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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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敵か味方か。人間か怪物か……?

 悪性ダンジョンへ続く転送門から何者かが現れる。


 現れたのは一体だけ!


 転送門は静まり、動かなくなった。

 後続は来ないようだ。


 なんだ? なぜ一体だけ……?



 疑問を振り払い、油断なく相手を観察する。


 動きは遅い。

 こちらに気づいてはいない。


 床に膝をつき、うずくまるようにしている。

 呼吸は荒く、肩が大きく動いている。


 表情は影になっていて見えない。

 服は血で赤く染まっている。

 小柄な女性だ。



 女性がうめき声をあげる。


「うゥ……ああっ……!」


 コイツは……どっちだ?

 人間か? 吸血鬼か!?


 もしも人間ならば攻撃をしかけるわけにはいかない。


 爪や牙に変化はなく、見た目は人間と変わらない。

 人間のふりをした吸血鬼かもしれない。


 判別がつかないぞ……!

 まさか、俺たちを揺さぶるために狙ってきたのか!?



 トウコが銃口を向けながら、俺に問う。


「店長、まだっスか!?」

「まだだ……!」


 トウコの腕なら簡単に頭を撃ち抜ける。

 距離も近いし相手の動きは鈍い。


 だが、それはさせられない。



 俺は御庭の様子をうかがう。

 御庭の異能なら見分けられるんじゃないか……そう期待している。

 なんらかの知覚的な能力のはずだ。


 だが御庭は眉をひそめたまま。

 浮かんでいるのは判断しかねるような、難しい表情。


「御庭、どっちだ?」

「判断が難しいな……少し時間が欲しい」


 そう言うと御庭はじっと女性を観察する。

 一目見ただけでわかるような能力じゃないらしい。



 女が言う。


「うゥ……だれかァ……」


 女は両手を前に突き出すようにして、よろよろと歩いている。

 乱れた服の首元から血が滴っている。


 出口のない部屋に困惑しているのか、女はきょろきょろと周囲を見回している。



 その背後――転送門が揺らめく。

 なにか出てくる――!


 転送門から次々と新たな人影が乱入してくる。

 今度は三体!


 出てきたのはすべて女性だ。

 口元は血に汚れて、目はぎょろぎょろと血走っている。


 女性の細い体には不似合いな筋肉が腕を筋張らせている。

 そいつらが、口々に甲高い叫び声をあげる。


「はァァ! 血ィ……血をヨコセェ!」

「足りナイ足りナイよォー!」


 するどい牙の生えた口元から赤茶色の液体がしたたり落ちる。

 ショッピングセンターで出会った牙女(キバ子)に似た姿。



「ミツケタッ!」


 その一体が走り出す。

 吸血鬼が狙いを定めたのは――最初に現れた女性。


 よろよろと歩いていた女性の顔が恐怖にゆがむ。

 その口元がかすかに動く。


 女性が声を振り絞る。


「……た、たすけて!」


 助けを求める震えた声。

 これが演技なら……。



 俺は言う。もはや声は抑えていない。


「御庭! どっちだ!?」

「彼女は()()人間だよ、クロウ君!」




 彼女はほとんど人間かもしれないが、吸血鬼でもある。

 不完全な吸血鬼なのかもしれない。

 吸血鬼になれなかった人間なのかもしれない。


 敵か味方か。人間か怪物か。

 その線引きは曖昧(あいまい)だ。


 助けるべきか、倒すべきか――


 迷ってる場合じゃあない!

 助けるしかないだろう!


「助けるぞ! 援護を頼む!」


「はいっ!」

「りょ!」


 俺の言葉に、リンとトウコはすぐに反応した。

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[一言] 御庭さんの異能では何をどこまで見破れるのか…
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