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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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格闘技×吸血鬼!?

 オカダがちぎれかけた左腕をぶら下げながら言う。


「おお、痛てェ痛てェ! やってくれた――なァッ!」


 素早い踏み込みからの右フック。

 大振りに見えるが、速い!


 だが避けられる!

 俺はかがみこんで拳をくぐり抜ける。


 強く踏み込み、全身のバネを利かせて伸びあがる。

 俺は腕を振り上げ、アッパーカットのように腕を振る。

 逆手に握った刀がオカダの胸板を切り裂いていく。


 このまま喉を切り裂けば終わりだ!


 オカダの口元がにやりと笑みをかたち作る。


 なにかヤバい――!



「くらえやっ!」


 太い右腕のかげ――俺にとっての死角から、なにか来る!


 左腕!

 ちぎれかけた腕を叩きつけようとしている!


 このまま攻撃を続ければヤツの喉を切り裂ける。

 だが、こちらも回避できない。


 ――狙いは相打ちか!?


 攻撃は中止! 回避に専念する!

 だが、かなり無理な姿勢からの回避になる!


 間に合うか――!?


 体をひねって胸をそらす。

 さらに足元に反発力を生み出し、無理やり踏み切る。


 全身の筋肉が軋む。

 関節が悲鳴をあげる。


 限界を超えた集中が俺の意識を加速させる。

 スローモーションのようにゆっくりと流れる時間の中、ヤツの腕が迫る。


 鼻先を腕がかすめ、風を切って唸る。

 ギリギリでかわした!


 それでもオカダは動きを止めない。

 ちぎれかけた腕が勢いのまま床に叩きつけられる。


 ぐしゃり、と肉が床を打つ鈍い音。

 傷口から大量の血液が噴き出す――


「血の目潰しだァッ!」


 俺はすぐさま腕で顔をガードする。

 だが間に合わない!


「くっ――!」


 とっさに目を閉じる。

 顔に熱くぬめる液体が降りかかる。


 わずか数瞬――わずかな時間だ。

 コンマ数秒の攻防の中で目を閉じる恐怖。


 【危険察知】がびりびりと反応している。

 ――なにか来る!


 奪われた視界の中で【回避】と【危険察知】を頼りに背後へ跳ぶ。


 ぶん、と攻撃が空を切る音。

 俺は着地しながら(そで)で目元をぬぐう。


 うっすらと目を開ける。

 なんとか見える!



 オカダが楽しそうに言う。


「おおっ! 今のをよけるのかよ!?」

「そんな腕でよくやるな……!」


 オカダの腕はずたぼろになっている。

 なんとかちぎれずにぶら下がっているというありさま。


「ははは! こんなもんかすり傷ってやつだ!」

「どうみても大ケガだろ! バケモノかよ!?」


「まあ吸血鬼だからな! もっとも、俺は特別だが!」


 そう言うとオカダが腕を持ち上げて見せる。

 すると傷口に赤い霧がまとわりついていく。


 寸断された筋肉が繋がり、肉が盛りあがる――


「再生だと!?」

「これくらいの傷、ぜんぜんオーケーさ! ほら、もっと来い! 楽しもうぜェ!」


 胸の刀傷も同じようにふさがっていく。

 くそ! とんでもない再生速度だ!


 加えて攻撃も素早いし、威力もある。

 文字通り捨て身のカウンターを狙ってくる……。


 こっちは食らったらひとたまりもない。

 これは厄介だぞ!?



 俺は目だけで戦況を確認する。


 リンとトウコもそれぞれの相手と戦っている。

 援護は期待できない。


 ハルコさんはへたり込んで動けない。

 当たらないとわかっていても、怖いものは怖いだろう。


 エドガワ君はハルコさんを守るように立ちながら銃を抜いている。



 オカダは小刻みにステップを踏みながら両腕をあげて構えている。


「来ねえならこっちから行くぜェ!」


 オカダが踏み込む。

 速い! 一瞬で距離が詰められる。


 踏み込みの加速を乗せた左ジャブが放たれる。


 回避を――

 いや――ムリだ!


 俺はとっさに腕を上げる。


 かろうじてガードが間に合う。

 だが重い!


 防いだ腕がびりびりとしびれ、鈍い痛みが襲う。


「っつう!」


 俺は背後へ跳んで距離を取る。


 しかし追いかけるようにオカダがステップを踏む。

 軽やかな足さばき。


 逃げきれない!

 それはわかっている。


 俺はのけぞるようにして右ストレートをかわす。


 オカダが叫ぶ。


「沈めやっ!」


 追撃の左。

 先ほどと似たコンビネーション――!


 ならば見切れる!


 俺は体をひねって横回転する。

 打ち下ろされたオカダの拳に刀の峰をぶち当てる。


「うりゃああっ! フルスイングッ!」


 刀の峰が左拳を打ち砕き、押し返していく。

 オカダが叫ぶ。


「おおあっ!」


 吹き飛ばされたオカダが背後のテーブルをなぎ倒す。

 再び距離がひらいた。


 オカダが飛び起き、驚いたように砕けた拳を見る。


「なんだァ……? なんかやってんなァ!?」

「タネもしかけもある手品だよ! そっちは格闘技かなにかか?」


 俺の左腕も無傷ではない。

 鈍い痛み。折れてはいないだろうが、握力がほとんどない。


 ここは会話で時間を稼ぎたい。


「ボクシングをちょっとな。お前もなんかかじってるんだろ? ゼンゾウよぉ!」

「忍術を少し! タネもしかけもない忍術を見せてやるぜ!」


 俺は自分とオカダの前に分身を生み出す。

 同時に背後へも分身を配置。



 再生を終えた拳を構え、オカダが言う。


「へえ? 分身ってやつか? おもしれぇ!」

「第二ラウンドだ! 行くぞ!」


 俺は痺れたままの左腕を握る。


 格闘技を使う吸血鬼か……。

 ただのモンスターとは歯ごたえが違う!

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[一言] 思ったよりチャラ男が手ごわかった…
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