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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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精神に働きかける能力は自覚できない!?

 美女に急き立てられた男が、おそるおそる手を動かす。


「は、はいカミヤさん。すぐに!」


 言われるがままに、戸口を探っていく。


「――ウワぁ!? い、痛てえ!」


 また指が飛び、激しく血が飛び散る。


「あらぁ? そこになにかあるみたいよ」

「いてぇー! 痛えよカミヤさん! な、なにがあるんですか!?」


 ああ……この人はカミヤさんというのか。

 いい名前だ。


 美女が深くため息を吐く。


「自分で考えられないの? ドアはダメなのよ。通れないなら、ほかにやりようがあるでしょう?」


 カミヤが汚いものを見るように、壁を指差す。


「ああ……壁。そうですね」


 大柄な男は間抜けな表情で壁に触れている。

 戸口のへり、ドアの外枠にあたる壁だ。


「ブチ破れば通れるんですね! ウォォ!」


 男の体が変異し、大きく膨れあがっていく。

 もうドアを通れないほどの巨体になっている。


 そのせいで室内の様子が見えなくなってしまった。



 トウコが戸口へ銃を向ける。


「そこをどけっス! うらあっ!」


 銃声。トウコの手中でソードオフショットガンが跳ねる。

 ドアをふさぐように立っていた巨体に弾丸が突き刺さる。


「ッ――!」


 男の腹には弾丸が開けた穴がいくつも開いている。

 血が流れているが、貫通してはいない。


「あらあらぁ? 誰かいるみたいよ? ほら、はやくなんとかしてよ」

「ああ、すぐになんとかするよ。カミヤさん――」


 男が構えを取る。

 腰を落とし、拳を固める。


「パワー……スマッシュ!」


 突き出された拳がドア枠……壁にぶち当たる。

 激しい衝突音。

 みしみしと建物のゆがむ音。


 スキルの力を得た拳が壁を打ち砕き、吹き飛んだ破片が室内に降り注ぐ!

 そして――その前にはトウコが立っている。


「うあっ――!」


 破片に巻き込まれ、トウコが倒れる。

 粉々に砕けた壁材がもうもうと埃が舞わせている。


 トウコの姿が見えなくなる――


「あらあら。ばかねえ。死んじゃった?」


 死んだ?

 誰が……?


 がれきの下からトウコの足が見える。

 そして大量の血がじわりと床に広がっていく――


 え?

 どうにも頭が回らない。状況が頭に入ってこない。


「トウコちゃん! な、なんてことを――」


 リンが頭を抱える。

 そして両手を突き出して、叫ぶ。


「――ああっ! もうやめてぇー!」


 手の先で炎が膨れ上がる。

 デカい。まるで制限のない巨大な炎。


 火球が放たれる。


 顔が熱い。

 炎の余波で室温がぐんぐんと上がっていく。


 ほとばしった炎は戸口全体……いや、巨漢が打ち壊した壁の穴すら覆うほど!

 荒れ狂う炎がVIPルームの中を丸ごと焼き払っていく。


「ギャアァー!」

「あァァァ!」


 何人かの絶叫。ガラスか何かが割れる音。

 どさどさとなにかが落ちる。


 もう、目を開けていられない。

 呼吸すらおぼつかない。


 空気が……喉が焼けるように熱い……!



 頬になにか熱いものが触れる。


 誰かの手か?

 がさがさと荒れた感触……なんだ?


「ゼンジさん。そのまま目を閉じていてください。耳も……」


 頭にそっと腕が回され、引き寄せられる。

 はっきりしない思考の中、俺はされるがままだ。


 顔にやわらかい感触を感じる。

 火照った肌にひんやりと心地いい。


 今も周囲ではなにかが起きている。

 だが何も見えないし聞こえない。


 このまま目を閉じていたい。


 焦げ臭いにおいに混じって、なにかが俺の鼻孔をくすぐる。

 リンの匂いだ。



 思考がまとまらない。

 それでもだんだんと痺れた頭がほぐれていく。


 そのとき――俺の頭に衝撃が突き抜ける。


 痛み。驚き。様々な感情が入り混じったそれは――


 ――それは死の感覚。


 俺は体をびくりと震わせる。

 走馬灯のように記憶が流れる。


 俺は死んだ。

 違う……死んだのは自律分身だ!

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[一言] おれは しょうきに もどった!
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