まあまあとは、ちょうどいいということ!
新武器、盾トンファーでゴブリンを蹴散らした。
魔石を回収して腰袋に入れる。
「新しい武器もいい感じですねー」
「うん。まあ使えそうだな!」
そう答えはしたが……最高ではない。
それなりに使えるって感じなんだよな。
「まあまあっスよね? パンチじゃ威力がイマイチっス!」
「トウコちゃん……言い方!」
イマイチというかマアマアと言うか。
似たようなものだ。
「いや、実際トウコの言う通りだ。イマイチでまあまあ。それなりの武器だな」
「そうなんですか? すごくカッコよかったのに……」
リンはひいき目に見ているからな。
まあ、悪い気はしないけど。
「カッコよさはまあまあだったっス!」
「見た目はどうでもいいけどな。使い勝手はいい。回避の邪魔もしないし防御が安定する。だけど攻撃力がイマイチなんだよ」
「ふつーのトンファーのがいいっスか?」
「武器としてはいつものトンファーのほうがいいな。でも、これは盾の仕事もできるから総合力としては悪くない」
従来のトンファーは拠点の装備展示ラックにある。
あれはあれで気に入っているので、このトンファーの素材にせず残している。
用途によって武器は使い分けたいし。
「ははっ! 新武器だから強いのかと思ったのに微妙っスね!」
「バランスがいいと言え! 攻撃特化の武器じゃないから、こんなもんでいいんだ!」
「攻撃力なら、いつもの刀のほうがいいんですかー?」
「ああ。当たり前だが刃物は強いってことだ!」
リーチにしろ遠心力にしろ、一歩劣る感じがする。
まあ、当たり前である。
刀は強武器だし、使い慣れている。
比べる相手が悪い。
「でも、盾として役に立つのはこれからですよねー?」
「ああ。これは回避ができない通路、十三階層で真価を発揮する!」
――という予定だ!
この階層には回避できる広さがある。
もっと盾で受ける戦いを練習したかったが、どうしても避けてしまう。
実戦ではしみついた動作――訓練した動きが自然と出るのだ。
良くも悪くも避ける戦いが俺のスタイルである。
さっきの戦いではつい、いつもみたいに避けてしまった。
狭い十三階層でこそ活躍するだろう!
俺たちは十二階層を進んでいる。
順調に進みながら会話を続ける。
「なんで刀と盾にしなかったんスか?」
「ん? ああ、俺の刀は片手で扱うから普通の盾を持つのもアリだよな」
いわゆる剣盾スタイル。
片手剣と盾というのは鉄板の組み合わせだ。
盾で防いで剣で斬る。
やることは刀でも同じだ。
「狭いからですか?」
「それもある。人一人通るのがやっとの幅だから大きな盾は邪魔になる」
「広ければでっかい盾がいいっスよね!」
「そうだな」
コウモリのフン対策として作ったタワーシールドが持ち込めれば、対処が楽になる。
しかし狭い通路では取り回しが悪い。つっかえて通れない状況もありえる。
「なら素直に小さい盾を作ればよかったっス!」
「いちおう考えたんだよ。バックラーとか、楯火炬とかさ」
バックラーはファンタジーでおなじみの小型の盾である。
ナベのフタのような形状だ。
丸い盾で直径五十センチほど。
まあまあ大きい。
小さめに作ることもできるが、当然カバーできる範囲が狭まる。
三十センチくらいにすれば狭い通路でもなんとか使えるだろう。
「たてたいまつ?」
「なんスかそれ?」
「忍具の一種で盾の前にロウソクを立てられる品なんだが……」
「作ったんですかー? 見たいです!」
「作ってみたが微妙でな……今回は持ってきてないんだ」
試すまでもなく、実用性が疑わしい感じ。
「じゃあ帰ったら見せてくださいねー!」
「おう」
「じゃあバックラーはどうっスか?」
「バックラーは作らなかった」
「なんで作らなかったんですかー?」
「だって、忍者っぽくないだろ?」
トウコがあきれたような声を出す。
「うえぇ!? そんな理由っ!? ならタワーシールドも忍者っぽくないっス!」
「もちろん忍者感だけが理由じゃないけどな。戦う場所が狭くて、フン爆撃対策だからだ」
「盾ならなんでもいいんじゃないっスか?」
「盾トンファーなら腕全体を守れる。両腕を上げれば上半身をカバーできる。狭い場所で降ってくるフンを防ぐには最適だろ? こういう姿勢だ」
俺はトンファーをボクシングのガードのようにトンファーを構える。
盾トンファーの横幅は腕よりも広くて、横に張り出している。
普通のトンファーとは違い、腕全体が隠れるわけだ。
「あ、けっこう広い範囲が守れるんスね!」
正面から見て顔から腹までが守られる。
この状態でさらに腕を上げる。ひじを目の高さに上げるくらいだ。
「こうすれば頭から顔くらいが守れる。爆撃を防ぎながら、狭い通路を進むにはちょうどいい」
「たしかに安心ですね! 狭い場所も通れそうです!」
「体を横にしなきゃ通れないような場合は片手だけ上げたりもできる」
大きな一枚の盾よりも、細長い二枚の盾のほうが取り回しがいい。
「なら最初っから鎧を着こんじゃえばよくないっスか? 全身守れるっス!」
「鉄の鎧って話か? それは最初から除外している」
「なんでっスか?」
「重くて動きにくいし、狭い場所にはさまったら悲惨だぞ?」
「それは怖いですね……。ダンジョンの奥にはさまっちゃったら、誰も助けてくれません」
「狭いところで鎧を脱ぐのは難しいだろうしな。その点、盾なら手を離せばいいだけだ」
「ヘルメットが挟まったらどうしましょうか?」
「蛾がいるかぎり、ヘルメットを脱いだら毒で動けなくなるしなぁ……」
「気をつけるしかないっスね!」
「ああ。気をつけろよ、トウコ!」
「あたしっスか!?」
トウコが心外そうに言う。
「ショットガンを通路につっかえさせてたじゃねーか!」
「そっスね! 気をつけるっス!」
「あ、階段ですよ!」
「よし! 実際にやってみて通用するか試そう!」
話している間に十二階層を突破した。
盾トンファーやヘルメットが活躍するはずだ!
――してくれ!
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