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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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臆病者と裏切者は追放だ!?

「でも私のために死ぬなんて、あたりまえでしょ?」

「当たり前なはずないだろ!」


 (自律)の言葉に、カミヤが不思議そうに言う。


「あたりまえなのよ。たとえばそうね。お前、私のために死んでくれる?」

「はい。お望みとあれば」


 カミヤの近くで誰かが答える。

 誰だコイツ?


 無表情に、当たり前のように答えている見知らぬ男。


 ああ、他にも吸血鬼はいたんだっけ。


 カミヤのいる戸口のほうを視界に入れないようにしていた。

 だから確認できていなかったが、その近くにいた奴だ。



 ――吸血鬼は残り六体。


 ――黒スーツ、扉を破った男は死んだ。

 ――柄シャツ、無表情のこの男……。

 ――そしてカミヤ。


 ――これで五体。

 ――あと一体いるのか……?


 ――知性の低い吸血鬼はたくさんいたが……。

 ――今、見える範囲にほかの吸血鬼は見当たらない。

 ――あるいはさっきの火魔法で焼き尽くされたか?



 さらにカミヤが柄シャツに問う。


「あんたはできる? 誇らしいでしょ?」


 柄シャツは熱に浮かれたように答える。


「はい……いつでも」


 カミヤが満足げに笑う。


「ほらね? 私を愛しているならなんだってできるはずよ! それで幸せなんだわ!」

「異常だぞ……! 心を操って、それを強要するのか? そんなのは間違っている!」


 誇らしい、だと?

 名誉のため、大事なもののために戦うというのはわかる。


 愛するもの、信じるもの……大切な誰か。

 そのために戦う。そのために命を賭ける。


 それは当たり前のことだ。

 だがそれは――自ら望んでいれば、という前提でのことだ。


 【魅了】で心を操り、従わせる。

 そうして命を投げ出させることに名誉があるだろうか。

 ない!

 あってはならないことだ!



 カミヤが言う。


「それができないならいらないわ! そうね。そこでこそこそ隠れている臆病者!」


 カミヤが部屋の隅を指差す。

 縮こまっていた保護した女性が、びくりと肩を震わせる。


「ひっ!」

「それからお前も――」


 続いて、カミヤがこちらを指差している。

 (自律)ではなく……背後を指差している?


 俺たちの背後には誰も……いや、いる!


 ぞっとしながら振り返る。

 そこに立っていたのは案内役のオカダだ。


 手錠で後ろ手に拘束していたはずが、外れている。

 手のあたりをさすりながら、片足で立ち上がっている。


 目を覚ましていたのか!?


 サタケさんがしっかり拘束して鎮静剤まで打ったのだ。

 すぐには目を覚まさないはず……!


 混戦の中、警戒する余裕はなかったが――

 まさか起き上がってくるとは!


 ずっと機会をうかがっていたのか!?


 くそ……。

 これ以上は対応できないぞ……!?



 カミヤが吐き捨てるように言う。


「オカダ! あんたなんかもういらないわ!」

「はぁ? 俺、なんかしたー?」


 オカダがあっけにとられた顔で自分の顔を指差している。


「よくも私を裏切れたものだわ!」

「いや、俺は裏切ってなんて――」


 ……あれ?

 会話の流れが想像と違う。


 ――記憶を読み取りながら(本体)は考える。

 ――オカダは裏切っていない。

 ――俺が幻のオカダになりすましただけだ。


 ――嗅覚の鋭い黒スーツはそれを見破った。

 ――だが、柄シャツは裏切ったと勘違いしたまま転送門へ逃げ込んだ。


「そもそもエサを連れてくるだけなのにいつまで待たせるのよ? パーティーに間に合わなかったじゃない!」

「いや、俺はちゃんと客を集めたし――」


 オカダは困惑した顔で両手を広げて説明する。

 だが、またも言葉は遮られる。


 柄シャツが言う。


「集めたエサも一人でつまみ食いするつもりだったんだろ!」

「しねーし! お前らが集められないから俺が――!」


 ――たしかにオカダはしっかりと客を集めた。

 ――それが俺たち公儀隠密だっただけだ。


 ここは俺たちを襲えと命令するところじゃあないのか!?

 なぜか、オカダが責めらる展開!?



 (自律)の困惑をよそに、妙な流れの会話が続く。


 ――どこかで聞いたような会話の流れだ。

 ――そうだ! 知ってるぞコレ!

 ――お前なんて追放だ! という流れじゃねーか!?



 無表情の男が手にした赤い剣をオカダにつきつけて言う。


「俺たちが収穫している間、お前は客と遊んでいただけだ」


 オカダが言う。


「いやいや……俺も戦いたいって言っただろ? 客引きなんかより、そっちのほうが楽し――」


 無表情男はにべもない。


「再生能力しか取り柄のないお前なんぞ、戦いのジャマだ」


 柄シャツも追従する。


「役立たずが! てめぇは前から気に食わなかったんだ!」


 カミヤが追放よ! と言わんばかりにオカダを指差した。


「ともかくお前なんていらない! 顔も見たくないわ!」


 あれ?

 突然にオカダの追放劇が始まったんだが……。

 いったい、俺はなにを見せられているんだ!?

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[一言] 役立たずと言われ捨てられた吸血鬼の成り上がり はじまりません
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