すすめ! 洞窟探検隊! その2
自律分身が言う。
「おい、俺。足場が狭くなってたし、このまま進むのは危ないぞ?」
「そうだな。うっかりドボンしたら怖いしな」と俺。
進むほどに足場が狭くなっていく。
もう体を横にしないと進めないほどの幅だ。
逆に水の流れは太くなり、ごうごうと音を立てている。
もし落ちたら流されてしまうだろう。
この勢いでは、はい上がれるかどうか……。
リンが眉を寄せながら言う。
「はい……。ちょっとこわいですねー」
「じゃああたしが手をにぎっててあげるっス!」
はねた水が足元を濡らして滑りやすくなっている。
たしかに危険だ。
【暗視】で見るかぎり道はまだ続いている。
足場が減っても、俺一人ならなんなく進める。
「よし! 俺は先を偵察してくるから、三人は足場のいいところで待っていてくれ」
「えっ? ゼンジさん一人でいくんですか!?」
リンが驚いてバランスを崩しかけるのを支える。
危ないって!
「ああ。俺なら壁を走れるし、最近は空中すら歩ける。心配ないぞ!」
トウコが元気よく手をあげる。
「なら、あたしもまだまだいけるっス!」
もう少しなら進めるだろう。
だが、その先はどうだ?
うーん。心配だ。
うっかり足を滑らせて流されていく未来が見える……!
自律分身がトウコの肩を叩く。
「トウコは俺たちと行こうな。ほら、リンの手をひいてやってくれ」と自律分身。
リンがトウコの手を握る。
「うん。心配だから一緒にいてね、トウコちゃん!」
トウコが笑顔で肩をすくめる。
「しょーがないっスねー! じゃ、店長。先に戻ってるっス!」
「おう。頼むぞ!」
「ははっ! 任せてほしいっス!」
トウコがニコニコしながら引き返していく。
頼むぞ自律。頼むぞリン!
「さてと……行くか」
俺は壁に手を添えながら走っていく。
【壁走りの術】があれば壁も天井も足場である。
持続時間の限界はあるが、ちょっと休める足場があればいい。
足場がなければ【吸着の術】や【空中歩行】で【壁走りの術】を休ませる。
実質、いくらでも壁に張りついていられる。
しばらく進むと足場が全くなくなってしまう。
これでは普通の方法では進めないな。
皆を引き換えさせて正解だ。
だが、道は続いている。
通路というよりは水路になってしまったが。
ふむ。この先もダンジョンは続いているのかな?
水の流れはさっきよりはやく、激流という感じ。
泳ぐのは難しいだろう。
ところどころに岩が張り出していて、ぶつかった水がはじけている。
これでは泳いで進むのはムリだな。
壁に叩きつけられてしまうだろう。
「ふーむ。このルートは普通には進めないよな……?」
ってことはハズレか?
クリアできないルートがあっていいんだろうか?
これまでの階層では、通行不可能な場所はなかった。
罠が多かったり道が狭かったりと、進みづらいことはある。
でも攻略は可能だった。
ダンジョンというのはクリアできるべきだ。
ゴールがあるべきものだ。
行き止まりの先を無意味に進んでいるような気がしてくる。
こんなルートは俺じゃなきゃ進めない。
壁を走れる忍者とか、空を飛べる魔法使いとか、限られた職種にしか突破できそうもない。
このダンジョンが忍者用に作られているわけではないはずだ。
俺のクローゼットに現れたダンジョンだ。俺の持ち物とも言える。
管理者権限だって持っている。
だけど、俺が忍者になるとは限らないんだ。
別の世界の俺、スラッガーの職業を選んだ俺だったら、このルートは進めないはずだ。
【壁走りの術】みたいな裏技……というかマイナーなスキルを特化するわけないからな。
俺は天井を走りながら考察を続ける。
かなり進んだが水路は続いている。
そろそろ引き返そうかと考え始めたころ――
「むっ!?」
俺の目の前でなにかがきらりと光る。
ヒカリゴケのわずかな光を反射して光ったのは――糸だ!
クモの糸!
俺の服にもいつの間に絡みついている!
クナイを取り出して、糸を切断する。
何度か糸を斬ると、クナイの切れ味が落ちてくっついてしまう。
糸が揺れる。
もちろん俺が揺らしているのではない!
まずい!
気付かれた!
闇の奥、水路の先でなにかがギラリと光っている。
動いている。近づいてくる。
当然これはクモだ!
糸に絡んだ獲物を仕留めにやってきたんだ!
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