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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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心のケアは万全に!

 リンが気遣うようにこちらを見ている。

 なにか言いたいようだが、待ってくれている。


 俺は言う。


「じゃあ、リンは店内に状況を伝えてくれ。ダンジョン内にはまだ入らないようにな」

「はい。その……行ってきますね!」


 リンは心配そうに振り返りながら店内へ戻っていった。



 俺はエドガワ君に向き直る。


「さて、とりあえず銃をしまってくれ」

「あ……はい」


 エドガワ君がごそごそと銃をしまう。

 慣れているはずの動作だが、ずいぶんとぎこちない。


「あ、あれ? おかしいな……引っかかって……」

「落ち着け。ゆっくりでいい。深呼吸だ」


 俺はエドガワ君に手を伸ばす。

 だが手が異能に弾かれ、届かない。


「は……はい。すー……はー」


 エドガワ君がたどたどしい手つきで銃をホルスターに収める。

 注意しなければ服の上からはわからない。


「落ち着いたか?」

「はい。あの……すみませんでした」


「いや、いいんだ。銃を撃ったこと。いや――吸血鬼を()()()ことを気に病んでいるんだろ?」


 吸血鬼は単純なモンスターとは違う。

 人間に似すぎている。


 それを倒す――殺すには覚悟が必要だ。


 普通の感覚では耐えられない。

 ましてやエドガワ君は繊細でやさしい。



 俺の問いかけに、エドガワ君の肩がびくりと震える。

 そして、(せき)を切ったように話しだす。


「そ、そうです! だって、さっきまで普通に話していたんですよ! どうして……どうしてクロウさんたちは平気なんですか……?」


 エドガワ君が肩を震わせる。

 涙が頬を流れる。


 やっぱり、そうか……。

 そうだよな。



 エドガワ君は暴力とは無縁の生活を送ってきた。


 公儀隠密に属しているとはいえ、仕事は調査がほとんどだ。

 戦闘経験は少ない。


 前回、トレントの家で特異殲滅課(トクメツ)と争ったときも躊躇(ちゅうちょ)していた。

 銃を扱う訓練を積んでも、人を撃つ気構えは身につかない。


 あのとき、弾丸は命中しなかった。

 当然、相手を殺してもいない。


 毎日ダンジョンで戦い続けている俺たちとは違う。



 俺は言う。


「実は、俺も平気じゃないんだ」

「えっ!? でも……クロウさんは戦ってたじゃないですか! た、楽しそうに見えました!」


 俺は頭をかく。


「あー、まあな。俺は戦うのが好きなんだ。でもな……殺すのは好きじゃない」


 俺には少し戦闘狂な部分がある。だけど快楽殺人者ではない。

 会話の通じないモンスターが相手なら躊躇はない。

 だが吸血鬼は――


「ボクは……困っている人を助けたいと思って……戦おうと思いました。でも……」


 エドガワ君が声を詰まらせる。


「もし戦うのがつらいなら無理にとは言わない。俺だって、やりたくないことは引き受けないしな」


「はい……」

「ハルコさんはどう思う?」


「私はせっかく特別な力を手に入れたんだから、役に立ちたいと思いますぅ」

「ボクも役には立ちたいけど……」


トオル(エドガワ)君もゼンゾウさんもマジメすぎるんですよぉ! 私はちょっとでもあいつらに仕返ししたいんですぅ!」


「し、しかえし?」

「前は隠れて逃げるしかできなかったけど、今はあいつらに一泡吹かせてやれる! ざまぁみろですよぉ!」


「ハルコさんの言う通りだな。吸血鬼にしろダンジョンにしろ、好きなようにはさせない。俺たちが一泡吹かせてやろうぜ!」


 エドガワ君がふっと笑う。


「ふふ、あはは。そうですよね……迷ってちゃ、ダメですよね……?」

「いや、迷っていいんだ。俺だって迷う。できる範囲で、やれるだけやればいい!」


 俺はエドガワ君に手を伸ばし――肩に手を置くことに成功する。

 やれやれ。やっと能力を解除してくれたな!


「はい……ありがとうございます。クロウさん。ハルコさんも……」


 ハルコさんがエドガワ君に笑いかけ、手を伸ばす――


「ぜんぜんいいですよぉ! って、あれぇ?」


 ハルコさんの手が空中で止まる。


「あ……つい」

「トオル君、ひどくないですかぁ!?」


 エドガワ君がうつむいて肩を震わせる。

 だが、今度は泣いているのではない。


「はは……ごめん。あはは!」


 エドガワ君がハルコさんの手を握る。



 これでもうエドガワ君は大丈夫だ!

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― 新着の感想 ―
[一言] ハルコさんとエドガワくんはいいコンビになりそうだねぇ
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