偵察結果の共有! ヤバい道にはアレがある説!?
「で、どうだった?」と自律分身。
「ああ――」
俺は【瞑想】しながら状況を説明する。
「あの先も道は続いていたんだが、足場が完全になくなって水路になってしまうんだ」
「歩けるところは、無くなっちゃうんですねー……」
「だから、壁伝いに進んでみたんだが、その先にデカいクモが巣を張っていてな――」
「そいつは倒したんスか?」
「なかなか強敵だったが、なんとか追い払った。水に落ちて流れていったぞ」と俺。
「魔石は回収できたか?」と自律分身。
「いや、たぶん倒しきれてないんだ。クモの巣も消えなかったし」と俺。
トウコが首を振る。
「あー、そういう場合は倒せてないっスね! どーせ、あとで出てくるっス!」
「まあ、お約束だな」と俺。
川に落ちた奴、たいてい死んでない説!
リンが俺の様子を見て安心したように言う。
「でも、おケガはないみたいですね! よかったー」
「ああ。ケガはない。ちょっと疲れただけだ」
「なにかトラブルか?」と自律分身。
「クモの糸を吐きかけられてな――」と俺。
反発の術のくだりを説明する。
「やっぱり一人だと危ないですね! 心配です!」
「リンの索敵やトウコの火力がいかに重要かわかるな」
リンが柔らかく笑う。
「ふふ。お役に立てていたなら、うれしいです!」
トウコがどや顔で胸をそらせる。
「もっと感謝してくれていいっスよ!」
トウコが思いついた顔で言う。
「あっ! いいことに気づいたっス!」
「なんだよ?」と俺。
「わざと力を込めてスキルを使えば、すぐに熟練度がたまるんじゃないっスか!?」
「たぶん関係あると思うけど……魔力酔いで頭が痛くなるから、実戦ではおススメしないぞ!」
一度に魔力を使いすぎると体調が悪くなる。
さらに使い続ければ魔力欠乏状態になって気絶する。
実際に体験したことはないけどな。
リアル・ダンジョン攻略記の受け売りである。
「そっスねー。アレはけっこうキツいっス!」
「ずっとごはんを食べてないときに似てますねー」
ごはん食べてないときって……。
ダイエット的なやつか? もっとハードななにかか?
追及しないでおこう。
「トウコ。攻略中に試すのはやめておけよ?」
「わかってるっス!」
自律分身が言う。
だいたい、俺が考えたのと同じ結論だ。
「この手の通路の先にモンスターがいるなら、ちゃんとしたルートなんじゃないか?」と自律分身。
「俺もそう思う。まあ、行き止まりって線もあるが」と俺。
一見進めなそうなルートがあるなら、見落とした横道もあるかもしれない。
拠点に戻ったら管理コンソールで地図を確認しよう。
「じゃあ、今からみんなで行くんスか?」
「いや、今日は無理だ。足場がないからな!」
泳いでいくわけにはいくまい。
【壁走りの術】は一人用の術だ。
重量制限があるから他人は運べない。
「ゼンジさん。一人で行くのはダメですよ?」
「わかってる。行くときはみんなでだ。準備が必要だから、次回だな」と俺。
今は物資がない。
魔石からでも【忍具作成】はできるが、ひどく率が悪い。
「準備か。なにが必要そうなんだ?」と自律分身。
「そうだな。まずは長いロープがたくさん。あとは船を作るか、壁に足場を作るか……。どっちにしろ木材が必要だ」と俺。
「ここまで運ぶのは手間だなぁ。狭い通路を何往復もしなきゃいけない」と自律分身。
トウコがイヤそうに言う。
「うえぇー? 面倒っスね!」
「運ぶのは分身だ。行ったり来たりするのが面倒なのはしょうがない」
「ま、そうまでして進む価値があるかって話ではあるな」と自律分身。
「行ってみたら行き止まりかもしれないからな。でも、なにかありそうだろ?」と俺。
トウコが目を輝かせる。
「あ、お宝っスね!」
「ああ。厄介な場所にはお宝がある法則だ!」と俺。
ゲームや映画でよくあるやつ。
宝を守るボスを倒す展開。
「このダンジョンでも、宝箱を開けたらゴブリンが襲ってきたことがあるな」と自律分身。
「薬草の宝箱っスか? 敵もお宝もショボいっス!」
「ショボくて結構! 低階層なら薬草だって役に立つし、あんまり強い敵が出てきても困るわ!」と俺。
「安全第一、ですねー」
リンの言葉に俺と自律分身がシンクロしてうなずく。
もっとドラマチックな敵が出てほしいかと言えば違うんだよな。
楽に倒せるゴブリンでいいのだ!
「うえっ!? 薬草て!? だって船まで作って行くんスよ?」
「トウコちゃん。やることに意味があるんじゃないかなー?」
「うむ。お宝があろうが無かろうが、経験値にはなる」と俺。
あと、マップをきっちり埋めたいし!
踏破していない通路があると気になってしまうのだ!
「その上、薬草でも手に入ったらラッキーってことだな」と自律分身。
「せめてポーションくらいは欲しいが、まあそういうことだ!」と俺。
「あたしは強い敵と戦ってでも、イイモノもらいたいっス!」
「ハイリスクハイリターンか。まあ、復活できるならアリだけどな。死んだら終わりだ。安全第一でいく!」
「ちぇー! しょーがないっスね!」
俺たちは冒険者でも探検家でもない。
管理者権限の取得という目的はあるが、それよりも命が大切だ!
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