袋叩きの術!
分身で吸血鬼のオカダを叩きのめした。
袋叩きの術、強い。
俺は息を整える。
「ふう……強敵だった」
オカダはぐったりとして動かない。
気絶しているのだろう。
今のうちに拘束しておこう。
分身を使って、後ろ手に縛り上げる。
そうしている間にもオカダの傷は少しずつ治っていく。
たいした回復力だ。
それでも、さっきより治る速度は遅くなってきたかな?
たぶんヒットポイントを削り切ったのだろう。
足の断面にはピンク色の肉が盛り上がってきている。
出血も止まっている。
だが、すぐに足が生えてくるわけじゃなさそうだ。
これで、ひとまず無力化できたな。
リンとトウコも敵を倒したようだ。
ちょうどこちらに向かってくる。
そのとき、ドアノブの回る音がする!
とっさに振り向くと、店の入口ドアが開く――
御庭たちが来るにはまだ早いはず……!
――入ってきたのは門番風の男だ!
「あー、そろそろ交代の時間だろ。俺も――なにっ!?」
門番は室内を見回して驚きの声を上げる。
転がっているオカダ。荒れた店内。
状況を察した顔。
そこからの行動は思いのほか早かった。
門番の大柄な体が、さらに大きく変わっていく。
口が大きく裂け、するどい牙が生えてくる。
「潰レロ人間がァ!」
門番が両手をハンマーのように振り上げ、突進する。
狙いは一番近い位置にいるエドガワ君だ。
太い腕が振り下ろされる。
――だが、その手は届かない。
エドガワ君の後ろでハルコさんが動く。
門番の目元を黒いサングラスが覆う。
幻影の目隠しだ。
これで視界を奪った!
門番が間抜けな表情で言う。
「なな!? アレ……?」
「えーと……ボクが撃てばいいんですか……!?」
エドガワ君が驚きと不安の入り混じった顔で俺に聞く。
別に許可なんていらないぞ!?
俺はくいっと親指を下に向けてサムズダウン。
「やっちまえ、エドガワ君!」
「は、はい!」
エドガワ君はすでに銃を抜いている。
銃を抱えて胸元に寄せた、カーシステムの構え。
連続して弾丸が放たれる。
室内に銃声が連続する。
対して、巨体の吸血鬼は間抜け面で固まったまま。
至近距離で両手を振り上げて、スキをさらしている。
弾丸が体をえぐる。
マトが大きいから簡単に当たるな!
「グッ……ウゲェ!」
門番がたたらを踏んで下がる。
まだ倒れない。
やれやれ、コイツも頑丈そうだ。
だけど、楽に終われそうだ。
俺の出番はないだろう。
なぜなら――
すでにリンとトウコが狙いをつけているからだ!
「ファイアボォール!」
「チャージショット!」
容赦ない魔法と光を放つ銃弾が吸血鬼化した大男に着弾する。
「アァ……!」
吸血鬼が倒れ、塵となって消える。
後には魔石が残る。
集中攻撃を受けてはひとたまりもない。
コイツも悪いタイミングで入ってきたものだ。
俺は周囲を見回す。
リンとトウコが戦っていた魔法を使う吸血鬼と鎧をまとったような吸血鬼も倒されている。
他の敵を探すが、気配はない。
ひとまず周囲に敵はいない。
俺は皆に言う。
「よし、ひとまず一掃したな!」
「あ、当たりました……ボクの射撃……!」
エドガワ君は少し顔色が悪い。
俺はエドガワ君の肩を叩こうとして思いとどまり、親指を立てる。
「訓練の成果が出たな、エドガワ君! ナイスショット!」
「あ、ありがとうございます……その、喜んでいいんでしょうか?」
倒した喜びより、銃で敵を撃ったことに戸惑いを感じているのかもしれない。
ハルコさんが言う。
「いいんですよぉー。相手は吸血鬼ですしぃ!」
トウコがエドガワ君に親指を立てて笑う。
「オーケーオーケーっス!」
リンが小走りにやってくる。
「ゼンジさんっ! お、おケガはありませんか?」
「ああ、大丈夫。リンもケガしてないか?」
リンがうなずき、柔らかく笑う。
「はいっ! おかげさまで!」
いや、俺は何もしてないけど!
トウコが期待した顔でこっちを見ている。
「トウコもよくやったな」
「へへー! あたし達にかかれば余裕っス!」
ひとまず戦闘終了だ。
この後どう動くかを考えなければ!
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