VSボス戦! ダンジョンボスはコウモリで! その1
この階層の主、怪物の正体は、大コウモリだ。
いや、これまでのヤツとは比べものにならない。
大大コウモリとでも呼ぶべきか……
とにかく、巨大。大型のモンスターだ!
いつもの大コウモリが30センチほど。
この巨大コウモリの体は人間の大人ほどはある。
その身体を支える翼は、相応にデカい。
広げた翼は4、5メートルほどだろうか。
その巨体は、まるで恐竜の翼竜のようだ。
あるいはファンタジーのワイバーン。
ワイバーンは竜の頭にコウモリの翼をもつ怪物だ。
似ていて当たり前か。
滑空してきたコウモリを迎え撃とうと、クナイを構える。
一直線に俺に向かってくる巨大コウモリ。
近づくにつれ、その巨体はさらに存在感を増し――
――いや、待て。待て待て! でかすぎる!
【危険察知】がビンビンと警鐘を鳴らしている。
正面から視認しているにもかかわらず、この反応!
普段は俺が気付いてないときに知らせてくれる【危険察知】。
今はやかましいほどの警戒心をかきたててくる。
「や、やばいっ! ッおぉッ!」
俺は全力で身を投げ出す。
なりふり構わない全力の回避だ。
俺の耳元に、ごうっと風がうなる。
すぐそばを、コウモリの巨体が通り過ぎる。
なんとか攻撃からは逃れたが、その風圧だけでもバランスを崩してしまいそうだ。
ぎりぎりのところで、手をついて受け身を取る。
そのままの勢いで、バネのように飛び起きる。
俺は荒い息を吐く。
「はあっ……誰だよ。コウモリは雑魚モンスターとか言ったやつ!」
……俺です。
コウモリは再び羽ばたいて上空へと飛びあがっている。
これは迎え撃つとか、そういう勢いじゃない!
遠目に見て判断していたが、近くに寄ったコウモリは思ったよりもデカい。
すれ違いざまに斬るなんて、できる気がしない!
走ってくる車を殴るようなものだ。
当てることができたとして、俺の腕は無事ではすまないだろう。
コウモリが旋回して、こちらへ戻ってきた!
どうする!?
考えている暇はない。
すれ違いざまの斬撃は危険だ。となれば投擲。
クナイを作成した鞘に納める。
鞘は腰の後ろで左右どちらからも抜けるような可動式だ。
手裏剣を腰のクギホルスターから抜き、両手に数本構える。
相手のサイズに合わせて、ここは五寸釘を選ぶ。
「キュィイッ!」
ふたたび、コウモリが攻撃モーションに入る。
俺へ向かってくる瞬間、飛行コースは限られる。
「くらえっ!」
俺が投擲した手裏剣が、こちらへ飛ぶコウモリへ向かう。
両手で交互に四投し、全弾命中コースだ!
手裏剣がコウモリの顔面へと突き刺さる、その寸前。
コウモリが片方の翼を畳む。
同時にもう一方を強く広げ、強引にコースを変える。
命中するはずの手裏剣は、むなしく空を切って後方へと消えていく。
四発の手裏剣のうち一発はコウモリの翼をかすめる。
だが飛膜を打ちぬくことはできない。皮の表面に弾かれる。
くそ、強度も普通のコウモリとは違うのか!
コウモリの動きはさながら戦闘機のアクロバット飛行のようだ。
いや、それ以上だ。
自由に翼を折り曲げ、操ることのできるコウモリは戦闘機以上の動きを見せる。
回転したコウモリは勢いを落とすことなく、そのまま俺へ突っ込んでくる。
突撃を受けることはできない。
奴の体重、加速を考えれば回避一択。
コウモリは地面すれすれを飛行している。
長い翼を目一杯広げて、地面と平行に俺に向かってくる。
……まずい!
あのコースだと、回避する空間が残されていない。
左右のどちらへ飛んでも、長い翼に当たる。
巨大コウモリの翼は頑丈な骨に支えられていて、十分に硬そうだ。
ジャンプして飛び越えるか?
いや、直前でコースを変えられたら?
しゃがんでも同じだろう。
まずい……突っ込んできた!
高速で飛来したコウモリの翼が俺の胴体にぶち当たる。
その勢いに俺の上半身と下半身は分断される。
二つに分かれた体は、そのまま塵となって消える――
「――そいつは分身だぜ!」
既に俺は分身を発射台にして、空中に飛び上がっている。
スローモーションのようにゆっくりと流れる視界の中、コウモリの無防備な背中に棒手裏剣を投擲する。
二本の手裏剣が、コウモリの背中へ突き立つ。
よし、今度は弾かれなかった!
ダメージを与えられたようだ。いける!
皮が硬いといっても、角度が深ければ弾かれないんだな。
「キィィィ!」
コウモリは墜落しかけるが――体勢を立て直し、再び飛び上がった。
致命的なダメージを与えられてはなかったか!
仕切り直しだ!
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