赤いカプセルはヤバいお薬!?
前の展開で、名称変更は一日一回の縛りがあることを失念していました。
日をまたぐ描写を追加しました。
(大筋は変っていないので読み返さなくても大丈夫です)
俺たちは公儀隠密の拠点、会議室にいる。
ホワイトボードを前に、御庭が言う。
「さて、クロウ君。今日来てもらったのは他でもない。例の薬について進展があったんだ!」
「えーと、薬ってなんスか?」
トウコが聞き返す。
リンがトウコに耳打ちする。
「ほら、ゼンジさんがショッピングセンターで見つけたカプセルで……」
「あー、キバオが落としたやつっスね!」
大規模な悪性ダンジョン領域が広がったショッピングセンター。
そこで人間を襲っていた吸血鬼が持っていたものだ。
市販の風邪薬よりは少し大きい、赤いカプセル。
どろりとした液体が入っていた。
これを飲んだ吸血鬼は劇的な変化を見せた。
傷が治り、力が強くなった。
それだけじゃなく、どんどん肉体がふくれあがってしまった。
薬の効果に体が耐えられなかったのか……グロいことになったんだよな。
そういう、あからさまにヤバい薬である!
御庭が言う。
「クロウ君から預かって成分を分析していたんだけど、その結果が出たんだよ!」
「おお! それで、どうだったんだ?」
「さて、クロウ君は何だと思う?」
出たよ! 御庭クイズ!
吸血鬼が持っていた、力を強化する薬。
どろりとした赤い液体……。
「ポーションのような魔法の薬だと思うが……科学技術で調べても普通の成分しか検出できないんだよな?」
「その通りだよ! それで、なんだろうね?」
ダンジョンや異能に関わる品物は科学的に分析できない。
普通の物質として扱われる。
認識阻害に似た世界の防衛力によるものらしい。
「なら……吸血鬼の血液じゃないか? 普通の成分なら、人間の血液ってことになるな」
御庭がくいっと眉をつり上げ、俺を手で示す。
「正解だよクロウ君! さすがだね!」
「さすが店長! 吸血鬼ハカセっス!」
「なにがサスガなんだよ!? ぜんぜん専門家じゃねーし!」
リンがぱちぱちと手を叩く。
「でも正解でしたね! おめでとうございますー!」
御庭の横でナギさんが小さくため息をつく。
「正解なのはわかった。成分は人間の血液だけなのか? 興奮剤の成分はなかったのか?」
「あ、そうです! 【物品鑑定】では興奮剤でしたねー」
ダンジョン内で調べた結果は興奮剤。
回復薬とか肉体強化の薬じゃあないんだよな。
御庭が言う。
「薬物は検出されなかった。麻薬やドラッグの成分も含まれない」
「ふーむ……」
御庭が指を立てて言う。
「ちなみに血液型はA型。過去の犯罪とは一致しなかった」
「お、すごいな。そんなことまでわかるのか!」
思ったよりまともな情報来た!
トウコが身を乗り出す。
「おおーっ! 科学捜査っスね!」
「映画みたいですねー」
「成分の分析はまだしも、犯罪歴も調べられるのか……」
「そこはちょっとしたコネでね。僕らは秘密組織だけど、調べものくらい頼めるのさ!」
「へえ……。ちょっと感心したよ」
公儀隠密は国の非公式な組織である。
どこの省庁にも属さない秘密組織だ。
公には存在しないとされる。
身分も保証されないし、公権力を振りかざせるわけじゃない。
それはもはや公的な組織とは言えない。
単なる謎の組織だよね。
と思っていたが、コネで調べものができるんだな。
御庭が嬉しそうに言う。
「僕らは忍者だから、情報収集は得意分野なんだよ!」
「違う気もするが、まあそういうことにしておこう」
たぶんハカセの情報戦能力とか、国のデータにアクセスできるおかげだ。
忍者は関係ない。
まあ、組織の長たる御庭がそう言うなら、無理に否定はしない。
そっとしておいてあげるのが優しさだ。
「それで御庭。カプセルの中身が血液だったってのはわかった。でも、俺たちを呼んだのはそれだけじゃないよな?」
それだけなら電話やメッセージですむ話だ。
御庭がまじめな顔で言う。
「さすがクロウ君! するどいね! 実は、これと似た薬が街に出回っているんだよ!」
「なんだって……!?」
吸血鬼の血液らしきヤバい薬が出回っている……?
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