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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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デバフ解除は自律分身で! 魅了を打ち破れ!

 自律分身の記憶が流れ込んでくる。

 この記憶はいつもと違って整理されていない。


 痛みすらもそのまま伝わってくる。

 だがそれがいい!


 腑抜(ふぬ)けた頭に刺激となって()み渡る。



 俺自身(本体)の体験と、自律分身()の記憶を少しまとめてみる。


 美女カミヤの能力は【魅了】だろう。


 女には効かないのかとも思ったが……そうではない。

 トウコにも効いているからだ。


 かかりやすさに個人差があるのか?

 条件はなんだ?



 【魅了】らしき能力は見るだけで効果が表れるらしい。

 相手がこちらを見るとか、目が合う必要すらない。

 視界に入れるだけでアウト。とんでもない能力だ!


 さらに、姿を見なくても効果が表れる。

 自律分身()、サタケさん、エドガワ君の場合はカミヤの姿を直接見ていないのに影響を受けている。


 目で見た場合より効果は弱いらしい。

 とはいえ音を防ぐことは難しい……。



 【魅了】は痛みを感じることで抵抗できる。

 御庭は自傷することで意識を保った。自律分身()もそうだ。


 気をそらすこと。そして抵抗する意思。

 攻撃を受けているという認識を持って、対処しようとすること……。


 それしかできない。

 なら、全力でそれをやる!



 記憶の読み取りを続けよう――



「あらぁ? そこに誰かいるわね。お前、見てきて!」

「はい……」


 美女の声。それに答えるのは男の声。

 これも吸血鬼だろうが、俺は戸口に視線を送らないようにする。



「おお……」


 本体()が女の声を聴いて、心地よさそうな声を出す。


 それを聞き、恥ずかしさに似た感情を覚える。

 だが、それよりも戦慄(せんりつ)が勝る。


 完全に術中に落ちているじゃないか本体()……!



 ――記憶を読み取っている現在の(本体)は考える。


 ――直接的な攻撃を食らったわけじゃない。

 ――ケガをしているわけではないが、事態はそれ以上に深刻だ。

 ――この時点で、俺たちは全滅しかけている!



「ゼンジさん!」

「……ん」


 バリケードを乗り越えかけていた本体()をリンが引き留める。

 その拘束を本体()が乱暴に振りほどく。


「きゃっ!」


 リンは尻もちをついて、呆然(ぼうぜん)と俺を見上げている。


 ――なんてことを! 俺は……!

 ――俺の感じた後悔より、もっと強い感情が自律分身の記憶にわき上がる。


 なにをしているんだ俺!

 ふざけるなよ!


 ――怒りだ。

 ――自分自身(本体)への怒り。そして術をかけた敵へとそれを向ける。



 トウコがバリケードを越えて、よろよろと歩いている。


「うへへぇ……おねーさん……いま行くっス!」


 戸口をちらりと見る。

 女の姿は見えない。

 入口に大柄な男が立っている。


「このへんにドアがあったはずなんだが……あああっ! 指が……俺の指がぁぁ!」

「うるさいわね。早くなんとかしなさいよ!」


 カミヤに指示された男が戸口を探っている。



 そうしている間にも、サタケさんとエドガワ君がふらふらと前に出ようとする。

 声に【魅了】されて呼び寄せられているのだ。


「トオル君、止まって……止まってぇ!」

「……」


 エドガワ君は小声でなにか言っているが聞き取れない。

 ハルコさんがエドガワ君の前に回って進路をふさぐ。


 抱き着くようにして動きを止めているが、ぐいぐいと押されている。

 エドガワ君を殴りつけて正気を取り戻させることはできない。


 異能で防がれてしまう。

 便利な能力だが、味方も手を触れられないのは困る……!


 止める方法は――ある!



 俺は言う。


「ハルコさん! 幻でエドガワ君の目と耳をふさげ!」

「わ、わかりましたぁ!」


 ハルコさんが幻をエドガワ君にかぶせる。

 目隠しとヘッドホンが現れた。


 これでいい。

 すぐに魅了を脱するわけじゃないが、悪化はしないはず!



「サタケさん!」


 俺はサタケさんを止めようと手を伸ばす。

 だが振りほどかれ、そのまま投げ飛ばされかける。


 ギリギリのところで、手を引いて逃れる。


 あぶねえ!

 サタケさんも【魅了】状態だ。


 さっきリンを突き飛ばした俺と同じ状態……。

 他のすべての優先度が下がって、女のことしか考えられなくなる。


 仲間割れするように仕向けられているわけでもない。

 自動的に、自分の意志で目的を優先しようとしているのだ。


 くそ、厄介だな!



 距離を取り、サタケさんの脚に十字架槍をひっかける。

 体勢を崩して転びかけたサタケさんが床に手をつく。


「げほっ……な、なんだ!?」


 そう言うと、サタケさんは頭を振りながら立ち上がる。


「サタケさん! 敵の姿と声に気を付けてくれ! 精神を操られる!」

「……あ、ああ。わかった!」


 サタケさんが銃を構え直す。

 まだ完全ではなさそうだが、意識を取り戻してくれたようだ。



 なんとかサタケさんたちを止めたが……。

 まだ敵は部屋に入ってきてすらいない。


 本体も術中に落ちている。

 自力で復帰してくれる望みは薄い。

 かといって俺が近寄って正気に戻すのは危険だ。

 ミイラとりがミイラになってしまう。


 ナギさんは異能を維持するためか、御庭を守るためか動いていない。


 御庭は痛みのためか、顔を上げずにうつむいている。

 顔を上げると術にかかるからあえてそうしているのかもしれない。


 女の声は今も俺の脳を揺さぶっている。

 だが(まど)わない。


 武器を向けられているわけではないが、それよりも危険な状況にあると自覚している。


 痛みに、怒りに意識を集中する。

 危機感が、義務感が俺の意識を研ぎ澄ます。


 自律分身である俺はスキルの力を持たない。

 手にはありあわせの武器しかない。


 だが意志はある!

 抵抗する意思、抗う心こそが俺の武器となる!

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[一言] 負けるなクロウ!彼女持ちのリア充のくせに!w
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