クラフトの王様はガムテープで!?
「これ、ガムテープっスか?」
「包帯じゃないかなー?」
「その中間だな。粘着性の包帯だ!」
俺たちは、医療現場ではなく戦場で包帯を使う。
傷口にすばやく使いたい。
戦闘中にちゃんと処置する余裕はない。
ガーゼをあててテープで止める暇はないのだ。
「だいたいあってたっス!」
「かんたんでしたねー!」
まあ、見た目は包帯だしね。
俺は包帯ロールの端を指ではがす。
「こうやってガムテープみたいに巻いてあるのがポイントだ。普通の包帯に粘着剤はついていないからな」
「そんなん当たり前っス! ベタベタしちゃうっス!」
「でも、くっつく包帯も見たことありますよ!?」
「うん。粘着する包帯も売られてるよな。でもそれは、剥離紙をはがさないとくっつけられないんだ」
「はい。シールみたいになってますよねー?」
「剥離紙がない包帯で、なおかつ粘着するロール型がいい。でも、そういうのは売ってなかったんだ。ありそうでないんだよ!」
包帯にもいろいろある。
包帯同士を重ねるとくっつく自着包帯も便利だ。
巻きつけることでマジックテープのようにお互いがくっつく。
指や腕などにぐるぐる巻いてテーピングできる。
だけどこれは今回は適さない。
服に穴が開いたときにも使いたい。巻くとは限らないのだ。
だから、ぺたっと貼り付けられるものがいい。
求められるのは伸縮性と粘着性がある包帯。
そこで粘着性不織布伸縮包帯である!
これは通販で買える。
今回の用途にかなり近いが、まだちょっと違う。
トウコが興味なさそうに言う。
「へー。でも、どーでもよくないっスか?」
「おいおい! どうでもいいと言ったらそれまでだぞ!?」
わざわざ作ったんですよ!
主にトウコのために作ってんですよ!?
「ゼンジさんがわざわざ作ったんだから、きっと意味があるんですよね?」
ナイスフォロー!
「意味はあるぞ! 服に穴が開いたときのためだ。ペタッと貼り付けて穴をふさぐ!」
「それならガムテープで充分っス!」
おいっ!
「服の穴だけならガムテープでいいけどな。ケガしたときにも使うんだよ。絆創膏みたいに貼り付ける感じだ」
もちろん深いケガならポーションを使う。
とはいえ、回復アイテムを切らすこともあるだろう。
そういうときの保険にもなる。
あと、忘れがちだが同じ種類の回復アイテムを連続で使うと効果が下がってしまう。
そういうときにも使える。
「傷口にくっついたら痛くなりませんか?」
「それならガムテープと同じっス!」
傷口にガムテープを貼るのとは全然違う!
吸血鬼とかゾンビはガムテープで処置しがち。
だが、人間にはおススメしない!
俺は目をむいて早口で言う。
「違うわ! くっつくのは両端だけ! 肌を傷めないように粘着力もガムテープより弱い! 真ん中はガーゼになっているから傷口にも使える!」
……なんでこんなに必死に説明してるんだ!?
リンがポンと手を叩く。
「これって、すごく長ーい絆創膏がロールになってる感じですよね!? すごいなー! よく考えられてます!」
「わかってもらえたようでうれしいよ、リン! どうだトウコ!?」
トウコがぐっと親指を立てる。
「これなら【応急処置】がはかどるっス!」
「そうだろ? 巻き止めをしなくてもズレないぞ。トウコはいつもだらしないからな!」
トウコは歯を見せて笑う。
「へへ。そうっスね! あざっス!」
これを作ったのはトウコのためだ。
トウコは応急処置のために包帯を持ち歩いている。
普通の包帯は巻いてから先端を裂いて縛ったり、内側に折り込んだりする手間がある。
戦闘中には時間をかけていられないし、ザツに巻くとほどけてしまう。
よく包帯がほどけてミイラゾンビ状態になっていた。
これがあれば、もう安心!
きれいなミイラになれる!
俺は包帯ロールをガムテープのように手で切ってみせる。
ハサミはいらない。
剥離紙のある市販の粘着包帯はハサミが必要なのだ。
「こうやって手でちぎって使うんだ。左右どこからでも切れる。どこからでもだ! 必ず切れるっ!」
大事なことなので二度言った!
【忍具作成】君には強く強く言い聞かせて作成した。
試してみたが、問題なく切れる。服に貼っても簡単には剥がれない。
「なんだか、すごくこだわりを感じますねー」
「これでイライラしないですみそうっス!」
ありそうでない品物なのだ!
「はあはあ……伝わったようだな!」
まだ攻略は始まってもいないというのに、謎の疲れが俺を襲っている!
WEB小説で最も包帯を連呼した話かもしれない……!
医療品メーカーさん、声掛け待ってます!(ない)




