オトリ捜査はパーティ会場で!
噛みつき事件と失踪事件は関連している。
それを結びつけるのは赤いクスリだ。
赤いクスリの流れを追う。
それはわかったが――
「で、俺たちはどこで、なにをすればいいんだ?」
御庭が答える。
「具体的には、赤いクスリの売人に接触してほしい。サタケ君たちとハカセ君たちが調べて、だいたいの行動範囲は絞れている」
おお、さすが御庭。
聞きたかったことを答えてくれる!
当てずっぽうに探しても見つかるわけがないからな。
「売人はどんな奴なんだ? 一人か?」
サタケさんがホワイトボードに写真を貼る。
監視カメラの映像を引き延ばしたらしく、ややぼやけている。
「こいつが売人の一人だ。被害者Dはこいつから買っていた」
「おお、すでに絞り込めているのか。なら話は早そうだ!」
サタケさんが言う。
「Dの話では、売人から直接クスリを買うシステムではないらしい。案内されて店に連れていかれる。そこでパーティが開かれるそうだ」
「パーティ……? あまり詳しくないんだが、クスリを売るだけじゃないのか?」
裏路地でこっそりと取引するイメージだったが……。
「それが失踪事件に関係してくる。Dはパーティの記憶がないと言っている。それが終わるとクスリを持たされて帰されるという」
記憶がない……?
「つまり失踪事件の起きた店がパーティ会場なのか……!」
「おおーっ! それっぽくなってきたっス!」
なんだ、それっぽいって!?
リンが言う。
「失踪した人達もそうしてお店に来たんですね……」
「そうかもしれないな。帰れる場合と、そのまま失踪する場合がある……」
サタケさんが言う。
「売人を押さえるだけなら簡単だ。だが、それではクスリの流れは追えない。毎回違う店が選ばれているから、直接店を叩くことはできない」
御庭が言う。
「そこでクロウ君には店に潜入して欲しいんだ! ダンジョンが発生している可能性も高い」
「ああ、任せてくれ。まずは売人を見つけて、店に案内させるわけだな」
「うん。どう進めるかはクロウ君に任せるよ。サタケ君たちはフォローを頼むね!」
サタケさんが言う。
「売人を脅して店に連れて行かせる方法もあるが……売人が異能者や吸血鬼という可能性もある。街中で暴れられると厄介だ。市民に被害は出せない」
「となると、客のふりをして店に連れて行かせるしかないな」
「おおーっ! オトリ捜査っスね! 楽しそうっス!」
「トウコにオトリ役はムリだろ!」
「ムリじゃないっス! 演技は得意っス!」
「トウコは未成年だろ。夜の街をうろつかせるのはちょっとな」
「はい。私も心配です」
トウコが目をむいて言う。
「えー!? あたしだけ仲間外れっスか?」
「オトリ役をやらせないだけだ。どこかで待機して、呼んだら突っ込む役だ!」
そういうシーンがあるかはわからんけどな。
バックアップ要員である。
「やたーっ! ヒーローは遅れてやってくるっス!」
俺はサタケさんに向き直る。
「サタケさん。売人がターゲットにしているのはどういう人ですか?」
「被害者Dは三十代男性。家族や恋人はいない。生活に疲れていて孤独。疲れたサラリーマンといった感じだな。ほかには――」
サタケさんが他の失踪者の情報を話してくれる。
男も女もいるようだ。
十代から三十代。四十代以上は少ない。
職業などに共通する要素はない。
しいて言えば孤独そうな人が多いようだ。
弱みに付け込んでクスリを売りつけているわけだ。
俺は言う。
「オトリ役は俺とリン、あとエドガワ君だな!」
「はいっ!」
リンがうなずく。
エドガワ君が驚いた様子で言う。
「は……え? ボクもですか?」
気弱そうなエドガワ君はオトリとしてバッチリだろう!




