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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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VSボス戦! ダンジョンボスはコウモリで! その5

 傷は癒えた。音響(超音波)攻撃の効果も切れてきた。

 体は大丈夫だ。


 しかし、ポーションで回復したのは傷だけで、魔力は減るし、疲労も残っている。


 「こんな時は……っと」

 胸ポケットに用意しておいた丸薬を飲み下す。

 即効そっこうの体力回復丸と魔力回復丸だ。


 丸薬はそのまま口に放り込むだけだから簡単でいい。

 ポーションも、もっと使いやすいように工夫しなくちゃな。


 いざという時に飲めないんじゃ意味が無い。

 ――今回は分身に救われたな。


 対するコウモリは満身創痍。

 翼はボロボロ。

 必死に羽ばたいて、なんとか飛んでいるというところだ。


 胸には俺のクナイが深々と突き刺さっている。

 とっさに刺突したので、投擲用のワイヤーはつけていない。



「キィィ……キィィ……」


 コウモリがこちらに背を向けて飛び去ろうとしてる。

 ふらふらと、高度を取って天井のほうへ――


 ――まさか、逃げる気か。


 コウモリは高い自己治癒能力を持つという。

 裂けた皮膜くらいは数週間でつながるらしいが……。


 巨大コウモリ(ファンタジーな存在)なら、短時間で回復する能力を持っていてもおかしくはない。


 ――いや、そんなことは許さん。


 「逃がすか!」


 俺は見上げるほどの巨石を一息に駆け上がる。


 壁の加速をそのままに、大きく踏み切り跳躍する。


 高く。速く。

 意識が加速して、スローモーションのように景色が流れる。


 遠目に滝がしぶきをあげて流れている。

 輝く水晶が彩る洞窟はきれいだ。


 今は、コウモリの羽ばたきすらゆっくりと見える。


 伸身宙返りの要領で回転しながら、コウモリの上を取る。


 背中から愛用の金属バットを抜く――


「落ちろ! 空中――フルスイングッ!」


 アクロバットのひねりを加えながら全力でバットを振る。

 コウモリの頭部を真っ向から強打する。


「ギッ!」


 回転の遠心力。

 体重と加速。

 スキルによるノックバック効果。


 すべてが乗った全力の一撃が、コウモリを吹き飛ばす。

 地面に向けて、コウモリは落ちていく。


「ギィィィェェェ!」

「落ちろ!」


 そのまま、俺も地面へ落下する。

 巨石からは離れているし、鉤縄で突起につかまるのは難しい。

 ――スタイリッシュ忍者ワイヤーアクションはまだ早い。


 【跳躍】の落下ダメージ軽減効果で着地し、そのまま前転して衝撃を殺す。


 それでも――

 完全には殺し切れなかった衝撃で、足がびりびりとしびれる。


「ぐっ! な、なんともないね!」


 耐え忍ぶ。スタイリッシュ我慢だ。

 はた目には華麗に着地したように見えているはずだ……!



 コウモリが、よろよろと立ち上がる。


「おいおい……なんて耐久力だよ!」


 普通に考えれば、もう倒れていいはずだ。

 常識的に考えれば――


 ――いや、こいつはボスモンスターだ。


 ファンタジーに俺の常識なんて通じない。

 だが、確実にその耐久力は削っている。


 皮膜は破れ、おそらく翼の骨も折れただろう。

 あと、ほんの数手で倒せるはずだ。


 距離を詰めて追撃を――


 と、その時コウモリが大きく息を吸う。

 ――この攻撃動作は、音響(超音波)攻撃だ!


 「キイイ――」


 コウモリが叫びはじめる。


 「させるかっ!」


 ――だが遅い! それに、既に見た攻撃だ。

 俺は素早くポケットから取り出した目つぶし玉を投擲した。


 コウモリが大口を開けているそこへ、狙いたがわず命中する。

 (たま)が口内で、はじける。


 俺が投擲したのは――激辛目つぶし玉だ!

 もとは激辛香辛料などの刺激物だ。


 その効果はてきめん――


「ギィッ! ゲフッ! ガフッ!」


 これで、咆哮は封じた。

 それどころか、呼吸すら困難にさせただろう。


「――忍者に同じ手は通用しないんだぜ!」



 コウモリは涙目でむせている。

 モンスターにも味覚はあるんだな。

 それがお前の最後の晩餐だ。


 怒り狂ったコウモリが、猛然と走り出す。

 おそらくこれが最後の一合だ!


「キイッ!」

「来いっ!」


 コウモリがその巨体を武器にタックルを仕掛ける。


 俺は分身を生み出し、ナタと釘を投げ渡す。


「行け! 走れ!」


 先行した二体の分身が、コウモリへと突撃する。


 防御も何も考えない捨て身のぶちかましだ。

 コウモリに激突した分身は二体とも塵となって消えた。


 ――それでも、コウモリは倒れない。


 ナタもクギも、致命的なダメージにはなっていない。


 ――だが。これで終わりじゃあない!


 さらに後続の分身群――4体の分身が追撃する。


 コウモリからしたら、分身は二体にしか見えなかっただろう。

 そのかげに、さらに2体ずつの分身が隠れていたのだ。

 そう。分身は六体いたというわけだ!


 前に使った三位一体(さんみいったい)の連続攻撃。

 それを二列。六位二体だ。

 分身だからこそできる、一糸乱れぬ攻撃方法だ。


 分身が奮闘し、コウモリの動きが鈍る。


 ――今だ!

 俺は、走りこんで、思いきりバットを振りかぶる。


 「とどめだっ! うりゃああああ!」


 ――狙うのは胸に刺さったままのクナイ。

 フルスイングしたバットの中心でクナイを捉える!


 ――ガギィィィン!


 金属を打つ爽快な音とともに、クナイがコウモリの胸へと打ち込まれる。

 そのままクナイはコウモリの体内を突き進み、反対側からつき抜ける。


 「グッ……ギギギ……」


 コウモリの背後へ、血しぶきが舞う。

 コウモリはそのまま力なく崩れ落ち、塵化が始まる。


 「ふうっ。やれやれ、やっとだな……。さて、言わせてもらおう! コウモリはやっぱり――強敵だったぜ!」

戦闘終わりです!

ご意見ご感想お待ちしております!


■誤記修正

六位二体するところで文章が分身する(おかしくなる)のを修正

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― 新着の感想 ―
[一言] (//∇//)やった~勝った~ えへへ~レベルアップするかな~
[良い点] 緊迫感あって非常に良かったです。
[一言] 最後まで野球忍者でした、スタイリッシュ?
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