<試行回数が一定値を超えました!>
「ちょ!? 大丈夫かコレ!?」
クリア報酬? ボスの討伐者が不明だって?
それを貰うべき俺でなく、分身に宝箱を開けさせたせい?
分身は生き物じゃない。スキルで生み出された意思のない存在だ。
人間でもモンスターでもない。ややこしい存在。
でも戦闘にも参加していたと言えるし……箱を開けているし……。
いよいよ微妙な状態だ。
そのせいで……イベントが狂ったのか?
本人が宝箱開けなきゃいけないなんてルール、聞いてませんけど。
もしかして、やっちゃいましたかね!?
致命的なヤツを……!?
<再検討中……。再検討中……>
いやいや、なんだよそれ。
ゲームじゃあるまいしね?
ちょっとくらい想定外の出来事が起こってもね?
ちゃんと報酬くれますよねえ!?
報酬なしになるとかはマジで勘弁してほしいぞ……。
<再検討中……。回避策の妥当性を確認中……成功!>
<討伐者を【分身の術】のスキル使用者と認定>
「……おお? なんとかまとまった、のか?」
俺の体が強い光に包まれる。
そして、分身の体も。
<おめでとうございます! ダンジョンボスの初討伐を確認しました! クリア報酬が与えられます!>
<討伐者には、クリア報酬として【自律分身の術】【意識共有】が与えられます!>
光が収まる。
天の声はそれきり、黙ってしまう。
どうやらスキルを付与してくれたようだが……。
なんだったんだ、今のは――
「しかし、ビックリしたわ」
「いやいや、マジでな」
「え?」
「は?」
分身と、顔を見合わせる。
その顔には驚きの表情が浮かんでいる。
「えーーーーっ!?」
「えーーーーっ!?」
分身がしゃべったんですけどー!?
そろそろ一章を終わろう……。まとめよう……。
と思っていたのに、当初予定していたルートにならない!




