五階層攻略! 謎の扉に迫る! そこには当然……!?
五階層へ向かいながら新装備の検証と調整は済み。
ダンジョン攻略再開!
五階層。
扉の前で俺は瞑想している。
ここに来るまでに新装備のテストは済んだ。
各種投げモノや丸薬も多めに用意した。
荷物が多くなるので、リュックサックに予備のアイテムは詰めてある。
扉の先に何があるにせよ、できる限りの準備はした。
俺は目を開けてゆっくりと立ち上がる。
気力は充実している。
疲労もなく魔力も充分。
遅効性の薬草丸、体力回復丸、魔力回復丸を飲んでおく。
効きはじめが遅くて、長く効く丸薬だ。
戦闘前に飲んでおけば、戦闘中に効果を発揮するだろう。
扉を開けてすぐボスがいるとも限らないが、念を入れておく。
準備万端、ととのった!
あとは突入あるのみ!
巨大な扉の前に立つ。
見上げるほどに大きな扉は、威圧感すら放っている。
「でかいな……。たぶんこれを開ければ、何かあるだろう。いつまでも見上げていても仕方がない……。いざ!」
扉に手を触れ、押してみる。
人間の力では到底開きそうもない大きく重い扉だ。
だが、ごく軽い力をかけただけで重厚な両開きの扉が動き出す。
ぎぎぎ、と錆びついたような大きな音を立て、ゆっくりと奥へと開いていく。
「おぉ!? 意外と簡単に開いたな……さて、この先は?」
扉の奥は四階層と似た構造になっている。
ドーム状の高い天井。そこから鍾乳石が垂れ下がっている。
床にはところどころに石筍が生えている。
四階層中央にあった地底湖はここにはない。
輝く水晶によって【暗視】を使わなくても見通せるだけの明るさがある。
明るさはあるが、霧が立ち込めていて視界が悪い。
三階層のストーンサークルにあったような巨石が、ぽつりぽつりと鎮座している。
密集しておらず、単独だ。
ちぇ。残念。
まとまって配置されていれば、壁跳躍無双できたのに。
「敵はいない……? 少し進んでみるか」
見える範囲には敵の姿はない。
扉を開ける前にもいなかったし、五階層は無人地帯なのか?
人というか、モンスターだけど。
扉を背に、足を進める。
背後を振り返っても、扉は閉まっていない。
閉じ込められてはいない。
とりあえず安心だな。
……とりあえず。
扉が開いてから、遠くでごうごうと低い唸るような音が聞こえている。
巨大な生き物の息吹のようでもある。不気味だ。
洞窟内のため、音が反響して判別がつかない。
「これは……何の音だ? いきなりドラゴン登場とか、やめてくれよ?」
強敵を想定していろいろと用意はしてあるが、巨大なドラゴンなどに勝てる気はしない。
そういうのは、ちょっと段階踏んでほしい。
これまでのダンジョンの雰囲気からは、そんな無茶な難易度の敵は出ないはずだ。
……出ないでくれよ!?
ところどころに、三階層のストーンサークル前にあった岩の山がみられる。
両手に抱えるほどの岩なので【投擲】するには無理があるが……。
何か使い道があるかもしれない。
さらに足を進める。
近づくごとに、唸りのような音は大きくなっていく。
そして、音の正体が判明した。
視界が開けると、そこには巨大な存在感を放つ、滝が流れていた。
「滝か! でかいな!」
ごうごうと音を響かせながら、水量の豊かな滝が流れている。
滝つぼからは水しぶきがもうもうと立ち上がっている。
そこから流れ出た小さな川があり、流れは速い。
深さはないが、踏み込めば足を取られるだろう。
水流は天井の壁際から流れ出ているようだ。
四階層にあった輝く水晶によって七色に照らされた滝は、神秘的な威容を誇っている。
これは、なかなかの光景だ!
「おお……! これはまたダンジョン内に観光名所が!」
滝の上げる水しぶきをスクリーンにして、水晶の光がオーロラのような光を投げかけている。
滝の轟音に交じって、何かが聞こえた気がする。
「ん……? また何か聞こえるな」
巨大な羽ばたき音のような、風を切る音。
音の主を探しても、水しぶきに遮られてよく見えない。
「……まさか、ドラゴンじゃないよな?」
そして、それは現れた。
その翼の風圧で、水しぶきの霧が晴れる。
霧をかき分けるようにして、巨大な翼を持った怪物が姿を現す。
醜悪な顔。大きな尖った耳。鋭い牙。
巨大な翼を羽ばたかせ、そいつは耳障りな咆哮を上げる。
「キイイィィィィィ!」
滝を背に現れたそいつは、巨大なコウモリだ。デカい!
俺はそいつを真っ向から見据え、口の端に笑みを浮かべる。
「はは、やっぱりお前か! そうだよな。このダンジョンのボスはお前じゃなけりゃな!」
俺は邪魔になる荷物を置いて、クナイを油断なく身構える。
巨大コウモリが、ひときわ大きく羽ばたく。
俺に向けて加速をつけながら、滑空してくる。
「さて、お前を倒してコウモリなんてザコだと言わせてもらうぞ!」
こうして、巨大コウモリとの戦いが幕を開けた。
長いクラフトが終わって、やっと戦闘開始!




