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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
五章 本業は公儀隠密で!

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事件はバーで起きている!?

 噛みつき魔の足取りを追った調査チーム。

 話によると、バーの店員が認識阻害を受けた疑いがある。



 サタケさんが説明を続ける。


「このあたりで、店員の意識があやしくなってきたので深追いはやめたんだが――」


「店員の意識が……?」

「ああ……げほっ! エドガワ、説明してくれ」


 サタケさんがむせる。

 長いセリフをしゃべるのは辛そうだな。



 エドガワ君が言う。


「あ、はい。あのですね……話してる途中でどんどん話が変わっていくんです。ウソをついている感じじゃないのがまた怖いんですよね……」


 ハルコさんが言う。


「その日は休みだったって言ってたのに、働いてたことになってましたねぇ。でもその日のことを何もおぼえてないって言ってましたぁ!」



 サタケさんが言う。


「げほ……ふう。つまり話を聞いた店員はその日、勤務していなかった。だから記憶がないのは当然だ。辻褄(つじつま)を合わせるために記憶をゆがめられている――」



 咳が出そうになったのか、サタケさんがエドガワ君に目で合図する。

 エドガワ君が言う。


「こういう場合、本人が忘れていることを追及すると、おかしいことになるんです。ええと、いまある記憶がまたおかしくなる感じで……」

「ふーむ」


 シフト表に知らない人物が居たというが、本来は同僚のはずだ。

 知らないはずはない。


 その同僚のことを認識阻害で忘れる。

 だから、そんな人物はいないはずだと思い込む。


 でも店は営業していた。

 だから自分が働いていた、と記憶が改ざんされたんだろう。



「整合性をとるために記憶を捏造(ねつぞう)しはじめるんだ。これは店員が意図してやってるわけじゃない。俺には仕組みはわからんが、世界の側がやっているらしい。あまり続けると体に悪い」


「店員に悪気はないわけだな」

「ああ。彼も被害者と言える。だから質問はそこそこに切りあげた。話した手ごたえとしては、この店員は直接事件にかかわっていない」


 事件……?

 俺は少し考えて聞き返す。


「そのバーを調べたのは、別の場所で起きた()()()()()()()()を調べていたからですよね?」

「あ、そーっス! ならその店員は関係(かんけー)ないっスよね!?」


「そのための調査で足を運んだんだが、これは別件だ。バーそのものが事件現場なんだ」

「ええと……どういうことでしょうかー?」



 サタケさんが言う。


「噛みつき魔が来店した日の店員は行方不明だ。おそらくは死亡している」

「死んだ……?」



 御庭が指をたてて言う。


「補足すると、悪性ダンジョンや領域内で亡くなると、その人は認識阻害(ブロック)の対象になる。外の世界の人には忘れられてしまうんだよ」


「げほ……。失踪した店員をハカセに調べさせた。その日以降、通信の履歴はない。また、周囲のカメラにも写っていない」

「ちなみに周囲のカメラ映像に噛みつき事件の犯人は映っていましたよぉ!」


 行方不明の店員はバーから出ていない。

 死亡したかパージされたかして、この世界から忘れられた。


 一方で、噛みつき魔は店を出ている。



 トウコが言う。


「んー? それなら最初っからカメラを調べたらよかったっス!」


 サタケさんが言う。


「いや、それは難しい。かたっぱしから調べることはできないからな」


「うぇ? なんでっスか?」

被疑者(ひぎしゃ)が出入りしていた場所は多い。俺たちが足を使って調べて目星をつけ、それをハカセが調べる。そういう手順だ」



 噛みつき魔の行動履歴は通信ログや位置情報からわかる。

 これで、噛みつき魔が事件の前に立ち寄った場所がわかった。


 しかし、立ち寄った場所は複数ある。

 位置情報だけでは、どこが怪しい場所か特定するのは難しいのだろう。


 結局、人間の判断が必要になってくる。

 サタケさんたちが地道な聞き込みをしているのはこういう訳だ。



 俺はたずねる。


「こういうのは検閲システムでわからないのか?」


 国が秘密裏に運用している闇のシステムだ。

 あらゆる通信は見張られ、監視されている。


 公儀隠密はこれにアクセスできる。

 ダンジョンや異能犯罪にかかわる調査に利用しているのだ。



 御庭が言う。


「うん。検閲システムは主に文字(テキスト)や音声通話の一部をチェックしているんだ。日本中の監視カメラの映像をチェックしているわけじゃない。こちらは検閲システムより、ハカセの仕事だね」


「へえ。それはいいことを聞いたな。そこまでの監視社会じゃないってことか」

「ちょっと安心しましたー」


 御庭が言う。


「監視カメラの映像がネット上に情報を送っているともかぎらないしね」

「ネット上に存在しないデータは検閲できないし、ハッキングもできないわけだな」


「そうだね。それから、日本中の映像を解析して映っている人物を割り出す、なんてことはできない。そんなリソースはないからね」

「検閲システムの処理能力が足りないと?」


「そうだね。だからカメラなり、パソコンを個別にハッキングして覗くしかないんだ」

「そうか……」


 検閲もハッキングも犯罪ですけど!

 まあ、必要悪……大義のための手段というものだ。


 あまり賛成できたことじゃないが、文句を言っても始まらない。


 使えるものは使う。

 それが忍者組織である。



 サタケさんが言う。


「ともかく、当日の店員は行方不明。そこでハカセに調べさせたところ、この日この場所で他にも行方不明者がいることが分かった」


 行方不明者か……。

 俺はたずねる。


「バーに入って出てこなかった人がいるということ、ですか?」

「ああ。通信ログが途絶えて、それきり姿を消した人たちがいる」


「事件っス! 連続失踪事件っス!」

「なんだか怖いですね……!」


 こっちのほうが、噛みつき魔の事件よりヤバそうだぞ!?

誤字報告やツッコミありがとうございます!

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