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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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赤いドレスの女!?

 転送門から何者かが現れる。

 俺は目を凝らして油断なく観察する。



 現れたのは美しい女だ。

 自信にあふれた笑みを浮かべ、室内をゆっくりと見まわす。


 赤いタイトドレスに身を包んだ豊満な体。

 深いスリットから大胆にのぞいている太ももがなまめかしい。

 ロウソクのわずかな明かりのなか、肌があやしく輝く。


 美女はゆったりと周囲に視線を送る。

 そして赤々と濡れた、形のいい唇が動く。


「あらぁ? 出来損(できそこ)ないどもはどこに行ったのかしら?」


 その声はぞっとするほどに美しい。


 歩くたびに豊かな長い黒髪が揺れる。

 その一本一本が最高級のシルクのようだ。


 瞳は赤く輝き、どこでも深い。


「血の匂いがするわね。まさか残らずやられたというの? 死ぬならせめてダンジョンの(かて)になればいいのに。どこまでも役立たずだわ!」


 美女が大げさに両手を振って(なげ)く。

 大きく開いたドレスの胸元が揺れる。


 知らず知らずのうちに視線が吸いつけられている。


 肌は白く、()き通るようだ。

 皮膚の下の血管すら透けて見えそうな、柔らかな肉。


 めまいがしそうなほどに――


 いや……何をしている。

 忍べ! 俺!


「――さん! ゼンジさん! だ、大丈夫ですか!?」

「う……」


 声が遠く聞こえる。

 リンが俺の肩を掴んで揺さぶっている。


 頭が痛い。

 まるで二日酔いのような……悪い夢を見ているような気分だ。


 なにをしていたんだったか……?


「あ……? どうした?」

「しっかりしてください! どうしたんですか……トウコちゃんも!」


 トウコがどうかしたのか?

 俺はうつろな瞳でトウコを探す。

 いた。バリケードにもたれかかるようにして美女を眺めている。


「うへへ……」


 その表情はへらへらと緩みきっている。



 御庭が鋭く言う。


「皆! あの女を見てはいけない! これは……精神に働きかける能力だ!」


 御庭は美女から目をそらしている。

 (ひたい)には脂汗が浮かんでいて苦しげだ。


 精神……?

 どういう意味だ?


 なにを言っているのかよくわからない。


 いや、そんなことはどうだっていい。

 それよりも彼女だ。彼女はどうしている?


 状況を確認――そう、確認しなくては!

 俺は熱に浮かされたようにVIPルームに視線を戻す。



 美女が長く美しい指でこちらを指さしている。

 何人か男もいるようだが……それはどうでもいい。


「あらぁ? そこに誰かいるわね。お前、見てきて!」

「はい……」


 美女の声が鼓膜から脳に突き刺さるように響く。


 まるで耳に息を吹きかけられたかのようにむずがゆい感覚。

 首筋に鳥肌が立つ。


 思わず俺は声を漏らす。


「おお……」


 もっと近くであの声を聴きたい。

 いや、直接あの肌に触れ――


「ゼンジさん!」

「……ん」


 バリケードを乗り越えかけていた俺をリンが引き留める。

 背後から抱き着かれて身動きが取れない。


 邪魔だな――!

 俺は拘束を力任せに振りほどく。


「きゃっ!」


 驚いたようなリンの声。

 俺は自由になる。


 トウコはもうバリケードを越えて、よろよろと歩いている。


「うへへぇ……おねーさん……いま行くっス!」


 トウコは夢遊病のようにVIPルームへ向かっていく。

 その向こう側、入口に大柄な男が立っている。


 くそ、彼女が見えない! 邪魔だ!

 入り口をふさぐんじゃない!



 大柄な男が言う。


「このへんにドアがあったはずなんだが……」


 そう言いながら男は幻で(おお)われた戸口に手を伸ばす。


 壁に触れようと伸ばした男の指が幻を突き抜ける。

 そして、ぴんと張られたワイヤーに触れる。


「――ッ! あああっ! 指が……俺の指がぁぁ!」

「うるさいわね。早くなんとかしなさいよ!」


 甘やかな声が騒がしい男の声を(さえぎる)る。

 ああ、その声! もっと聞かせてくれ!


 俺は熱烈に彼女の声を聴きたいと願った。

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[一言] おおにんじゃ よ。みりょうにかかるとはなさけない…
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