ボス部屋突入! 現れたのは……!?
充分に休息して万全の態勢だ!
「よし、ボス部屋に乗りこむぞ! 準備はいいか?」
「いつでも大丈夫ですー!」
「やるっスよー!」
「おう!」と自律分身。
ボス部屋に通じる巨大な扉を押し開ける。
軋みを上げて、扉がゆっくりと開いていく。
その先は広めの洞窟になっている。
五階層のコウモリボスの部屋に比べると天井が低い。
普通には手が届かない高さだ。
俺が【空中歩行の術】で二段ジャンプしても届かない。
トウコがぐるぐると腕を回す。
「狭いところじゃなくてよかったっス!」
「天井も高いが……ボスコウモリが飛び回るにはちょっと狭いかな?」
リンがうなずく。
「そうですねー。でも、蛾さんならどうでしょうか?」
「大きさにもよるが、ひらひら飛ぶならちょうどいいかな?」
「ゆっくり飛んでる奴なんていいマトっス!」
「だから、妙なフラグを立てるんじゃない!」
自律分身が扉を通ったところで立ち止まる。。
「じゃ、確認頼むぞ!」と俺。
「おう! 見張っておくから先に行ってくれ。すぐ追いつく!」
事前に打ち合わせた通り、自律分身は別行動だ。
ボス部屋の扉が閉まるかを確認するのだ。
ボス戦が始まるときに扉が閉まるのか、前から気になっていた。
それを確認する。あくまでも確認するだけだ。
閉じたとしても、開いたままだとしても、ボスと戦うことに変わりはない。
逃げ帰るつもりはないし、そもそも扉が閉じそうだからといって、先に進んだ俺たちが戻っても間に合わないだろう。
閉じ込められるのは気分が悪いが、気にしても始まらない。
俺たちは、ボスを倒すつもりで来ているのだ。
どちらにしろ、ボスを倒せば扉は開く。倒して出ていけばいいだけ。
「閉じないといいっスね! そしたら撃ち放題っス!」
「まあ、そんなズルはできないと思うけどな」と俺。
「じゃあ分身さん、おねがいしますねー!」
「おう! そっちも気をつけてな」と自律分身。
俺たちは自律分身と別れてボス部屋の奥に向かう。
このボス部屋……というかボス通路は、ある程度の広さがあるようだ。
見える範囲に敵の姿はない。
リンの索敵にも引っかからない。
「ここは明るくて助かりますー」
「ヒカリゴケやキノコのおかげだな」
充分に明るいから、戦いやすい。
【暗視】を使えば、さらにくっきり見える。
リンは暗いとき【魔力知覚】で周囲を把握している。
暗い場所だと魔力を持たないものは見えないんだよな。
「これなら【暗視】を使わなくても見えるっス!」
【暗視】を切っておけば銃の発砲炎で目をやられずに済む。
通路の先に分身を放っている。
壁沿いにどんどん進むように条件をつけてある。
通路は曲がりくねっているので、先は見通せない。
その先から、どよめくような声が聞こえてくる。
騒ぎ立てるような声、怒声。
人間のものではない。
猿のような耳障りな声――
「この声――ゴブリンかっ!?」
「たくさんいますよ!? すごい声です!」
ギャアギャアとわめきたてるような声がここまで響いている。
先に進んだ分身が発見され、倒されたのだろう。
待ち伏せ、不意打ちか。
分身はオトリとしての役割を果たしてくれた!
トウコがショットガンを構え直す。
「でもゴブリンなら楽勝っス! コイツで吹っ飛ばして終わりっス!」
いちいちフラグを立てるのはよせ!
侮ると逆転される!
ゴブリンだとしても全力で当たる!
「それはどうかな! ゴブリンでも強敵かもしれん!」
一応フラグを打ち消しておく!
俺は結構、お約束を信じているのだ。
「この先、広場になっています。ゴブリンさんがたくさん……多すぎて数はわかりません!」
「数で攻めてくるタイプのボスか!」
こういうパターンもあるのかよ!?
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